『てるてる坊主のラブレター』(毎週ショートショートnote)
雨が続いている。
「てるてる坊主、増えてない?」
前回2つだった私の部屋のてるてる坊主は
今は7つになっている。
「それは今日の分でその隣が昨日の分」
「3つ目から、文字が書いてあるみたいだけど?」
彼がてるてる坊主に顔を近づけるのを
私は直視できないでいる。
「これって、、、ラブレター?」
今日のてるてる坊主の前まできた時に
彼がこっちを見ずに言った。
耳の辺りが熱い。彼もそうだろうか?
「その日の気持ちを書いているの」
想いが日に日に強くなっているのに気付いただろうか?
「このラブレター、出さないの?」
「ここで見てもらいたいから」
そう、ここにあるのは、練習でも書き損じでもない。
このてるてる坊主がラブレターなのだ。
「僕に宛てたものだよね?」
「うん」
私は初めて彼のことを見つめた。
「僕が来る前に晴れてたらどうしてたの?」
晴れたらてるてる坊主の役目はない。
「でも、雨はまた降るから」
私は吊るそうとしてた明日のてるてる坊主を
そっと彼に手渡した。
(410文字)
<あとがき>
お互い好きで部屋にも遊びにくるけれど恋人同士ではない
私と彼との微妙な関係性が伝わっていればよいのですが、、、。