『続・音声燻製』(毎週ショートショートnote)

先日、郵便が届きました。
「3年かけて美味しい燻製ができました」
すっかり忘れていた『音声燻製』でした。
早速妻を呼んでカードを開くと
1つのカメラで頬を寄せ合う夫婦の自撮り写真が
私たちを覗き込むように微笑んでいました。
「3年後の私たち、お元気ですか?」
少し燻されたようにくすんだ音声が
まるでしゃべる画像のようです。
自然と涙がこぼれてきました。

実はこの3年、妻が大病を患い入院生活を送っていたのです。
これから遠くの道の駅にも足を伸ばしてみようかと
ガイドブックを買った矢先のことでした。
次第に痩せ細っていく妻を見るのはしんどかったなぁ。

私たちは学生の頃からのつきあいで
妻はクラスのアイドルでした。
見舞いに来た友人は妻の変わりように
「ネットで話題の棒アイドルだ」なんて
笑わせようとしていたっけ。

そんな妻の病気もようやく完治し、
今度また道の駅にドライブに行く予定です。
なんでも『告白雨雲』なるものが話題とか。
さて何を告白しましょうか。

(410文字)

<あとがき>
続きを書いてみようと思い
迷ったのが、奥さんをどうしようか。
亡くなったところに届く生前の妻の声
という選択肢もあったのですが、
これから2人で遠くの道の駅まで足を伸ばそうと
立ったスタートラインまで戻ってきたところに
3年前にスタートラインに立っている2人からの声が
届く方がいいかな、と。

ちなみに過去の3つのお題を盛り込んだのは
単なる遊びですので、多少強引なところは
笑ってお許しください。

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