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『男たちがいた』

勇敢な男がいた。
彼は勇敢ではあったが、腕力がなかった。
彼は勇敢にもヤツに真正面から立ち向かい、あっけなく倒れた。

頭脳明晰な男がいた。
彼は頭脳明晰であったが、傲慢であった。
彼はその頭脳でヤツの裏をかこうとして、逆に裏をかかれた。

力自慢の男がいた。
彼は腕っぷしは強かったが、頭が弱かった。
彼はその力でヤツをねじ伏せたが、その後どうしていいか分からなかった。

ずる賢い男がいた。
彼は皆に嫌われて、孤独だった。
彼はヤツの仲間になろうとして、先に死んだ者の仲間になった。

美しい男がいた。
彼はその美しさを武器に得た富をヤツに渡して
自分だけ助かろうとして、その美しい顔をヤツに剥がれた。

純粋無垢な男がいた。
彼はその純粋な瞳をもってしてヤツの心を見透かそうとしたが、
ヤツに心はなかった。

ここに女はいなかった。
彼女たちは皆おびえていた。
彼女たちはヤツが来る前に逃げようとして、全員逃げそびれてしまった。

残りの男たちは、
ヤツを取り囲むことになんとか成功したが、
恐ろしくてとどめをさせる者がいなかった。

その後、ヤツはどうしたかって?

まだ男たちの輪の中に・・・

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