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『鋭利なチクワ』(毎週ショートショートnote)

目の前に差し出されたソレを、
すんでのところではたき落とした俺は
そっと床から拾い上げた。
「ごめん。俺、先端恐怖症なんだ」
俺は指で摘まみあげたおでんのチクワを
その斜めに切られた断面を見ないようにして皿の上に置いた。
まだほんのりと湯気を立てているチクワが
俺には鋭利に尖らせた竹ヤリのように見えていた。

「ごめんなさい。ちっとも知らなくて」
「言ってなかった俺が悪い。せっかく作ってくれたのにごめん」
「他は大丈夫なの?これとかどう?」
彼女は竹串に刺さった牛スジを手に取った。
牛スジが先端を見えなくしているため
これは大丈夫だと言おうとした瞬間、牛スジは彼女の口に消え
目の前に尖った竹串の先端が突き出された。
「うわぁ!何をするんだ!」
俺は恐怖で動けなくなってしまった。
「おもしろ~い、先端恐怖症ってこうなっちゃうんだぁ」

動けないでいる俺を尻目に彼女が一本、また一本と
鋭利なチクワの先端を俺に向けて置いてゆく。
竹ヤリが、竹ヤリがぁぁ、、、

(410文字)

<あとがき>
今回も、そのまんまです。
ヒネリがなくて申し訳ない、、、。

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