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うたスト【世界と約束したらいい】

⭐️ポリヴェーガル理論の世界を小説にしてみました。

⌘⌘⌘


ー鬼は内に

ーー卵のような透明感


化粧品のパンフレットを眺める。新しくリニューアルされた美白美容液。にらめっこした折り紙を卵と大豆で囲む写真になんのこっちゃと呟いた。   

アグレシッブでいられる時代はとうに過ぎて、のろのろと惰性だけで生きている。鬼は既に内にいる。

恐れていた、
怯えていた、
認められずに繰り返して、
いつ届くのかさえ分からなくなったんだよね。


大人は、いつか子供だった。
子供は、イツカ大人になった。
気付かない間に。

子供だからって分からないことはない。
さぁ、いつも注目!!
そんな、よぉいドンみたいな世界ってある?

決められた定めがあるのなら神さまは意地悪だね。オレンジのコートがまるで似合わないみたいに幸せに不恰好。世界はいつだって黒一色だ。


⌘⌘⌘


あの日も雨だったね、記録的な長梅雨の年だった。大量の雨を含んだ土地は畑の体を保てなくなっていて食べるものも育たず口に入れれるものといったら濁った雨水を手製の濾過器で濾した水だけ。

隣の畑で美味しそうに空豆を頬張るクラスメイトを横目に、葉が白くなって根元が茶色に変色しているきゅうりの苗をさしている傘の中に入れてやる。きっと育つ、そうしたら泥水を含まず生きていける。

1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日。雨は容赦なく降り注ぎ、身を休める場所も流されてしまっている。泥にまみれていないのは顔だけという有り様。苦しい、息がデキナイ…、…。オボレテシマウ。


「大丈夫かい?」隣のおばさんだ。
泥々じゃないか、あんたんちはどうなっているんだ。これ以上入るな、汚れるだろう!流されて隣の畑に入ってしまったみたい。

身体を押されて……泥水の中に、
バシャーーン、バシャーン………落ちていく。 

大丈夫かい?は嘘なのか…ナ。キットウソダネ。

「死なれちゃ後味悪いからあげる」シニタクナイ、タスケテ。

小さな大豆が10粒ビニール袋に入れて投げられた。
「おばさん、赤色の飴も2個入ってます。貰っていいのですか?」

「えっ??あら、嫌だ、間違えたよ。返してもらいたいけど、あんたの手が泥々だから飴も泥々じゃないか、いらないや、あげるよ」


汚いものを見るような目でシッシッと手を払われる……。   
タスカッタ……。

今回の大雨はもうダメかとオモッタ。傘の柄をぎゅっと握り今日も生き延びたと星になった父に話しかけ赤い飴を口にふくんで泥水の中で眠った。


眠った……、ネムッタ……眠りたい。
わたしはもう起きない。
泥水の箱の中で何年もの時を超えていく。


⌘⌘⌘

「おい、起きろよ。こっち来て身体を洗え!!」
ずいぶんと乱暴なお兄さんが突然身体をゆする。
「や、やめて。まだ寝ていたいの、食べるものも着る物も休む場所もないの。オネガイ……」

「キッタネーナー!!泥々だぞ!」

服を剥ぎ取られ、目を白黒させて身体を震わせていると大きなバケツを抱えてきて、
「ソウラ〜〜〜」
「ホレ〜〜〜」
生暖かい水を頭からかけられる。ふと周りを見ればいつもの畑ではない、ここは何処??

「もう安心だぞ、俺のところにいろ。俺の家は代々の米農家なんだ、お前1人食わせるのはなんてことない。たくさん食べるんだぞ」

ありがとう……。誰が分からないお兄さん、ありがとう……。やけにしょっぱい親指ほどの大きさのおにぎりをそっと口に含んだ。横にはいつの間にか小さなコップにいい匂いの薄緑の水もある。

二口目を食べようとして、
やだ!!
わたし、裸。
しかもべっちょべちょ。

いやだ、もう、どうしよう。
キョロキョロしていると、
「服は捨てたぞ、あんなん着てたら病気になる」
目の前の道路に茶色の塊が投げられている。

「服は自分で作るんだ、綿の種を分けてやる。それまでは俺のお古を着とれ」
ボッロボロの穴だらけのTシャツ1枚。
「あ、あの下着は?」
「そんなものはない、俺のがなくなる。そのTシャツだって手間ひまかかっとるんだぞ。いらないなら返せ」

そこで作れと、大きな石がいくつも転がりカラッカラに乾いた畑を指でさされる。
「ここで??わたし、自分の畑に帰ります」
「お前の畑は流されたぞ、もうない。諦めてそこで作れ、まず石を隅に固めろ」

横に5歩、縦に3歩。
小さなここが今のわたしの畑。

たくさん種を植えればたくさん収穫出来るのかと汗だくで植えたのに、おにぎりのお兄さんが来てせっかく芽が出た苗をドカドカと踏み潰して帰ってゆく。

お兄さんは毎日来る、その度にドカドカ踏み潰していいことをしたんだと言う。雨が降るよりいいじゃないか、泥の中で眠るよりいいじゃないかと言い聞かせて収穫の時を待つ。

朝が来て、夜が来て、朝が来る。幾度も繰り返されて収穫のとき。小さな大豆が一粒と綿花が片手におさまるほどの量が育ってくれた。

今、わたしには小さな大豆が一粒。
汗を拭く綿花が2つ。
一粒と2つ。

キョロキョロ、誰もいない?
鼻から息を吸って、戦闘態勢?

ぼ〜〜〜汽車の真似だ。もう1回ぼ〜〜〜!!
顔を中央に集めて梅干しを作ろう。
最後に手を開いたり閉じたり、パッパッパっ!!

キョロキョロ   キョロキョロ
今のわたしはぬかるんだ泥だらけの畑にはいない、
今の私には横に5歩、縦に3歩の新しい畑がある。


恐れも、怯えも、認められずにいることも、繰り返していることさえも、一粒と2つで世界に約束したらいい。

ウチにイタ鬼は消えていったね。


_______________________🌸



うたスト 課題曲Aに応募します。歌詞にびびってきたんです〜、自分の環境とリンクしまして何かを約束出来る人がいないなら、世界と約束したらいいんだよね。そんな風に感じたんです。


歌からストーリー、概要はこちら👇

アダルトチルドレンになっていく経過をですね、小説にしました。そこに心理学のポリヴェーガル理論を入れています。

ノリに乗ってさ、ショートショートも書いた。笑
同じ曲で2つもありなんかしら。ほんと、歌って凄いね、元気貰えました!!

音楽を聴きながら、小説を書く。歌からストーリー、新しいですよね。上手い方が多い中恥ずかしいですが出します😂 参加するのがいいんだよ。うん、うん。生暖かい感じでお願いします。


では、では、
来てくれてありがとう💖

創作ばかりしてますが、ASD関係の質問がある方いましたらどの記事にでもコメント下さい。待ってます🤗










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