Sans/1stEPで使用した機材
はじめに
好評配信中のSansの1stEP、
こんな機材を使って作っています、と言うことでご紹介してみたいと思います。
まずは音源リンク。
配信(Apple Music)
配信(Spotify)
それでは解説スタート。
母艦
Apple / "iPad Pro 12.9インチ(第3世代)"
これが無きゃ始まらない。
純正ソフトのGarageBandを使うことで風呂の中、ベッドの中、外出時、通勤中(iPhoneと同期)、いつでもどこでも思いついた時に、
時間と場所の制約を可能な限り減らして、編集、編曲出来ました。
PCでの制作も検討した時期があったけど、音質やプラグインを犠牲にしてもアイデアを止めないことを優先することにしました。
GarageBandはiCloudで連携出来るので、その作業状態をそのままポケットに(iPhoneを)突っ込んで出掛けること出来たのが本当に良かったです。
デモ制作、編曲、編集作業からREC、ミックスダウン、マスタリング迄をこの一台で行なっています。
※実はこの方法は、別プロジェクト"SHHH!"でこの方法を確立したものです。
"SHHH!"
DAW
GarageBand
前述の通り、いつでもどこでも作曲と編集をする為の
今回の制作に必要不可欠のアプリ。
<ベースアンプシュミレーター>
ベースの録音もサードパーティー製のアンプシュミレーターや、
マイクプリやDIなどのハードでも色々試行錯誤し苦戦しましたが、
結果的には純正のアンプシュミレーターで着地しました。
<エフェクト>
サードパーティ製のプラグインは、
(後述の)エフェクト用で一部使用しましたが、
それ以外は基本GarageBand内のエフェクトを使用しました。
特に"踊れウォルラス"でのベースに掛けたコーラスは、
下品にしっかり掛かるのでお気に入りです。
<ドラム音源>
ドラムは打ち込みで、音源も純正の音源を使用しています。
※一部金物のみ後述の音源を使用
特にビートシーケンサーは往年のリズムマシンの入力方式を現代的にブラッシュアップしてあって、直感的にサクッと組み立てることが出来ました。
大変重宝した。
強いて言えば、変拍子が作成がしづらく、せめて0.5拍単位でのセクション分割は最低欲しかったです。
あと、セクション毎のテンポチェンジもかな。
<iOS版>
MACのGarageBandは実は上位版で機能面、音質面で差が有ります。
MAC版と同等か、もちろん有料でも良いのでiOS版のLogicを発売して欲しいのが切実な思いです。
マスタリングソフト
IK Multimedia / "Lurssen Mastering Console"
マスタリングは素人の自分にとっては鬼門中の鬼門で、
外注も検討したけどこのアプリで何とか試行錯誤しました。
攻め過ぎず、引き過ぎずの駆け引きが本当に難しく、苦しい。
マスタリングとミックスは沼過ぎて恐怖でしかない。
エフェクトプラグイン
Audio Damage / "DUB STATION2"
※全曲で使用
主にクラップに使用。コーネリアスインスパイアがバレバレなパンディレイを
こちらを使用しました。
動作も軽くお世話になっています。
FabFilter / "Pro-R"
※全曲で使用
GarageBandのエフェクトも多用しましたが、リバーブは少し空気感に欠ける感じがあり、当時高品位なエフェクトで定評のある"Fab Filter"がiOS版を出したと言うことで、導入してみました。
ステレオ感を出すアンビエンスから濃厚なプレートリバーブまで、音源の品質アップにかなり貢献してくれたと思います。
FabFilter / "Pro-Q3"
主にボーカルとベース補正用に使用しました。
基本EQはGarageBand純正を使用したけど、抜け感が欲しい時などにプリセットを当ててみて良好な効果があった場合のみ採用しました。
Positive Grid / "BIAS AMP2" & "BIAS FX2"
"BIAS AMP2" → アンプシュミレーター
"BIAS FX2" → エフェクターのシュミレート
の二つのアプリで連携して使用可能。
アンプのエフェクトの種類や音も直感的に使えるうえに、
ソフトウェアの割に結構良い音でした。
思い付いた時にギター直挿しでサクッとデモを取れるフットワークの良さ。
RECでの使用にまでは至りませんでしたが、制作初期段階で大活躍しました。
ドラム音源
iOS Apps For Musicians / "Drum Loops HD 2"
※全曲で使用
Sansではクラップと同じくらい要のサウンドとしているのがライドカップの音です。
そのライドカップの音と、クラッシュの音はこのサンプル波形を使っています。
欠かせない音です。
オーディオインターフェース
RME / "Babyface Pro"
母艦とDAWがiPad&GarageBandなので、ハード面は良い音にしたかった。
音がイマイチだった時に「インターフェースがショボいから」と、ここに逃げ道作りたく無いと思っていました。
今後の改善の為にもなるべく楽曲、演奏、ミックスの腕など、原因をハードでなく自分に集中させたかったからです。
リスニング用としてもハッとするほど良い音です。
使っていて気持ちいいです。大事。
モニタースピーカー
IK Multimedia / "iLoud Micro M"
自分のDTM環境は恐らく人並み以下の(シェルフの上の)30cmx 80cm位のスペースですが、ワンルーム、狭小住宅、初心者DTMer御用達と言うことで評判の良いこちらを使ってます。
このコンパクトさからは信じられない良音質です。
ただ、色んな環境や機材でモニターする内に、iLoudだけで判断するのは怖い、と言うことも少しづつ分かるようになってきました。
有能なだけに信頼してこの音だけでジャッジしてしまいそうな危うさがあるな、と。
因みにBluetooth接続用スピーカーとしても良い買い物でした。
コンポなんて過去のものとなって久しいですが、
リスニング用としてもこういうスピーカーが選択肢に入る時代になりました。
モニターヘッドフォン
Audio-Technica / "ATH-R70X"
オープンイヤー。
小さなスピーカーを耳元にって言う触れ込み(的なのをどっかで見た)に惹かれて導入。
自宅での作業では深夜になりがちなこと、子供の寝かしつけ時でも作業を止めずに、スピーカーのような感覚でミックスやマスタリングをしたかった。
試すと何だかんだでやっぱヘッドフォンで、想像以上にクリアで高解像度。
そこに圧迫感の少ない装着感や、音のエアー感を加味したような印象です。
スピーカーでのモニターと同じ感覚のようにはいかないけど、
単純に音のいいヘッドフォンなので、
自分のリファレンス用ヘッドフォンにしやすい名機だと思います。
(それって結局モニタリングの本質なのかも)
SONY / "MDR-CD900ST"
言わずと知れたガラパゴス日本を代表する名機。
今では一時の過剰なほどの評価も少し落ち着き、
これでミックスダウン、マスタリングをする人は減少傾向にあるかと思いますが、よく言われるように立ち上がりの早く鋭い音はボーカル、楽器演奏時のモニタリングには本当に最適で、ATH-R70Xとその度に差し替えてました。
そして安くて丈夫。
未だに現役なのは分かります。
Apple / EarPods with 3.5 mm Headphone Plug
いわゆるiPhone純正のイヤフォンです。
マスタリング最終段階の頃はよくこれで試聴してました。
この純正イヤフォンで満足できる音ならば発売しても大丈夫だろう、
という信頼を得られるんだからある意味凄い。
装着性に難ありだけど何気に音悪くない。
マイクロフォン
AKG / "C214"
※全曲で使用
今回のEPで使用したコンデンサーマイク。
キラキラした明るいサウンド。
ちょっとウェット過ぎてもう少しパンチが欲しい気もする。
Audio-Technicaの"AT2020"を使っていたけど音が篭る感覚があって、抜けの良い音を探して口コミで辿り着いて導入。
導入して音質向上はしたけど、自分の声がより軽く、高め声の印象になった印象があって相性が良くないのかもしれない。
今後は別マイクも試したいと思っています。
ギター
Vanzandt / "TLV-R1"
※ほぼ全曲で使用
家族に「棺桶に入るときはこのギターも一緒に入れて下さい」と伝えて何とか購入したギター。
ヴィンテージサウンドと現代的なプレイアビリティを兼ね備えた「ネオヴィンテージ」を掲げるメーカー、"ヴァンザント"によるテレキャスターモデルです。
今回のEPのギターの録音は基本的に全て"TLV-R1"を使用しました。
ヴァンザントのこのモデルは少なくとも20年前(に試奏した)からあったと思うけど、
近年のフェンダーはまさにこの辺のコンセプトを売りにしてて、正直本家が後追いしてる感があります。
美しいルックス
弾いた時の「乾いているのに粘っこい」多層感のある素晴らしい音
じゃらんとコードを弾いた時に全ての弦がちゃんと鳴ること(特定の弦の音が小過ぎたり大き過ぎたりしない)、
ローフレットもハイフレットも同じ感覚で弾けるプレイアビリティ
20年前に試奏した時からこの感覚は未だに失われない良い楽器です。
弦はダダリオのフラットワウンド弦を使用。
フラットワウンド弦もSansには欠かせません。
Fender Japan / Made in Japan Traditional 60s Stratocaster(Fiesta Red)
使用曲
"ハローグッバイ"
赤みの少ないピンク掛かった色味に一目惚れした。
フェンジャパと言っても、昔より少しアメスタ感のある丁寧な作りのストラト。
こちらもピックアップやキャパシタやらいじり倒す。
<配線>
配線もスイッチ付きポッドを使って、通称"レインボートーン"と呼ばれるミックスポジションの音も出せるように変更した。
"ハローグッバイ"ではフロント、ミドル、リアの全ミックスポジションでカッティングしている。(Aメロのところ)
独特のコンプ感とキレがあって面白い音になった。
<ピックアップ>
ハーフトーンはハムキャンセルされずノイズが増えたけど、当時の仕様通りらしく、往年のストラトサウンドはそのノイズと引き換えに得られたものだったみたい。
事実、各ピックアップの音のキャラがとても立つようになって、
どのポジションも使える音になった。
そして一番驚いたのは、今までろくに使ったことのなかったセンターポジションの魅力に今更気付いたこと。
Deep Purpleの"Never Before"のソロ、独特の音でどーやって出してるんだろうなと長年の謎だったけど、センターの音だったんだ!とこのピックアップに替えてようや気付いた。(すっきり)
※2022.04.02追記
ベース
Fender Japan / "Mustang Bass PJ"
使用曲
"Clap Flap"
"泡"
”ハローグッバイ”
まずルックスが良い。
そして往年のロック、ファンク畑のベーシストと、
ジャコに憧れる自分にとってはPJは最高の組み合わせでした。
PJのミックスポジションの音も予想外に良かったです。
ただ、後にやはりPJはPJで別物の楽器だということを知る。
しかもショートスケールなので尚更。
それでも配線関係総入れ替え、ピックアップ交換、フラットワウンド弦の相性チェックなど、いじり倒すことでかなり音は良くなりました。
<弦>
弦は色々と試して"La Bella"に行き着く。
ベース弦は別物の楽器になるレベルで音が変わり、本当に驚く。
いなたい、絶妙な色気とパンチのある音で一気に惚れました。
弦の手触りも最高に気持ち良いし、
弦の先っちょを巻いている布が赤いのがまた良い。
<ピックアップ>
リアピックアップ(J)の"SEYMOUR DUNCAN / ANTIQUITY II™ Jive"は、
変えただけであのジャコの音感触がすぐ得られてびっくりしました。
Aria Pro II / "PB-500 Precise Bass"
使用曲
"グライドスライド"
"踊れウォルラス"
一時フェンダージャパン製を請け負っていた(フジゲンと並ぶ長野の)マツモク工業製。
多分70年代後半か80年代前半のジャパンヴィンテージ。
プレベには憧れのベーシストが多く、どうしても欲しかった。
ピックアップにはディマジオの"DP122 CREAM Model P"が搭載。
色はクリームで見た目に最初は抵抗があったけど、
これがまたパワフルでちょっとプルアップすると、ジョン・ウェットン的な「バフっ!」とした最高なドライブサウンドが出て大変気持ち良い。
本家のプレベの音は未体験だけど、十分プレベしてくれていると思います。
こちらもフラットワウンド弦を使用。
アンプ
ORANGE / "Crush Bass 25B"
使用曲
"Clap Flap"
唯一使用したアンプ。
ベースアンプですが、"Clap Flapの"冒頭からのギターカッティングはこれ。
元々は買ったマイクのテスト用に、当時ギターアンプが無かったのでギター突っ込んで鳴らして録ってみたもの。
これがそのまま採用テイクとなりました。
このベーアンはコンプが勝手に掛かる仕様になってて、
それが邪魔くさいことありましたが、
ギターのクリーンカッティングには素晴らしくタイト、
クリアかつコシのある音が出ることが分かって、
今や個人的に名ギタークリーン用アンプの位置付けとなっています。
エフェクター
BOSS / "DC-2W Dimension C"
※ほぼ全曲で使用
一時は奇形エフェクターとして伝説だったが今では"技シリーズ"で入手しやすくなった、いわゆる揺れないコーラスエフェクターと言うヤツ。
ギターのステレオ感を何とか出したくて辿り着く。
ラック・エフェクター"Roland SDD-320 Dimension D"の音も出ますが、これが発売当時ギターのステレオ感を出すのに隠し味用としてスタジオで使われていたらしいと知り導入。
後述のMAXON / "CS9 PRO"も同様の使い方をしていましたが、DC-2Wは爽やかな喉越し。
曲の相性をみて使い分け、活躍しました。
EBS / "MicroBass II"
※ほぼ全曲で使用
ベースのDI用として使用。
チューブシュミレーター、スピーカーシュミレーターもONにして使ったりしました。
なかなかうまく使いこなせないけど、
ライン臭さを減らし、ベースの厚みとドライブ感を出そうと試行錯誤しました。
ELECTRO-HARMONIX /"PITCH FORK"
使用曲
"踊れウォルラス"
ハーモニー用として使っています。
まだ未発表ですがこのエフェクターの響きで何曲か出来上がり、Sansのサウンド作りに欠かせないものとなっています。
MAXON / "CS9 PRO"
※ほぼ全曲で使用
前述のBOSS / "DC-2W Dimension C"と同様、本来のコーラスらしい使い方ではなく、ステレオアウト出力でギターのステレオ感を出す為に使用しました。
アナログコーラスで元々も太いサウンドですが、
ダブリング的使い方でも太く出て曲の相性を見て使い分けました。
この場合、コーラス臭さも少なく良くステレオ効果を出せて素晴らしいです。
strymon / "El Capistan"
使用曲
"泡"
"グライドスライド"
"踊れウォルラス"
テープエコーシュミレーター。
とてもアナログ感のある、とても良く出来たエフェクターです。
ディレイ音の減衰がとても美しいです。
曇り過ぎずクリア過ぎず、深い森の奥に立ち込める霧のような。
ステレオアウトで使用するとアナログ的なサウンドに、音の広がりが加わってとても独特な空気感を得られて素晴らしいです。
どこかセンチメンタルな響きを感じてしまいます。
ワウフラッター強めにするとヴィンセントギャロっぽくも出来たり、
フィードバックを発振させたり、フリッパートロニクス的なループも出来ます。
実用性も兼ね備えていて、愛するMaxon / "AD-900"に続くお気に入りとなりました。
strymon / "FLINT"
使用曲
"泡"
"ハローグッバイ"
"踊れウォルラス"
トレモロとリバーブの組み合わせという面白いコンセプトのエフェクター。
ですが、弾くと60年代〜70年代の空気感がブワッと出て実は王道なサウンドだと分かります。
個人的にはドンピシャな組み合わせでした。
リバーブは、
'60s:スプリング・リバーブ("ハローグッバイ"でライクーダー意識のフレーズでに使用)
'70s:プレート・リバーブ ("泡"で使用)
'80s:ラック型のホール・リバーブ ("踊れウォルラス"でショートリバーブ設定で使用)
の3種類から選択でき、調整幅も広いうえに音も実用的。
素晴らしいエフェクターです。
一方のトレモロは、
'61 harm:61 年製 ハーモニック・トレモロ (不思議な浮遊感のある揺れ方音)
'63 tube:63 年製 パワーチューブ・トレモロ(正弦波パターン。"泡"、"ハローグッバイ"で使用)
'65 photo:65 年製 フォトセル・トレモロ(矩形波パターン)
の3種類から選択でき、調整幅も広いうえに音も実用的。
素晴らしいエフェクターです。
strymon / "Iridium"
※全曲で使用
今回、ギターを全編ライン録音でいこうと決心出来たのはこのアンプシュミレーターのお陰でした。
3種類(下記)のアンプがモデリングされていて、"AC30"の音やフェンダーアンプで録音したかったので重宝しました。
Round Amp - based on* Fender Deluxe Reverb
Chime Amp - based on* the Brilliant channel of a Vox AC30
Punch Amp - based on* a Marshall Plexi (Super Lead model number 1959)
結構キャビネット(こちらも3種類選択可能)で音が変わったり、
ツマミの可変幅も大きく、調整は繊細。
スイートスポットを狙うのは思った以上にシビアな印象があります。
因みに、スタジオでアンプがJCしかない時の対策用としても重宝してます。
「こういうのが欲しかったんだよ」という待望の思いと、
エフェクターの進化に感謝の逸品。
strymon / "Lex"
使用曲
"泡"
ロータリースピーカーシュミレーター。
昔からシュミレーターはありましたが、ここ迄のクオリティーになったのかと進化 に驚くしかないです。
"MIC DISTANCE"のツマミでホーンとローターのマイキング の距離を離すように 調整すると、60年~70年代の数々の名盤で耳にした憧れのあの桃源郷のようなサ ウンドが手に入ります。
良いエフェクターです。
その他
小内 一 / "てにをは辞典"
歌詞作りに行き詰まった時の突破口としてよく助けて貰った。
ある単語に対しての様々な言い回しが載っている変わった辞典。
常用するタイプではないけど、感情のプールから言葉を拾い上げるサルベージ船のような、いざと言うときに頼りになる存在でした。
(作詞は作曲より難しい・・)
KIRIN / キリンラガービール
これも今回の制作に欠かせない逸品。
ビールは色々周期があるけど、制作期間中はキリンラガーばっかり飲んでた。
おわりに
以上、機材紹介でした。
機材好きな方はこちらを見つつ、EPを聴いてみて下さい!
それではまた。
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