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海野十三『火葬国風景』

日本SF小説の嚆矢によるミステリ寄り作品集。

男湯の感電事件、女湯に女性客の死体、屋根裏から三助の死体と立て続けに変事が起きるツカミ抜群の処女短編「電気風呂の怪死事件」、窃視症的視点がユニークな「階段」、サザエの壺焼きが恐ろしくなること必至の「恐しき通夜」、近年ラノベにリライトされたディストピア風寓話「十八時の音楽浴」、出自を探る謎解きとこの時代ならではのエログロが融合した畸形ミステリ「三人の双生児」が印象に残った。

荒削りだが科学知識に基づく発想力は正に奇想天外、ジュヴナイルで高評価なのも頷ける。



表題作は新聞連載という制約の故かラストが尻切れトンボなのが悔やまれる。

また、今では完全に倫理上アウトな箇所も散見されるが、当時の大らかな時代性というよりも、〈全人類は科学の恩恵に浴しつつも、同時にまた科学恐怖の夢に脅かされている。……かくのごとき科学時代に、科学小説がなくていいであろうか〉と一九三七年の作品集に書いた著書の気概によるところが大きそうだ。

鏡を用いた「不思議なる空間断層」の叙述トリックに、甲賀三郎が気づかなかったというエピソードにも時代を感じる。


全編カタカナ書きの「ニンギョーノオカオ」、読み切った自分を褒めたい。

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