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ドラマトーク#9 年末年始ドラマ所感2021-2022

先週末で年末年始のいわゆるスペシャルドラマの放送がひと通り終わったようなので、観た作品の感想などを書いていこうと思う。

ちなみに、年末前に書いた事前記事はこちら。

映画を観たいと思わせられた『99.9』

年末の映画公開に合わせてO.Aされた『99.9-刑事専門弁護士- 完全新作SP新たな出会い篇~映画公開前夜祭~』(TBS系)。
連ドラ時代からドラマとしての面白さは安定の折り紙付きだと思っていたが、今回も期待を裏切ることのない仕上がりになっていたと思う。
前作からの空白期間をレギュラー陣の近況を描くことで埋めつつの、映画本編につながる前日譚的ストーリーでもありながら、今回のドラマでのメインとなる事件やその謎解きのプロセスもしっかり描き込まれていて、決して映画のおまけではないハイクオリティな作品になっていた。

ストーリー展開も申し分なかったが、私が特に良かったと思ったのは、主人公・深山(松本潤)の3代目の相棒弁護士として新たに登場した杉咲花演じる河野のキャラクターだ。
今までの歴代の相棒弁護士は、榮倉奈々演じる立花にしても、木村文乃が演じた尾崎にしても、変わり者の深山を疎んじながらもなぜか彼のペースに巻き込まれ、ついつい協力して事件を解決してしまう、という立ち位置だった。

それが今回の河野は、深山を尊敬し心酔しているというまさかの深山に好意的なキャラクター設定。
予想外というか、思ってもいなかったキャラクターの相棒が出てきて、3人目にしてそう来たか、と驚かされたし、今までの相棒役とは180度違うキャラのおかげで連ドラ2シーズンの後なのに新鮮味も大いにあって、ドラマをより楽しめたと思う。

また、映画でメインのゲストキャストとなる西島秀俊も登場していたが、今回の役どころが、ここのところあまり西島のイメージにないヒール役のようなので、そのあたりも含め、映画本編への期待がとにかく高まって、製作側の思惑通りに、映画を観たい! と思ってしまうほど、大満足の作品だった。

思ってたのとちょっと違った史実(?)系2本…

年末O.Aの『志村けんとドリフの大爆笑物語』と、年始にO.Aされた『潜水艦カッペリーニ号の冒険』
どちらもフジ系列の、時代劇ではないけれどある種史実を題材にした作品だったが、どちらも私が予想していたのとはちょっと違っていて残念だった…。

『潜水艦カッペリーニ号の冒険』は、予想と違わずやはり海上シーンなどのCG映像はちょっとお粗末だったのだが、そんなことよりももっとずっと気になったのが、池上彰がストーリーテラーとして冒頭いきなり登場してきたことだ。

なんだろう、こないだまでやっていた大河ドラマ『青天を衝け』で言うところの北大路欣也が演っていた徳川家康的な感じで時代背景などを解説するのだが、俳優さんではないし、そもそも何かに扮しているわけでもなく、いで立ちもいつものスーツ姿だし、違和感が半端なかった。

しかも、ドラマの最初と最後だけでなく、途中でも、主人公の二宮和也と妹(有村架純)が住む家の台所に急に出てきて、それから数カ月たちました、というようなことを言ったりするのだが、これって、池上さんが出てくる必要ある? 普通にナレーションで入ったほうが自然だし、ドラマの流れもぶった切ることがなくてよかったのでは? と思ってしまった。
とにかく唐突すぎた。

あと、唐突と言えば、終盤、ニノ演じる速水が歌を歌うシーンもなんだか取ってつけたようで、観ていてちょっとこっ恥ずかしくなった。
キャスト陣は良かったし、全体的なストーリー自体や展開もわりと良かったと思うのだが、池上解説と言い、演出がちょっと…
もっと純粋にドラマを楽しみたかったなと残念。

『志村けん~』のほうは、志村役を務めた山田裕貴をはじめ、ドリフターズの面々を演じた役者陣は皆、本物に寄せようと演技してはいるのだろうけれど、決して物まねになることなく、そしてなんとなく雰囲気の似た役者をキャスティングしてはいるのかなとは思うが、顔がすごく似ているわけでもないのに、それぞれになんだか本物のご本人を彷彿とさせる演技で、とても良かった。

私は世代的にも本物のいかりや長介の顔や姿をもちろん知っているのに、ドラマの遠藤憲一が無理なく自然といかりやに見えてきてしまって、役者さんて凄いなと思ったし、今も健在の加藤茶を演じた勝地涼も、本当に80年代の加藤に見えたほど。
そして、そんな彼らが織りなすひとつひとつのエピソードも泣けたり笑えたり、良いシーンが多かったと思う。

それだけに、ドラマの構成が、後半は往年の名作コントの再現シーンで占められていたのが少し残念だった。
実際に本物を見たことのあるコントも出てきて、確かにしっかり再現されているなあ、とは思ったが、もっと一人のコメディアンの人生を深く描くドラマなのかな、と思っていて、そういう物語の部分をじっくり観たかったので、再現コントに時間が割かれすぎているように感じられて、私の中ではちょっと、思っていたのと違ってしまった。

期待以上、そして衝撃だった『必殺仕事人』

結論を言うと、私の中でのこの年末年始のドラマNo.1は『必殺仕事人』(ABC系)だ。
録画して観たのだが、衝撃的すぎて2回観た。
事前の段階でもまあまあ上位になるだろうとは思っていたが、まさか1位になるとは予想していなかったので自分でも意外である。

No.1の決め手としては、まず、ストーリーが思ってた以上に練り上げられていておもしろかった。
シリーズ物の時代劇と言うと、大体お決まりの展開になるイメージが強いし、このシリーズも、最終的に仕事人が悪を成敗する、という着地点は決まっているわけなので、正直ストーリー展開にはそこまで期待をしていなかったのだが、予想を上回るというか裏切るというか、前半順調に仕事人へ依頼が行って、あれ? 放送の尺的にちょっと成敗するには時間帯が早いけど、この後どうなるの? と思ってたら後半まさかの展開そして衝撃の結末、という感じで、思わず物語に引き込まれてしまっていた。

そしてその、物語に引き込まれた最大の理由は、何と言っても今回ゲスト出演していたKing & Prince岸優太の驚くべき演技力。
岸のこれまでの役者としての話は、冒頭にも挙げた前回の記事(ドラマトーク#8)で詳しく書いた。
そこでは今作よりも先の今後へ期待を込めて、

私としては、推しという贔屓目なしに、彼は振り切った演技も抑えた繊細な演技もナチュラルにできる役者だと感じているので、今後はぜひ本人のイメージからかけ離れた役でその本領を発揮してほしいなと思っている。

と書いていたのだが、まさか今作で、この「本人のイメージからかけ離れた役」が見られるとは思っていなかった。
公式YouTubeに上がっていた事前のPR動画などでも、至ってふだん通りの、にこやかでさわやかで天然な岸くんだったので、よもや闇に落ちていく役だとは思ってもみず…。

物語序盤では岸本人のイメージとも近い、純粋でまっすぐだった青年が徐々に歪んでいき、最後のほうでは狂気さえ見せるのだが、そのちょっとずつ変わっていく繊細な演技が本当に見事だった。
序盤と終盤とでは同一人物と思えないほど目つきや表情も違っていて、怒りや狂気をあらわにするシーンでは振り切った演技もあり、そうかと思えば前半ではちょっとコミカルなシーンもあったりと、実は演技派アイドルの本領を存分に発揮していたと思う。

同じくゲストキャストとして岸の弟役を演じたなにわ男子・西畑大吾も安定の演技力で、本人の関西出身を微塵も感じさせない江戸の儚げな絵師の役、こちらもとても良かったが、岸に与えられた役がより難しい役どころだっただけに、今回はそれを見事に演じきった岸の存在が際立っていた。

なんなら主役の東山紀之よりも目立っていたような…と思うが、もともと東山演じる渡辺をはじめ、仕事人の面々はふだんは控えめに生活しつつ、悪を成敗するときも夜の闇に紛れて淡々と仕事をこなすといった役の設定でもあるので、その抑えた演技で、岸や西畑らゲストを盛り立てて作品を作り上げていったんだろうなと感じた。

情報番組か何かの番宣インタビューで東山が、15年このシリーズで演じていて監督から初めて手紙を貰った、その手紙には(東山にとって事務所の後輩でもある)岸や西畑ら若い役者をどうか大事にしてほしい、というようなことが書かれてあった、というエピソードを披露していたが、O.Aを観終えたら、監督がそう言ったのも本当に納得だなと思った。

まあ、私がいくら熱く語ったところで百聞は一見に如かずなので、本当に、観てない人は配信で観てほしいくらい、今作の岸の演技は贔屓目なしに素晴らしかったと思う。
私にとってはとにかく、今後の岸の役者業により一層期待が高まる年末年始だった。


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