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ドラマトーク#7 2021秋ドラマ中間評価『日本沈没-希望のひと-』

2021年10月期 TBS系・日曜21時
出演:小栗旬、松山ケンイチ、杏、香川照之 他
中間評価:3.5(5点満点)

過去何度も映像化の名作をアレンジ

言わずと知れた小松左京の往年のベストセラー小説『日本沈没』が原作。
とは言っても大幅にアレンジされており、何ならほぼ原作の面影はないと言ってもいいくらい。
小栗演じる主人公・天海啓示の名前からして、ドラマオリジナルである。

原作は今までにも何度も映画化やドラマ化されており、私も2006年の草彅剛主演の映画は観たことがあるが、そちらも今回とはまた全然別のアレンジ作品だったし、この作品に関しては、原作との差異は気にせず観るのが正解だと思う。

今回のドラマの時代設定は2023年の日本ということだが、見た感じは現在と同じで未来感は特に感じられない。
ストーリーとしては、もともとが現実にはあり得ない日本列島の沈没を描いているので、あくまでもSF的なパラレルワールドの物語として楽しめるかなのだが、その点では合格と言って良いと思う。

日曜劇場らしさ満載

日本列島の沈没という点では奇想天外だが、その周辺で起きる政治家・官僚・記者間の駆け引きなどの社会的視点の描き方は現代の世相が反映されており日曜劇場ならではと言える「らしさ」を見せている。
香川や石橋蓮司風間杜夫と言った見るからに一筋縄では行かなそうな俳優陣がそれぞれクセのあるキャラクターを演じているのも見応えあり。

全体的に重厚感のある世界観の中で、沈没ストーリーの行方がどうなるのかはもちろんだが、政治的な部分で所々に謎解きの要素というかこれから明らかになりそうな闇があったり、バツイチとなった啓示と杏演じる記者・実梨の関係がどうなるのかなど、サイドストーリーの要素も本題とうまく絡められていて、続きが気になる展開になっていると思う。

気になるところもあるにはある

首相役の仲村トオル、官房長官役の杉本哲太らベテラン勢や主要キャストの松山なども安定の演技で安心して観ていられるが、主人公・啓示が所属する「日本未来推進会議」のメンバーであるどちらかと言うと若手のキャスト陣がちょっと物足りない感じはするかも。

これは脚本の問題だとも思うのだが、ちょこちょこ、ちょっとベタというか、クサめな熱い台詞が出てくるときがあり、ベテラン勢が厚みのあるデフォルメされた演技の中で言うぶんにはあまり違和感を感じないのだが、ウエンツ瑛士中村アンなどだと、急にとってつけた感が出て、熱いシーンなのに観てる側としては一歩引いてしまうことがある。

あとは、どうでもいいことだとは思いつつも気になっているのは、官僚であの小栗の髪型はありなのか? ということ(笑)。
公式サイトの人物紹介写真はそうでもないが、パーマのかかった前髪がたらんと垂れているエリート官僚っているのだろうか…。
それ言ったら松ケンも髭面だけど、大企業の御曹司の役だから髭あっても出世できてる設定なのかな…なんて思いながら観ている。
最近は官庁と言ってもそこまでお堅くないのかな…。

やはり香川照之の存在感

あとはとにかく香川照之の顔芸が見事!
と言うと語弊があるかもしれないが、やはり日曜劇場で香川と言えば、いわゆる顔芸を期待してしまう部分もあるわけで、そういう意味では今回もその期待に見事に応えている。
カタカタと忙しなくPCを操作する音と、地殻変動の兆候を知らせるモニター画面の波形、そしてわなわなと震える香川のドアップだけで、沈没の危機が迫っていることを表現するシーンは秀逸だった。

『半沢直樹』『99.9-刑事専門弁護士-』『小さな巨人』
をはじめ、この日曜劇場枠のドラマに出過ぎなくらい出ている香川だが、視聴者にその役の強い印象を残しながらも、どの役もそれぞれきちんと違って見えて決して同じようにならない演じ分けは、役者としていつも本当に凄いと思う。

後半以降のみどころ

日本列島の沈没という絶望的状況の中で、SFとは言えこの先どのような説得力をもってラストに向かっていくのか、そして希望のひと、というサブタイトルにも表れているこのドラマのテーマどおりに、本当に希望の光が見いだせる終わり方になるのか、というのが一番のポイントだと思う。
政治の裏で暗躍している本当の黒幕が誰なのかも気になるところ。
このあたりに注目しながら、引き続き観ていきたい。

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