【イベントレポート】NMM勉強会#03 日本の音楽業界団体
こんにちは!
ニューミドルマンコミュニティのいいじまです。
昨年末より月1回ペースで開催しているコミュニティ限定の勉強会。
第3回目のテーマは、「日本の音楽業界団体」です!
新年1発目の特別編ということで、今回はコミュニティオーガナイザーである山口哲一さんに、わざわざ資料を作っていただきました。
過去に音制連や芸団協の理事も務めた山口さんにしか語れない、独断込みの貴重な解説ばかり。
その模様を一部、みなさんにもお届けします!
音楽業界団体って何?
音楽業界団体について早速話していきたいのですが、なぜそもそも業界団体が作られるのでしょうか?
業界問わず、一般的に業界団体が作られる最大の目的は、行政に働きけること、端的に言うと、陳情を受け付けてもらうためです。
法律を作る・変える、役所の方針を変える、補助金を出させる、税金を下げさせるといった、何かしら行政に対して働きかける際に、行政側は「業界全体の意見がまとまっている」かどうかを気にします。
そうした行政側が求めるスタンスに応えるために、業界団体が存在しているのです。
ちなみに、Musicmanのデータベース「音楽関連団体」に掲載されている団体数を数えてみると、全部で46もの団体があることが分かります。
なぜこんなにもたくさんの団体が存在しているのでしょうか?
その1つの答えは、音楽の権利の数だけ団体が必要だからです。
音楽の権利には、著作権や著作隣接権と呼ばれるものがありますが、それらは様々な権利の総称として使われる言葉であり、実際は利用方法ごとに「支分権」と呼ばれる細かい権利がたくさんあります。代表的なものを挙げると、演奏権や複製権などです。
こうした支分権の正当な徴収分配を要求し、権利を獲得してきた歴史が団体の数だけあると言えます。
例えば音楽事務所の団体である音制連は、貸レコードの蔓延を防ぐために設立されています。
これまで音楽業界団体が積み上げてきた実績は数え切れません。
特に風営法改正、チケット高額転売規制法成立は、業界団体が果たした大きな成果と言えるでしょう。
このように社会全体に関わる大きな問題は、個社では決して解決できないため、業界団体として一丸となり、適切なロビイング活動を行って善処する必要があるのです。
主要団体の成り立ちと概要
さてここからは主要な10個の団体について、その成り立ちと概要を解説していきます。
1. JASRAC (一般社団法人 日本音楽著作権協会)
JASRACは80年以上の歴史を誇る、言わずと知れた日本の著作権管理のパイオニアです。作詞家・作曲家・音楽出版社などの著作権者が自ら運営に参画し、意思決定を行っています。年間1,100億円の徴収分配を継続しており、音楽業界への貢献は非常に大きいです。
一方で選挙で選ばれる作詞作曲家が理事になるというガバナンス制度によって、理事会メンバーの高齢化は否めず、グローバル規模で急速に進んでいるデジタルシフトへの遅れを危惧する声も見受けられます。楽曲管理DXの実証実験など前向きな姿勢も見られるので、今後の更なる貢献に期待したいところです。
2. RIAJ (一般社団法人 日本レコード協会)
こちらも80年近い歴史を誇る、日本レコード協会。通称「レコ協」です。音楽産業の中心を担ってきたレコード会社による団体ということもあり、業界内外における存在感はとても強いものがあります。
一方で団体としてのまとまりが弱く、意思決定に時間がかかることもしばしば。最近では、違法音楽アプリ蔓延を防げなかった責任の一端があるのではないかという批判も受けています。
3. JAME (一般社団法人 日本音楽事業者協会)
1963年に設立された業界団体、通称「音事協」。渡辺プロが中心となって作られた、いわゆる芸能事務所の団体です。影響力や交渉力、資金力が強く、結束も非常に固いとされています。特にTV局への影響力は強く、肖像権やパブリシティ権など映像領域の権利に関して中心的存在を担っています。
また二次使用の活性化を目指してaRmaという団体(後述)を立ち上げるなど、デジタル時代への積極的な対応も行っています。
4. FMPJ (一般社団法人 日本音楽制作者連盟)
前述の通り、貸レコード蔓延を防ぐために設立された団体、通称「音制連」。いわゆる音楽事務所の団体です。アーティストや音楽業界を目指す人に寄り添う姿勢をフィロソフィーとしており、フリーペーパー『音楽主義』をはじめとする積極的な情報公開にも取り組まれています。
5. 芸団協CPRA (公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会 実演家著作隣接権センター)
芸団協CPRAは1993年、芸団協の中に団体内別組織として設立されました。実演家の著作隣接権分配業務を担う芸団協において、音楽の著作隣接権分配が適切に行われていないという問題を解決するために発足した組織です。音事協、音制連が中心となり、MPN(一般社団法人演奏家権利処理合同機構MPN)、PRE(映像実演権利者合同機構)を加えた4団体で運営されています。
6. MPA (一般社団法人 日本音楽出版社協会)
MPAは1973年に設立された、音楽出版社の団体です。一方で原盤制作を音楽事務所が行ってきた流れから著作隣接権分配も一部行なっており、原盤権利者の団体という側面もあります。そのため、音制連や音事協と二重に加盟している会社も多く見られます。
7. ACPC (一般社団法人 コンサートプロモーターズ協会)
ACPCは1990年に設立された、全国のコンサートプロモーターの団体です。洋楽招聘系も含め、ほぼ全社が加盟しています。権利徴収がほとんどなく財政基盤が弱い点は否めませんが、ライブ市場の伸長とともに存在感を増している団体です。
8. IMCJ (一般社団法人 Independent Music Coalition Japan)
IMCJは2017年に設立された、独立系の音楽事業者及びアーティストの海外展開を支援する団体です。国際的なインディペンデント団体であるWINの会員として、アジア・欧米との交渉力向上に努めています。またMerlin、Music Ally、FUGA、TIMMなどとの連携も積極的に行っており、デジタルとグローバルを意識した音楽事業者向けイベントも頻繁に開催しています。
9. MPN (一般社団法人 演奏家権利処理合同機構)
MPNは1999年に設立された、実演家(主にサポートミュージシャン)の著作隣接権を扱う団体です。演奏家団体(パブリック・イン・サード会、日本音楽家ユニオン、(特非)レコーディング・ミュージシャンズ・アソシエイション・オブ・ジャパン、(一社)日本作編曲家協会、(一社)日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ、(公社)日本演奏連盟)に加盟するミュージシャンを中心に発足しました。
10. aRma (映像コンテンツ権利処理機構)
aRmaは2009年に、音事協・芸団協・音制連の3団体が協力して立ち上げた団体です。デジタル化に伴う映像コンテンツの二次利用ニーズが高まる中、地上波TV局が既得権保守に走ったことへの対抗策として、二次利用に係る円滑な権利処理を実現するために設立されました。2011年にはMPN(一般社団法人演奏家権利処理合同機構MPN)、PRE(映像実演権利者合同機構)が入会し、現在は5団体によって運営されています。
コロナ禍での活躍
2020年2月26日に首相会見で大規模イベントに対して自粛要請があってから、度重なる緊急事態宣言、煽情的なマスメディア報道、コンサート保険の適用外など、コロナ禍による音楽業界へのダメージは計り知れないものがありました。
そんな中、音事協・音制連・ACPC・MPAの4団体はいち早く連携してロビー活動を行い、コンサート実施のためのガイドライン設定を公的にするとともに、J-LODliveという既存の仕組みを活用してオンラインコンサートへの補助制度などを成立させました。
また2020年6月には、日本独自のライブエンターテインメントの根底を支える事業者や卓越した技術者(音響、照明、ステージ制作、楽器管理、舞台監督など)を守る目的で、音事協・音制連・ACPCの3団体が主管となり、ライブエンタメ従事者支援基金「Music Cross Aid」を立ち上げています。
さらに2021年7月には、医師会の要請によって中止せざるを得なくなった「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021」と「ARABAKI ROCK FEST.20th×21」の件に対して、音事協・音制連・ACPC・MPAの4団体は共同声明の形で抗議の声を上げました。
同様に2021年9月、音楽団体に参加していない主催者が開催した音楽フェス「NAMIMONOGATARI」でクラスターが発生した件についても、共同声明を発表して激しい非難の姿勢を見せています。
このように業界団体が一丸となって闘ったおかげで、コロナ禍による音楽産業の危機的状況は少しずつですが回復に向かっていると言えます。
業界団体の近未来
では業界団体は今後どうなっていくのでしょうか?
前段で業界団体は権利の数だけ存在すると書きました。また各団体事務局の運営費は、それぞれ取り扱っている権利収入の分配手数料を原資にしているところが多いです。
しかし今後、ブロックチェーン導入による徴収分配の透明性と効率化が実現した際に、権利者団体の役割は「蒸発」してしまうでしょう。
また冒頭で46もの業界団体があるとも書きましたが、果たしてこれだけの数が必要なのでしょうか?
JASRACと、それ以外に音楽業界全体がまとまった団体が1つあれば、もしかしたら十分なのかもしれません。
一方でレーベルや音楽事務所のパワーが落ち、DIYアーティストなどが躍進する個の時代においては、音楽家に便益を提供する業界団体の存在価値が上がっていく未来も期待できるでしょう。
いかがでしたでしょうか?
ここでしか知ることができない貴重な情報も含め、音楽業界団体について理解が深まったことと思います。
そしてさらに!
今回の勉強会を踏まえて、豪華イベントも開催いたします👇
📢 イベントのご案内
2/2(水) Music Tech Radar Vol.23 ライブエンターテインメント産業の現在地と2022年の展望 ゲスト:中西健夫
月1回、音楽業界に携わる豪華ゲストをお招きして学びと議論を深めるイベント、「Music Tech Radar」。
2022年1発目となる今回は、コンサートプロモーターズ協会会長の中西健夫さんをゲストに迎えます。
コロナ禍における業界団体の取組み、ライブ産業の実情を丁寧に伺いつつ、ポスト/アフターコロナに向けたライブビジネスの課題と可能性についても一緒に議論ができればと思っています。
ぜひこの貴重な機会、奮ってご参加ください!
2/10(木) NMM勉強会 Vol.04 テーマ:日本人アーティスト 海外挑戦の歴史
続けて、次回の勉強会についてもご案内します!
次回のテーマは、「日本人アーティスト 海外挑戦の歴史」です。
デジタル化によって世界との距離が縮まった中で、日本の音楽をどうやって海外に届けるか、頭を悩ましている方も多いはずです。
この勉強会では、改めてこれまでの様々な海外挑戦の成功/失敗事例を振り返りつつ、日本からグローバルヒットを生み出すためのヒントを導き出せたらと思っています。
こちらはコミュニティメンバー限定イベントとなりますので、興味を持った方はぜひ入会をご検討ください!
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