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詩│鞄

ハートブレイクしたら欠片をひとつひとつ拾い上げて鞄にとりあえずいれて

ガラガラと音をさせながらとにかく駅までいって切符を買って、、

行く先は取りあえず車窓に座って流れる景色を

見てからにしようと思う

薄暗い駅は遠い昔の記憶を思い出す

マルセイユ駅で買った切符の列車に乗り遅れた日

必死の片言で次の列車の切符を買った

夜にならないと次の列車は来ない

だんだんと港街の駅周辺は
昼間の雰囲気とは違ってきた

ターバンを巻いた人びとが多くなってきて

雰囲気がガラリと変わってゆく

様々な人種のひとが渦巻いて交差して、、

我に返るとそこには
わたしのような小娘はいなかった

ごった返すマクドナルドの中に取りあえず入った

日本人をすがる気持ちで探した

ひとりのバックパッカーの日本人男性が入ってきた

わたしは迷惑にならないくらいの距離を保ちながらなるべく近くにいた

とても助かったんだ

気持ちが落ち着いた

次の列車が来る前に

その人は颯爽とお店を出ていった

わたしもいつかあんな風に旅をしてみたいと
思い、心の中で御礼をした

恥ずかしながらまだ、わたしの心は
あの頃のままなのかもしれない

迷惑を掛けてはいけないと距離を置く
けれども誰かの背中に縋る

情けないけどね、でも
ありがたいことに、
いつもなんとかなりながら
生きてきた

わたしは呆れるほど呑気なところもあるから

宿までの帰りの列車にやっと乗れた、
席が無くて、荷台の隅でうずくまっていた、
鞄を取られないようにギュッと抱えこんで、

でも、気がついたらわたしは眠っていた

握り締めた鞄は取られずに、、

みんなそれぞれに

自分を生きている

その中で大切にしたいものを抱えながら

奪われたとしてもわたしが生きている限り

失われた記憶として残っている

自分の記憶との対話をするように
今と未来の為に

いつか記憶の海への航海する日がくれば

あのマルセイユの港街と、
あのバックパッカーのひとの背中を思い出したい

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「月並みだけどもう一度会いたいひとがいる

心から慕っていたこと、感謝していることを

また伝えられたらいいなとおもう、

伝えたいとおもいながら、

伝えられないかもしれなくても

いつか、、そうおもいながら

今日も生きる為に眠ろう」

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