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台北の寧夏夜市で臭豆腐を食べてみた

 私は、台湾は台北にいました。そして、悩んでいました。

 奴を倒さずに、このままこの地を去って良いものかどうかを。

ヤツの話になったとき、

「アレ美味しいのに」「アレ美味しいよ」

 など、多くの方から、そんな毛嫌いしてちゃダメだよとのご意見をいただいた。また、同時に、あんなもん食えたもんじゃねえ、との罵詈雑言もありました。

 しかし、夜市の道々でヤツ出くわす度に私の思考を一時停止させてしまう、あのゲ○ともウ○コともつかないアグレッシブな芳香。そしてそれを嬉々として食らうタイワニーズたちの横顔。


そう、ヤツとは、台湾の神秘、

「臭豆腐」

であります。


 でもあれ臭すぎね。食えるの。ほんとうに。マジ?あれ、食うの?

 臭いにやられ、しっぽを巻いておずおずと逃げ戻ってくるとは日本男児としてどうなのか。こんなことで日台友好が計れるのか。人として恥を知れ。臭豆腐食って死ね。

 内なる自分と喧々諤々の議論を繰り広げた結果、まあ、そりゃあ、

食べるしかないですよね。。。

つべこべゴタクを並べる前に食べて見りゃいんですよ。死ぬ訳じゃなし。普通に食べてるものだし。


寧夏路夜市。

漂いますね。

奴の気配が。

ああ、いました。

ヤツです。


ヤッコさん、居やがりました。

 しかしご安心。私には作戦があるのでした。

 私は敵の情報分析を怠りません。みなさんはご存じでだろうか(こんな無駄知識みんなが知ってる訳ない)。臭豆腐には種類が二種類あることを(こんなことは知らなくて良い)ヤッコさんには、

「生」タイプと「揚げ」タイプ

が存在するのです。

 これは昨夜、ゲストハウスの共同スペースで台湾人のお姉さんが教えてくれました。台湾人だって、「生」臭豆腐は苦手な人もいる。でも台湾人のほとんどは臭豆腐は好きですよ。なぜならみんなが好んで食べるのは「揚げ」タイプの臭豆腐だからです。揚げ臭豆腐は、中が暖かく、臭みは幾分緩和され、それでいて臭豆腐としてのおいしさも味わうことができるのですよ、と。

 確かに、言われてみると思い当たる節がありました。

 臭豆腐屋台の前を通るとき、明らかに刺激臭垂れ流してるお店とそうでないお店がありました。そうなのです。激臭垂れ流している店は生の臭豆腐を陳列しています。しかし、油でカラッとこんがりきつね色に揚げた臭豆腐を提供する店あまり臭くはない。


ははははは。

揚がっていやがる。こんがりとな。

そんな臭くないじゃん。

勝ったも同然。

情報戦を征する者が勝者となるのです。


 ただ、台湾夜市の難点は英語が全く通じないことにあります。日本語はちょっとだけ通じます。しかしあまり難しいことは通じない。「お金あと、百元!」なんていう金額の数え方や、「肉がいい? 野菜がいい?」とか簡単なメニューの選ばせ方は知ってます。しかしコチラの言うことまではわからない。

私「臭豆腐、たぶん全部食べれないから、半分で良いよ。お金は全部払うから!」

台湾のお兄さん「あぁ? よーはいまーさんちょいまーとっよー! は?」(私にはなんかこんな感じに聞こえた)

私「・・・」

台湾のお兄さん「あー、はいまーさんまっとーよー? ああん?」

私「So,maybe, I cannot all of that.Because,this is my first experience of Chudofu. So I want you to serve half of that,of course, I'll pay full price of that,ok?」

台湾のお兄さん「・・・」

私「・・・」

台湾のお兄さん「はあ? ありおりはべりいまそかり!」

私「・・・オーケー。オーケー」

台湾のお兄さん「オーケー」

 なにがオーケーなのかは謎ですが、つべこべ言わずに、食えばいいんだよ。と彼は言っていました。多分。



「うっ!」

 腐臭が鼻を刺しました。

 それは店員の兄さんが、(仮に彼の名を台湾のお兄さんさん、略して台兄とします)足下のタッパーから生の臭豆腐を取り出してまな板の上に置いたからでした。激臭は可及的速やかに私の鼻奥を侵略してきます。そしてそれをトントンと適度な大きさに切り分けて、一気に高温の油の中へ!

 ジューー!

 香ばしい音。ワオ。きつね色。美味しそうかも。臭いもしない。

台兄「・・・」

ーーーコトッ。

無言の台兄が、私のテーブルに、こんがり揚がってイイ感じに切りそろえられたヤツを私の眼前に置きました。



 上にはピクルス的に甘酸っぱく味付けされた、白菜のようなものが添えられています。ナマスに近いお味。

臭いをかぎます。

私(・・・無臭!)

万感の思いで、思い切って、かじります。

トオウッ!!

私(・・・、おぉ、ちょっと香る、、、が、、、あぁ、まだ生きている!)

噛み切った断面の香りをかぎます。

確かに、臭う。

が、食えないことはない!

 むしろ、通常のお豆腐よりより発酵が進んでいるのか、それとも独特の香りに普段は刺激されない器官が刺激され少しハイになっているのか、なんというか、ちょっと、おいしい。

 普通のおでんに入っているような厚揚げを、揚げたてにして、ちょっと柔らかくして、ちょっと味に深みが増したような感じ? で、ちょっと臭い。でも、ちょっと美味しい、、、?

もう一口、食べます。

もぐもぐ。

飲み下します。

臭っ。

でも、まあ、もう一ついけなくはない。

もぐもぐ。

なんてしてるうち、

私(台兄っ! おれ、おれ、、、食べれたっっ!)

万感の思いで私は台兄を振り返りました。しかし彼は私に背中を向け、多くは語りませんでした。彼はその大きな背中で、悠然と次の臭豆腐を揚げていました。真の男は、多くを語りません。またひとつ、大人の階段を上った、そんな一夜のできごとでありました。謝謝。

まとめると、臭豆腐は、揚げたのは食べれる。味は普通の揚げ豆腐よりちょっとだけ美味しいかも知れない。どこでも売っていて、それでいて安いので、トライしてみるのも悪くないかも知れません。旅先のネタとしては悪くない。

(息をするとちょっとだけアレの臭いこそしますがそれはご愛嬌)

(私の向かいで晩御飯食べてたお店の店主の息子らしき少年。かわいい。

 その隣にいたじいちゃんは、ちょっと日本語喋れた。)



あと、今回の話と全然関係ないけれど、台湾のカキ氷めちゃめちゃおいしい。

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