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魅力的な人間になる対策

(1)新卒に必要とされる能力

日本経団連「新卒採用に関するアンケート調査」によると、選考にあたって特に重視した点の上位5つは過去十年間ほとんど変わっていません。若干の順位変動はあるものの、2007年に80%を超えて以来、不動の1位はコミュニケーション能力、2位には主体性、あとはチャレンジ精神・協調性・誠実性と続くます。一般常識や語学力・学業成績などのスキルを重視すると答えた企業は10%を切っており、保有資格に至っては1%を切っている状態です。

これ、日本では常識ではあるのですが海外では一般的ではないのです。メンバーシップ型雇用のなせるわざなのです。世界標準のジョブ型雇用の場合、大事なのはスキル。その職務に合ったスキルを持っているかどうかが大事です。

(2)日本と欧米の雇用制度の違いと必要な能力

日本の雇用制度は「新卒一括採用で雇用して社員を育てる」形が一般的です。最初は簡単な仕事から始まり徐々に難しい仕事を行っていきます。上司や先輩などが職場内で教育するOJT(オンザジョブトレーニング)が一般的。最初の給料は低いものの、経験を積めば積んだだけスキルが身に付き給与も上がるという仕組みです。新卒総合職で企業に雇用されると幹部になるチャンスが誰にでもあるという形です。(チャンスがあるように見えるの方が正しい表現のような気もしますが…)

欧米の雇用を日本ではジョブ型雇用と呼びます。エリート層と一般ジョブワーカー層で仕事のスタイルが大きく違い、多くの人は給料がほぼ一生変わらないジョブワーカーとして働いていきます。持っているスキルで採用され、年収も400万〜500万円(物価が日本の1.2~1.5倍位なので感覚的に300万~400万円という感じ)の収入であり、2人で働き生活することが一般的です。また、仕事も自分が出来るレベルのものしか与えられず、キャリアの積み上げることができません。あくまでも、スキルありきの世界です。

最近、ジョブ型雇用がもてはやされる風潮がありますが、日本型の雇用制度は1980年代最も素晴らしい雇用制度と言われていました。時代とともにほころびが出ているこの制度ですが、欧米と比べると仕事のモチベーションを維持しやすいこの制度は、ある意味リニューアルしながら維持すべきものなのではないかと個人的には思います。

このような社内で教育する日本の制度では、新人に求められるものがスキルではなくポテンシャル(可能性)が採用基準となることにも納得できます。そのポテンシャルとして重要なものが「コミュニケーション能力」「主体性」「チャレンジ精神」「協調性」「誠実性」などになる訳です。ある意味、若年層にとってはスキルを要求されない分ラッキーです。でも、これらの能力が高いとはどういうことなのでしょうか。それを心理学的解釈でひも解いてみます。

(3)伸びる考え方を創るアドラー心理学の基本

カウンセリングなどによく使われる心理学体系にアドラー心理学というものがあります。このアドラー心理学は「人の行動にはすべて目的があり、その目的を達成するために行動する」という「目的論」が根底を流れています。

例えばコーヒーをこぼされた客が店員をどなった場合を考えてみます。常識的に考えれば、「コーヒーをこぼされたこと」が原因で、「怒りの感情」や「大声で怒鳴りつけたこと」が結果に思えます。でも、アドラー心理学はこのような原因に対して結果があるという考えを否定します。客が怒ったのは「コーヒーをこぼされたから」ではないって考え方。コーヒーをこぼされても、それなりに冷静に対応する人もいるわけですので、コーヒーをこぼされた原因が激怒という感情をつくったという訳でもない。 このとき、Aさんには「店員を怒って怒鳴りつけたい。一方的に屈服させたい」という「目的」があったからこの行動にでたとも考えられる。自分を優位にしたい、他人を支配したいという思いがあったということです。だからそう行動したのだと、アドラー心理学は考えます。この目的論に人間関係の二類型とアドラー心理学が考える「縦の関係」「横の関係」で分析していきます。

客は店員との関係を「縦の関係」=「支配と依存の関係」にしようとしています。例えばコーヒーをこぼされたことに対して「なにやってるの!!このスカートどうしてくれるの。。。」などと怒った場合、客は店員に解決を押し付けています。つまり、自分で解決できない。店員は客が何を望んでいるか探るようになり、やはり自分では解決できなくなっています。支配と依存の関係で、解決とは違うベクトルを進むこととなります。

大事なのはこの「縦の関係」が解決を相手にゆだねてしまっていることです。解決を相手にゆだねると自分の思い通りになるはずがないので、怒りは増大し、不満が増大するわけです。そのため、自分で解決できる関係を築くことが大事です。

自分で解決するための関係として「横の関係」があります。例えば、スカートにコーヒーがかかった例を考えてみます。もし「横の関係」を重視するなら、かけられた側が「シミになるのは厭。。。濡れタオル頂戴」って冷静に対応すれば。つまり、自分事として自分で解決策を探して提案をすると店員と客が共に考えることが出来ます。そうすれば店員も解決に素早く動いてくれる可能性が高くなります。自身で目的をもって目的論で考えると、物事は解決へと向かい、その先には幸せが生まれます。

(4)新卒に必要とされる能力の心理学的解釈

例えば、組織の話で考えると「上司と意見が食い違ったときの対応」などは下のようになります。上司の命令をしっかりと聞き受け入れ、真意を理解する。その後上司とコンセンサスをとって、命令の真意をわかったことを確認します。その上で、命令を自分事にして「命令を実行する」「命令を理解の上の提案を行う」ことをすれば上司との関係はハッピーになるのではないでしょうか。自分事としてやることが出来れば上下関係の中で「縦の関係」でははなく「横の関係」と言えます。この「横の関係」が普通にできるようになれば、人生幸せしかないと思うのですがいかがでしょうか。全ての問題が自分事で、全て自分の力で解決にチャレンジできる「横の関係」が構築できれば組織の中で良いパフォーマンスができると言えます。

この関係を創ることが出来る人はすべてを自分事として物事を考えますので当然「主体性」のある人です。また、横の関係で考えると物事は解決に向かう可能性が大きいのでチャレンジしているように見られ「チャレンジ精神」旺盛と言われます。周りも解決策を考えてくれる可能性も高くなり「協調性」があると評価されます。さらにはすべて自分事で考える人は「誠実」な人ではないでしょうか?当然、相手を理解しようともしますので「コミュニケーション力」もある人です。つまり、コミュニケーション能力・主体性・チャレンジ精神・協調性・誠実性のすべてが高い人だと思いませんか?

(5)本日のまとめ

日本の組織が新卒採用で重視する項目は「コミュニケーション能力・主体性・チャレンジ精神・協調性・誠実性」などの能力です。それは、企業に入ってからOJTで教育し育てる組織体系であるメンバーシップ型が日本の企業の基本体系で、そこに必要なものは「伸びる可能性=ポテンシャル」だからです。

このポテンシャルを引き出すために私たちが持つとよいのは、「横の関係」でものごとを考え、何ごとも「自分事」として解決に努力すること。これが出来れば、コミュニケーション能力・主体性・チャレンジ精神・協調性・誠実性のすべてが高い人になれるはずです。

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