【ぶらり読書の旅】思い出の修理工場<2021年4冊目>
こうさかです。(2020年読書リスト)
読んだ本の感想を、音声と合わせてお届けします。
2021年<4冊目>の読書。
<書籍名>
思い出の修理工場
(著者:石井 朋彦)
手に取ったきっかけ
ボイスメディアVoicy放送「荒木博行のBook Cafe」より紹介。
本の概要
傷ついた思い出を美しい思い出に変える修理工場。
うまく友達がつくれない十歳の少女「ピピ」がおじいちゃんの形見を直すため、ふしぎな「思い出の修理工場」に迷い込む。
そこで様々な職人仲間や仕事と出会い、自分自身を生きる勇気をもらう。
そして、人間たちから思い出をうばう「黒いエージェント」が現れる。
ピピ、工場の仲間、冒険と戦いのものがたり。
サンマーク出版↓
印象に残った内容
①言葉の真意を捉える
カイカクが進まないのは、昔はよかったという思い出のせいです。人々の思考は停止し、過去にしばりつけられている。その記憶を、少しずつ、確実に書き換えてしまえばよいのです。
【第4章 黒いエージェントたち P68】
この文脈だけ見ると、「そのとおりだ!」と思ってしまうかもしれない。
確かに、過去にとらわれることは未来に向かう弊害になりうる。新しい取り組みを進めるにあたり、既存の枠組みを超える必要があることは理解できる。
後半の「歴史を改ざんする」という提案だけを見ると、受け入れられないのは当然である。しかし、前半のもっともらしい文脈によって、この提案自体が良いものと錯覚してしまう。
妥当な理由を並べられて、とんでもない提案を受ける。現実世界でもあり得ること。うまい話に惑わされないようにしたい。
②劣等感からの脱却
凡人は自分と同じレベルだと思っている相手と自分とをくらべる。これを劣等感という。劣等感ほどくだらないものはない。(中略)急がなければならないことほど、ゆっくり。急がなくてよいことほど、速くやること。
【第6章 急がなければならないことほど、ゆっくりやれ p101】
他者との比較は焦りを生む。
人との競争意識のあまり、焦って満足のいく仕事ができなかったり、自分の足りない部分ばかり見てしまい、仕事に追われる感覚を覚えることがある。
そんな時ほど、一息おいて冷静に状況整理してみる。
また、自分のことは後回しにしてしまいがち。
毎日を振り返る日記など、自分の為になるものは最優先で時間を確保する。
自分の時間を大切にすることが、劣等感からの脱却につながる。
③過去を受け入れて未来へ
古いものをこわすことで、新しいものが生まれると錯覚させる。そんな浅ましい仕事にどんな意味があるのか、俺にはさっぱりわからん。
【第16章 アシトカ工作所の最後 p326】
『新たな世界へ!』など華やかそうな言葉の中に、実態はあるのだろうか。
現状に何かしら不満を抱いている時に、このような言葉を聞くと、つい飛びつきたくなる。しかし、その先には過去に起きたことが繰り返される。
新しい未来へと前進し続けるためには、過去をしっかりと見つめる必要がある。それは必ずしも良い思い出だけではなく、つらく悲しい思い出もある。良きも悪しきも抱えながら、人は強くなると思う。
安易に過去を切り捨てず、受け入れながら、未来へと向かいたい。
感想
物語の前半部分は、黒いエージェントがもっともな提案をしていると感じていた。過去にとらわれては「改革」を実現できないことには、同意見だ。
しかし物語が進むにつれて、その改革が実現されることで大切なものを失ってしまうことに気付く。
「未来」に向かうことは勿論大切だが、それと同じくらい「過去」を振り返ることも大切である。何か新しい取り組みを始める際には、過去どんな出来事が起こったかも、忘れないようにしたい。
年齢を重ねるにつれて、過去の思い出は増えていく。
中には忘れてしまいたい思い出もある。でも、その思い出の中にも何か大切なメッセージがあるかもしれない。
本を読み終わり、自分の過去の人生も、一度振り返ってみようと思った。
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