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2024年1月の記事一覧
AIイラスト×700字の物語|月面の夢
探査機が月面に降り立った夜。懐かしい夢を見た。
「月が白い理由、知ってる?」
夢の中で、彼女は月面に立っている。
長い黒髪も、大きな瞳もあの頃の姿のまま。儚げで、そのくせ芯の強さを感じさせる表情も。
「答えは、斜長石という鉱物で覆われているから。隕石の衝突で溶けた月の地面が固まってできた鉱物なんだ」
小さな唇が、ほんの少しだけほころぶ。
「隕石は地球にも降り注いだのになんで月と違うのかと
AIイラスト×500字の物語|天体観測
『天体観測』/ BUMP OF CHICKEN より
僕は今も覚えている。
見えないモノを見ようとして望遠鏡を覗きこんだ夜。
暗闇で交わした言葉、星々よりも煌めいて見えた紺色の瞳。すぐに降り出した予報外れの雨に、俯いて震える君の凍えた手。
その手を握ることができなかった、あの日を。
あれから背も伸びて、書いては出せずにいた手紙たちが山になってしまった。
『僕は元気にやってるよ。そっちは?』
AIイラスト×700文字の物語|正しい値は常に求まらない
「真に正しい値、つまり真値を求めるのは、常に不可能なことだ」
彼女の瞳が輝いているのは、眼鏡の反射だけではないだろう。
「例えば体温計。1回測って熱があった。機器の故障、誤差、測り方の誤り。疑う余地はいくらでもある。10回測って同じなら、それなりに確からしい値と言えるだろう」
「そんなことしませんよ。熱があったら病気、寝て治すか医者に行けばいいでしょう」
「体温ならそれでいい。必要なのは健
AIイラスト×500文字の物語|言の葉
「なに?」
月音衣毬 (いまり) は読んでいた本から顔をあげた。
青く透き通った大きな瞳に、窓から降る木洩れ日が輝きを与えている。
――寂しそうで……綺麗だった。
「いや、別に」
あやうく零しかけた言葉を飲み込み、ごまかす。
別に愛の告白でもないのに。なんで想ったことをそのままに言えないのだろう。
「そう。何か用かとおもった」
月の音色のような声。そんな言葉を吐くわけにいかず、意味もな