AIイラスト×500字の物語|天体観測
『天体観測』/ BUMP OF CHICKEN より
僕は今も覚えている。
見えないモノを見ようとして望遠鏡を覗きこんだ夜。
暗闇で交わした言葉、星々よりも煌めいて見えた紺色の瞳。すぐに降り出した予報外れの雨に、俯いて震える君の凍えた手。
その手を握ることができなかった、あの日を。
あれから背も伸びて、書いては出せずにいた手紙たちが山になってしまった。
『僕は元気にやってるよ。そっちは?』
『仕事にもなれたよ。最近、楽しい事があったんだ』
宛名を書けずにしまい込まれた、君が好きだった星空柄の便箋たち。
気づいたら、外に飛び出していた。自分でも分からない何かに、体が勝手に走り出す。
もう一度あの日の君に逢いたくて、フミキリまで駆ける。見えないほうき星を追いかけて。
白い息が星空に消えていく。身体中の熱が吸い込まれていく星空は、たくさんの星が瞬いていた。
見えないモノを独りで探すのは辞めた。見えてるのに見落としてたモノを取り戻しに行く。
そこに君はいなくても。
✎イラスト:Bing Image Creater
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