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#400字小説
【400字小説】ミステリー・ラブ・ファンタスティック
鬱になって3ヶ月、家を出ていない。毎晩あの人が夢に出てくる。結婚したかった、あの人と。職場の同僚だった、でも、結婚して退職するんだ。ついでにオメデタだそうで。
それを小耳に挟んでから出社していない。今夜はあの人の送別会だった。その模様の写真が同僚から送られて来て、あの人が花束を抱いて、顔が涙で化粧崩れしているのに、泣き笑っているのが、美しかった。別れは一人一人にハグしてサヨナラしたそう。だったら
【400字小説】超*サマーヌード
明るいのに堂々と下着姿になったあなたは強かった。「早く脱ぎなよ」と急かされて、いもっぽかったな、おれ。さすが3コ年上は違うなって、制服を脱いだんだ。
「チラチラ見てたでしょう」と愛撫している最中に言われた。バイト先の先輩、それが彼女。忙しいってのに、にこにこ接客するその姿に惚れていたんだ。でも、おれにだけ見せてほしい、笑顔。「誰にでもやさしんスね」と胸を掴んでいた手を休めた。「手を動かせ」ってお
【400字小説】生クリームの湖にダイブ
あなたと抱き合うのは体がベッタベタになるから好まない。裸になればあの3万円の腕時計を思いきって買えるはず。30万円のサングラスしてるあなたの気が知れない。お金持ちなのは正直魅力だけれど、言い寄られるこっちの身にもなってほしいな、拒否感。
ユーガッタマネーで構わない、アイガッタソウルしたい。わたしは幸せにはならない。お金とかセックスとか二の次で、わたしは絵を描き続けるの。《楽しいから描く》がわたし
【400字小説】きみがわるい
貴美は顔面蒼白で「あなたは気が狂ってる」って震えながら言うから、わたしは傷つかなかった。飲めないジャック・ダニエルを気取ってさ、痛々しい。
「あなたの書いているのは小説じゃない」って突き放されたこともあったっけ。あの時は怒鳴ってしまったけれど、今になると大バカだったなって反省してるよ。頭に血が上ったことにじゃなくて、貴美のセリフは貴美の主観だから、わたしの主観とは何も関係ないってこと。わたしはわ
【400字小説】精神科病棟に入院したきみ
好きだったよ、繊細なきみが。だから、わたしは入院したって聞いた直後に、駆け足で見舞いに行った。「やあ」でも「こんにちは」でもなく、「ダウンしちゃった」と第一声に、きみが笑った。弱々しくて泣いてしまった。「どうしたの?」って、頭をよしよししてくれたきみ、逆じゃん。
面会所の窓ガラスの越しに見える中庭が爽やかで、様々な人が笑い合っていた。ほがらかに活気があって、でも全員病んでいるんだなって偏見のある
【400字小説】花束をもらっても嬉しくない
なんかこの2、3日でフォロワーさんがグッと増えて戸惑っている。大抵が金儲けの輩か、自己顕示欲の塊か、偽善者かで、虚無感に襲われるよね。もうこれ以上、閲覧数も増えなくていいから、静かにやらせてくれ。スキ返しにもフォロー返しにも労力を使う。
こんなつもりでnoteを始めたわけじゃない。シンプルに、ただ楽しく書きたいだけだったじゃんか。でも裏腹にnoteという海に沈んでいたくはない、見つけて欲しいって
【400字小説】屋上のコンバース
4階建ての《コーポ銀河》の屋上にあがる。きれいな夜景があるわけでも、タワーマンションに風景を塗り潰されているわけでもない。ただある住宅街。近代的な図書館が見える。小児科の屋根が黄色い。風が生ぬるい。カレーの匂いはしない。
そこにスニーカーが転がっている。両方、底を空に向けている。誰かのコンバース。落ちていないキャップのロゴはニューヨークヤンキース?その女の背負うリュックサックは無地の紺だ。
わ
【400字小説】めまい
貧血でひっくり返るのは、決まって水曜日の全校集会で。この頃は宮沢先生が横に立っていてくれる。先月から「椅子に座るか」と提案してくれるにも関わらず、拒否して、でも、結果は決まってぶっ倒れる。誰も心配はしてくれない。
わたしもどうかしていると思う。誰にも言えないけれど、めまいで気持ちが切れる時、何とも言えない快感を覚えるの。そんなこと、誰にも言えるわけないじゃん。
ところで《めまい》と《貧血》は同