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【書評】弱者男性はこれを読め!読書家によるオススメ本紹介Vol1【2024/05/20】

著者プロフィール:

 抜こう作用:元オンラインゲーマー、人狼Jというゲームで活動。人狼ゲームの戦術論をnoteに投稿したのがきっかけで、執筆活動を始める。月15冊程度本を読む読書家。書評、コラムなどをnoteに投稿。独特の筆致、アーティスティックな記号論理、衒学趣味が持ち味。大学生。ASD。IQ117。

初めに

 皆さん、本は読まれるであろうか。恐らく、この記事を開いているあなたは、読むだろう。いや、稀に、読書全くの初心者が、おすすめ本を尋ねてこの記事を訪問する事もあるかもしれない。それにしても、どちらかといえば読者に興味がある層ということだ。

 さて、今回は、そのような層に向けて、全く新しい読書体験を産む、「ガチ選書」をしたいと思う。この選書は、メインとして「教養になる」+「面白い」+「尖っている」の3つを満たす本を紹介する。友人から、「こんな本を読むなんてセンスがあるな」と思われるだけでなく、日々の思考すら上質なものに変わっていくだろう。

 弱者男性を規定する問題として、非モテ、お金がない等が上げられるだろう。そういった人は、モテる為の行動変革を行ったり、お金を稼ぐ為に能力を上げたりする。別に、それはいい。いいのだが、モテて、お金があっても満たされない人は世の中に沢山いる。逆に、それらがなくても常に満たされる人がいる。読書家だ。

 読書家は、単純に読書をしていない人に劣等感を抱かせる存在である。知的で、論理的、かつセンスがある。しかしそれが問題ということではない。本を読んでいたら、モテない事などどうでも良くなる。更にもっと行けば、宗教にハマれば、世の中のことなどどうでも良くなる。宗教にハマるのはさすがに忌避感がある人が多いと思うので、その前段階として読書にハマろうということである。

 現実の課題である、彼女を作りたいだとか、お金を稼ぎたいというのは、やってもらって構わない。読書をしながら、恋愛すればいい。そうやって、依存先を増やすのも有りだろう。問題は、読書自体、弱者男性問題を解決するパワーがあるということだ。

 ということで、「これを読まなきゃ弱者男性」ガチ選書で3冊を紹介する。

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1.久生十蘭「あなたも私も」

 久生十蘭という作家をご存知だろうか?1900年代に活躍した小説家で、変格ミステリや、歴史小説などを手がけた作家だ。実は、マニアが尽く愛好している、知る人ぞ知る天才作家で、「小説の魔術師」との呼び名を持ち、未だに根強いファンは「ジュウラニアン」と呼ばれる。

 さて、久生十蘭の作品を読むには、全集を読むのが手っ取り早いのだが、全集を読む読書家などそうそういない。という事で、文庫本からの紹介になるのだが、久生十蘭の文庫化は、岩波文庫に数冊、創元推理文庫に「魔都」、そして角川文庫からこれと、あまり沢山はないのが現状だ。どれを勧めるか迷った末に、本書にした。

 本書は、サト子という貧乏生活を送る少女がいるのだが、その少女はいつの間にか、親族の関係で、時価総額13億円の鉱業権の相続人に指定されてしまう。本人はこの事をよく分かっていないのだが、周囲が大騒ぎし、よって集って彼女に接触しようとする。最終的に鉱業権はどうなるのか?というのが大まかな話。

 古風な文体、時代を感じさせる上品な恋模様、ミステリとしての完成度。情景描写。そのどれを取ってもその辺の作家を読むのとは全く違った読書体験が得られるだろう。ただ、あまりにも尖った選書である為、人によっては合わない事がある。少なくとも万人受けのする小説では無い事に留意して、1000円もしないので、気軽に買ってみてくれ。

2.プラトン「メノン」

 「プラトンなんて、ベタすぎる」と思ったあなたは、異常者の部類に入る。普通の人はプラトンを読まない。しかし、読むべきだ。哲学書を読む事に対して、既存の意見をなぞるだけなら意味が無い、哲学とは自分で考える事だ、と反論する人がいる。一度、哲学書を読んで理解するのに、どれだけ頭を使うか試してみればいい。無論、哲学書をベースに、自分の意見を発展させる事も、試してみよう。

 さて、プラトンの対話篇はどれも素晴らしいのだが、メノンはその中でも最たるものだ。探求のパラドックスという哲学の根源となるような、もしくは頭のいい人なら自分で思いつくような難問を前に、想起説が提示される。しかし、単なる問→結論の提示だけで済まないのが、この本がそこら辺の学術書とは違う所だ。徳に関する問いに対して、未解決で終わる。この終わり方は尖っている。

 「いや、哲学書はちょっと…」と思ったあなた。この本はそういう人でも意外と読める。他の哲学書は、議論が複雑過ぎて、僕でも放り出すものも少なくないが、この本は入門書にピッタリだ。もしくは、哲学書として読むのをやめて、ひとつのアートとして読もう。芸術鑑賞の気分で読めば、内容の理解がイマイチでも楽しめるだろう。

 余談だが、海外では、「プラトンを読んだ事がある」はひとつのステータスだ。といっても、アメリカなどでは、大学生が片っ端から本を読まされるのであるが、そこで読む本のひとつとしてプラトンがある。アメリカの大学生レベルでは、教養としての古典は重要なのだ。

3.大貫隆「イエスという経験」

 文学、哲学と来たら次はなんであるか。言わずもがな宗教である。ここで、宗教から逃げるようでは、ハイスペック読書家としてはやっていけない。といっても、これは史的イエス論である。史的イエス論ということは、つまり、イエスとは実際にはどのような人物であったかを分析する研究である。宗教というよりは文献研究に近い。

 非信仰者にとっては、イエスの事などどうでもいい?いや、イエスについて知っておくのは非常に重要だ。本来なら、新約聖書の福音書を読むべきなのであるが(次の本紹介で勧めるとしよう)、兎も角、世界史に最も影響を与えた人物がイエスである。マホメットやイスラームも、イエスの思想を(一応)下敷きにしている。

 本書は、信仰的観点ではなく、歴史的観点からイエスを分析する。その中で、重要なイエス像を提示している。それは、「神の国が今まさに到来するのを待ち」、「神の国(=宴会)を自らの手で作ろうとするイエス」である。聖書を分析するにあたって、初期キリスト教団の創作の部分をなるべく見抜くよう努力し、過去のイエス論も踏まえた上で、新しいイエス像を示す。

 イエス像を構成するにあたって行われる、過去の史的イエス論への反駁、そして上質な論理構成。信仰を排した上で、イエスの存在を厳密に捉えようにする視点。新たに提示されるイエス像の意味。このどれもが、読者を新しい世界に誘うだろう。信仰者も、参考文献ぐらいには読んでおくべきだ。


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