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1982 原点レコード

昨年出版した本の端書きから。


1982年5月、ポールはもうすぐ40歳で私は中学2年生。​

当時は池袋の中学校に通っていて、優秀な同級生に囲まれて、たくさんの課題に追われて本当に息苦しい毎日でした。楽しみといえばビートルズを聴くこと。初めてレコードを予約して手に入れたのがTUG OF WAR、池袋のオンステージヤマノで購入しました。​

予約特典のポスターは実家を出るまでの13年間ずっと張り続け、何度も何度もこのアルバムを聴き続けました。ライナーノーツを読んで、「そうか、日本人でもビートルズのメンバーと仕事が出来るのか」と思い、同級生の将来就きたい職業は医者だ教師だサラリーマンだという中で、まじめに「MPL(ポール・マッカートニーの事務所)の社員か、東芝EMI勤務のち中古レコード屋の店長」とぼんやりと思ったものです。​

中学、高校とレコードを聴くのと洋楽雑誌を読む以外に打ち込んだものもなく、特に勉強もせずに行ける大学に行き、あの頃思っていた職業とは程遠いこれまた息苦しく肩の凝る会社員生活の中で、時間的な余裕と心の余裕ができたらこのアルバムについて整理をしようと思ったのが2015年、ダウンタウンレコードでの各国盤の展示会を観た時です。​

当初は所有する「各国盤の図鑑」にしようと思っていましたが、製作やプロモーションにかかわった方たちから「製作サイドの熱い想い」を取材の中で伺って以来、まずは日本盤について記録に残しておこうと思いました。​

ライナーを書かれた方がふとおっしゃった言葉「音楽が仕事という人生を送れて良かった」。私は音楽の仕事に就かなかったのですが、ビートルズの作品から「真似ではなくゼロから創り出す、創り出したイチを無限に拡げていく」素晴らしさを知り、それを今働いている会社で一時でも仕事にすることが出来てラッキーだったな、そう最近は思っても居ます。​​

この40年の間には、殆ど音楽を聴かない、聴けない苦しい時代もありました。でも、これからは音楽と共に自由な人生を過ごしていこう、そうコロナ渦の中で強く思ったのは1年前。人生は綱引き。人生はプラスマイナスゼロ。​

 

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