見出し画像

「君があまりにも綺麗すぎて」展@福田美術館

別の記事で書いた通り、先日、京都の福田美術館へ行ってきましたので、その記録です。
福田美術館は、大好きな嵐山にあるということと、素晴らしいコレクションをお持ちということと、規模が丁度良いという点でお気に入りの美術館の一つです。
今回の展覧会は「君があまりにも綺麗すぎて」展。美人画の展覧会でした。

近くの嵯峨嵐山文華館とタイアップの展覧会でしたが、こちらのみを鑑賞しました。


全体的な感想

福田美術館が所蔵する美人画ということで、安定感ある見応えでした。びっくりするくらい良かったというわけでもなければ、がっかりというわけでもない、期待通りの感じです。
と書くとネガティブに聞こえそうですが、嵐山の風景を堪能しながらゆったりとした気持ちで、心地よく作品を鑑賞する。リラックスのための鑑賞にはぴったりで、そういう意味で期待通りというのが100点満点です。

多くの作品が写真撮影OKでした。すべての作品にキャプションもありましたが、音声ガイドも無料でスマホから聞けます(音声だけでなく文字表示も可能)。
少し面白かったのが、展覧会のタイトルが「君があまりにも綺麗すぎて」とキャッチ―なものに合わせてか、キャプションの一行目にキャッチコピーがあったところ。「歌麿美人に魅せられて」とか「月も君も綺麗だ」とか。考えるのも楽しそうだなと思いました。

上村松園や鏑木清方といった、美人画といえばというお馴染みの画家から、知らなかった画家の作品もあって見応えがありました。中には甲斐荘楠音の「ちょっと綺麗と言えるのか…?」と思ってしまう、言葉を選ばずに言うとグロテスクな絵もあって、一言美人画といっても幅広いものだなと思いました。

本日のBEST

中村貞以《蛇皮線》

BESTを選ぶのがなかなか難しかったのですが、僅差でこの作品だったかなーと思います。
決して美人というわけではないけれども、凛とした佇まいに惹かれました。

他の美人画とは違って着物も無地の茶色、それに同じく無地の羽織を着て、帯も最小限の柄。髪型も低くまとめているだけでかんざし一つも付けていない。顔もにっこりともしておらず、口を結んで斜め下を見つめています。
背景もぼかしが入っているのみで、手前にカーネーションが二輪刺さった花瓶が置いているだけ。
実にシンプルな作品でしたが、シンプルなだけに力強く物語られる彼女の存在感が圧巻でした。
蛇皮線のひとつひとつの音に真剣に向き合っているかのような姿が印象的で、かっこよかったです。

その他の印象的だった作品

鏑木清方《雪つむ宵》

文机の前に座った黒い着物に青の総絞りの帯を結んだ女性。目の前の障子を少し開けて、寒そうに雪景色を見ています。
雪景色を見ている顔が嬉しそうというよりも、少し憂いを含んだ顔。さむさむ…と雪を恨めし気に見ているように思っていたのですが、キャプションには待ち人を想っているのかもしれません、といったことが書いてありました。この雰囲気のある表情が想像を掻き立てられるようです。

手前に衝立があるところから、雪景色の外までいくつかの区切られた空間があるのが面白いと思いました。
衝立の手前(鑑賞者に一番近い)、彼女がいるところ、雪景色の外。掛軸という縦の作品でありながら、奥へ奥へと感じられるのが、この空間の区切りのような気がしました。

伊東深水《夕化粧》

ポスターにもなっているこちら、本物もはっとするくらい美しかったです。
正直なところ、伊東深水ってあまり好きではないのです。ちょっと野暮ったい感じがしてしまいまして…
でもこの絵はまったくそんなことがありませんでした。

一部だけしか塗られていない白粉の白さが輝いて見えれば、白粉がないところはほんのり色づいたきめ細かそうな若い肌が輝いても見えます。
それに緑が添えられていて、ますます瑞々しい印象を与えているのです。
そしてお化粧を淡々としているかのようなクールな表情が、何気ない日常の一コマを切り取ったような雰囲気を出していました。

梥本一洋《朝凪》

モダンな格好をした二人の女性が遊覧船のデッキのようなところに座っている絵。解説によると瀬戸内海ということで、背景には青い海と島が見えます。
デッキチェアもおしゃれだし、ないよりも二人の洋服がとってもおしゃれ!!!靴や靴下までおしゃれなのです。
日本画で洋装の絵はそこまで多くはないですが、時々こうしたおしゃれなモダンな姿を見るとときめきます。
油絵とはまた違う、日本画で描かれる洋装は、さらりとした線で描かれているのが、モダンでありながら粋に見える気がするのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?