Netflix クィアアイと弱みについて
なにかにつけて話題に出すくらいはまっている「クィアアイ」。遂に今出ているシーズン、すべて見終わってしまった。インテリア担当のボビーが今シーズンをもって降板するというニュースも読んで、ひときわ寂しさを募らせている。
区切りがついたところで感想を書きたいと思うが、番組自体の感想は以前かなり番組への愛を語ってしまったので、今回語りたいのは、「クィアアイ」を観て考えた「弱み」についてである。
因みに以前に書いた暑苦しい記事は以下のものである。
「クィアアイ」でよく出てくるのが“Be vulnerable”ということである。
“vulnerable”というのが「脆弱」という意味なのでそのまま訳すとよく分からないことになるが、ニュアンスとしては自分をさらけ出して、弱さも出して、といったところか。
結局、「クィアアイ」で行われる自分の意識改革には弱さを含めた自分を認めて、それを親しい人にも共有して助けを求める勇気も必要なのだ。
それが大切とは分かりつつも、一方でそれが困難であることは容易に想像がつく。
そんな折に、よく観るYouTubeチャンネルのReHacqに哲学者の出口先生が出演された回を観た。
その後にご著書の「AI親友論」も読んだ。
平易な言葉で分かりやすく説明くださっているものの、内容自体はなかなか難しく、自分でもきちんと正しく理解できているのかはちょっと自信ない。
と前置きしつつ触れると、出口先生は、これまでの「できること」にフォーカスをあてて考えるところから、「できないこと」にフォーカスしようではないかと提案されている。
そもそも人は単独では存在できない。ただ呼吸するのでさえ適切な空気が必要で、その空気を生成するのにも様々なものが関わっている。また自分一人で考えたり決断したりしているように感じているけれども、その考えのなかには文化的なもの、他の人からの影響が介在しているわけだから、本当に自分一人の考えというのはない。
そうした自分を支えるあらゆるすべてのもの―生物や環境、人工物すべて―をひっくるめて"we"単位で考えようではないか、というのが出口先生の提案なのだ。
自分は〇〇ができるからすごい、という自分中心で「できること」ベースの考え方ではなく、自分は一人ではできないが"we"というフェローシップの一員であり、we単位で考えて進んでいく、という考え方へのシフトとなるわけだ(というのが私の理解)。
その時に、「クィアアイ」で散々言われていた"Be vulnerable"が頭によぎった。
世界の今の考え方として(と言うのは急すぎるかもしれないが)、人や自分が持つ”弱さ”に目を向ける傾向が出てきたのではないか。
確かに近代の世界において(特に西欧やアメリカ)、文明の急激な発展の中で「できること」がどんどんと増えていった。人間には無理だと思っていた空を飛び、光を作り出し、エネルギーまで作り出している。
資本主義はまさに「できること」をベースに成り立っている気がする。
この「できること」中心は、今まではなんとなくうまく進んでいただろう。逆に「できること」中心だったから、クローン技術といったこれまで神の領域と思われていたところまで進んでいけたのだとすら思う。
ところが、出口先生もおっしゃっていた通り、「できること」には限界がある。
この限界を認めずに、ひたすら「できる」とおごっていたから今になって歪みが出てきたのではないだろうか。
特に「クィアアイ」が舞台となるアメリカは、「できること」中心が顕著であるイメージが強い。自分が〇〇できます!と大きくアピールすることでチャンスをつかんでいく、そんなアメリカンドリームのイメージ。
それがwell-beingといった、本当の幸せにフォーカスがあたるようになってきてから、「できること」ベースの歪みが顕在化してきたような気がする。
出口先生の提案されていることや「クィアアイ」で提示されていることを合わせて考えると、"Be vulnerable"というのは自分の弱さというよりも、自分の「できないこと」を認めて、「できないこと」を埋めるためにフェローシップを組んで進んでいく、ということなのかなと思った。
そして「できないこと」は決して、弱さといったネガティブなものではなくて、事実としてポジティブでもネガティブでもないニュートラルなものではないのかなと思った。人間や、人間以外であっても、100%なんでもできるものなど存在しない。であれば、できる/できないで優劣をつけるべきではないし、そこで優劣がつかないのであれば、「できない」ことは必ずしもネガティブ要素ではないのではないかなと思ったのだ。
まだまだ思考しているところなので雑然とした文章になってしまったが、今考えているのはこんなところである。
上で逃げ口上を書いた通り、出口先生の言われていることを100%理解できていない気がするので、大分見当違いだったらご容赦願いたい。
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