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新参者も村を出た人も、いつでもここに帰ってくれば良い / 故郷に戻って新規就農、トマト農家に:大川内剛さん

高知県に流れる清流、仁淀川。透明度が高く、その神秘的な青色は「仁淀ブルー」と名付けられている。そんな仁淀川が流れる「仁淀ブルー流域」(伊野町・日高村・土佐市 ・佐川町・越智町・仁淀川町)の様々な「人」にスポットライトを当ててその人生を紐解きながら、その人が生産している/関わっている「物」への想いを明らかにする「仁淀人物百貨」シリーズ。

#仁淀人物百貨

8月某日、日高村でトマト農家をしている大川内剛さんにインタビューしに伺いました。


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午前中の収穫作業を終え、昼食後のハウスでお話を伺った。

—とまと農家になった経緯はなんですか?

僕、元々日高村が出身で。県外出て富士通に勤めていたんだけど、Uターンで高知に戻ってきてしばらくシステムの仕事を続けた。その後30代の時に脱サラして市内で古本屋、分かりやすく言うとブックオフみたいなのを始めたんよ。10年ほど営業してたけど借りてたテナントが取り壊しするってなって移転するか畳むか迷ったけど、いい移転先が見つからなくてね。そこで、「別のことしようか」と思ったタイミングでトマトを始めたわけ。キッカケは、富士通時代の定年前に辞めて農家になった人たち。その人達の話聞いて、“面白そうやな”と。

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農業をする人は、①親がやっていてそれを引き継ぐパターン ②非農家で新しく始めるパターンの2パターンあるんよね。

自分は後者だけど、「日高は元々トマトが有名だから」って理由で育てるものはあまり迷わずに決まったかな。もちろん、勝算があったと言うのもあるよ。ハウス栽培は設備の初期投資はかかるけども管理しやすいし、日高のトマトは単価も高いから、始めても生計が成り立つ見込みがあるなと、思って。生活はしていかないといけないからね。
10年古本屋やってたから、どの程度働いたらどれくらいの収入になるって経営のことも大体分かっていたし、農業も勝算さえつけば農家としてやっていくのに不安はあまり無かったかな。もちろん、自然災害には勝てないけど。


ー農家をしていて大変なことはなかったですか?

ぶっちゃけ、物凄く大変だったことはないかな。今のところ予定通りにやれている。ただ、1年に1回しか収穫ができないから試したいことをすぐに試せないのがちょっとね。古本屋時代のようにPDCAをすぐに回せないんだ。

農家は次の年になったら「2年生」という感じはない。というのも、さっきも言った通り試したいことを年1回しかできないから、“農家は毎年1年生”ってよく言われるよ。だから、常に試行錯誤してるね。でも、先輩農家の方が積み上げてきたものがあるから、最初の頃もそうだし今でも困ったことがあれば相談できるから安心かな。

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今後の収入に関しても、最近は販売先を徐々に増やしているんだよ。もちろん農協にも卸すけど、そこにずっと頼るんでなく今後は自分で販売先を開拓していく必要があるとは思ってる。新規で始める人は、やっぱり収入面での不安があると思うけど、日高村では普通にやっていけば大丈夫かな。


ーどんな時に楽しい、嬉しいって感じますか?

やっぱり沢山収穫できた時やね。もちろん、買った人が「美味しい!」って言ってくれた時もそうだけど、それは前提かな笑

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“こう栽培したら沢山獲れるかな?”“これ試したら美味しくなるかな?”って常に試行錯誤してるから、それで栽培して上手にできた時は嬉しいね。ただ、フルーツトマトが美味しいのは当たり前だから、味の差がハッキリ出る分、上手にできた時は最高だね。


ー今後、日高村がこうなったらいいなぁとかはありますか?

今の日高村はUターンやIターン、いわゆる移住者が割と来てるなぁって感じはある。そのこと自体はすごくいい事だと思うんだけど、日高村出身の人たちが戻って来れる仕組みやルートを確立したいなぁと。

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自分の場合は農家だからそっち方面で言うと、新規参入者が始めるには初期費用の高さや場所を借りるなどのが困難だから、行政や農協が主導して参入しやすい環境を整えてもらいたい。自分みたいに非農家だけども、日高村に戻ってきたら農家としてやっていける環境が整って、農家が増えていくことで産業が発展してもらえたらなぁと。

親が農家とかだったらまだしも、普通の大学に進学した子達が卒業後に農業を選択するってやっぱり少ないしね。だからこそ、戻ってきた時に選べる環境作りは必要だと思う。小さい頃から食育するとか、職業体験でトマト農家の元に行って将来の選択肢の一つに農家もあるよって教えておくとかね。

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日高村って市内に近いし、個人的な肌感としては適度に田舎のバランスがいいなと思ってて。子育ての環境も整っている方だし、自然豊かな場所で子育てしたいと考えたら最高の立地だと思う。田舎に移住したいと思う人ももちろんだけど、故郷に帰りたいって思っている人も暖かく受け入れるから「ここに帰っておいで」って思うよ。


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大川内剛 さん(日高村/トマト農家)
日高村出身。県外で就職後、Uターンで高知に帰ってくる。現在は日高村でシュガートマトを生産する農家。

インタビュアー:小田啓太郎(日高村/日高村地域おこし協力隊)
福岡出身。日高村で地域おこし協力隊として活動。

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感想:インタビューしている大川内さんはどこか楽しそうだった。勝算があるから挑戦しているけど、何が起こるか分からないから不安もあると思う。けど、「試したことが上手くいって、美味しいトマトができた時は最高だね」と言う言葉からも、新しいこと・難しいことに挑戦することを楽しめているのかなとも思った。
それに、日高村が好きなんだなぁとも感じた。就活で県外に出て戻ってきて農家を始めて。改めて、バランスのいい田舎だと感じていることや、故郷に帰りたい人たちに「ここに帰っておいで」と思ってくれているのがその証拠かなと。


 

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