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読書紹介 ミステリー 編Part13 『ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻』

 どうも、こぞるです。
 本日ご紹介するのは、イギリスのユーモア作家P.G.ウッドハウス作「ジーヴスシリーズ」の第1作を含んだ短編集『ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻』です。
 このジーヴスシリーズ、日本ではあまり有名ではありませんが、本国イギリスでは、あのホームズに比肩するほどの人気だそうです。作者はイギリスからアメリカに帰化したというのにナイトの称号をもらっていますから、相当なものなのでしょう。
 和訳作品も多数出ていますが、今回は文春文庫さんが出した選りすぐり短編集2のうちの1冊です。

ー作品内容ー
 20世紀初頭のロンドン。気はいいが少しおつむのゆるい金持ち青年バーティには、厄介事が盛りだくさん。親友ビンゴには浮かれた恋の片棒を担がされ、アガサ叔母は次々面倒な縁談を持ってくる。だがバーティには嫌みなほど優秀な執事がついていた。どんな難題もそつなく解決する彼の名は、ジーヴズ。

才智縦横の巻って、テニスの王子様の技っぽく無いですか?

偉いの執事?

 私もそうですが、おそらくこれを読んでいる皆さんの家にも執事はいなかったでしょうから、その存在が具体的にどういうものかってのは、想像がつきづらいのでは無いでしょうか。
 使用人でありながら、坊ちゃんに苦言を呈するシーンなどがイメージされたので、調べてみると、その家で働いている人の中で一番偉く、食事の準備から他の使用人の雇用、さらには家計の管理なんかもする人もいるんだとか。
 すごいぞ、執事!そりゃあ、ただの息子程度では頭が上がらないわけだ。

 ちなみに、このジーヴスさんは、けっこうがっつりバーティーのことをナメてます。聞こえていないと思い、「とても明るく優しい方だが、知性はゼロ」とバッチリ言っていたり、バーティーが選んだ服にダサいからやめた方がいいと伝えたにもかかわらず着ていると冷たく当たったりします。
 そんなジーヴスの顔色をいちいち気にしながらも、たまに強気に出るバーティーと、なんやかんや彼を気に入って、お互い独身で気楽に暮らせる生活を好んでいるジーヴスによる日常お笑い謎解き小説です。

ユーモア執事

 作者のP.G.ウッドハウスさんは、ミステリー作家というより、ユーモア小説家として知られているようでして、この作品も全体的にコミカルに描かれています。
 小説を読んでいて、口元がニヤついたり、笑みが溢れることって、多くの方が経験したことがあるのでは無いかと思うのですが、この本を読んでいると、それどころか、何度も声に出して笑ってしまう場面が出てきます。そのお笑いも、あまりにも滑稽な姿がイメージされるとか、そういった笑いではなく、主人公である少しおつむのゆるい金持ち青年バーティのほんのちょっとした一言が、見事に涙腺ならぬ笑線を揺らしてくるのです。

シットコム執事

 基本的にこの作品は今書いたバーティーとその家にやってきた執事のジーヴス、バーティーの古くからの友人ビンゴがメインどころとして、かれらの親類なども何度か出てくるのですが、この人物たちのキャラクターが何よりいいです。
 どんな人でも、ある日急に一目惚れして事件を持ち込むビンゴと、それを持ち前の人の良さで助けてやろうとするも、知性ゼロで失敗するバーティー。そして彼らが失敗するのを見越して、実は失敗する前から解決しているジーヴス。ほとんどがそんな話なのに、面白い。
 これって、シットコム、いわゆるシチュエーションコメディのルーツですよね。アメリカのドラマ「フルハウス」とか「フレンズ」とか日本で言うと、吉本新喜劇みたいな。あれらって、何話か見慣れてくると、事件が起きたらだいたいどうなるかがわかるようになります。ジェシーおいたんがベッキーと喧嘩をすれば仲直りのキスをするし、池野めだかがパンチをしても届きません。でも、おもしろい。この凄さこそがコメディだし、お笑いの最高な部分です。

検索エンジン執事

 ぽんこつ主人公と優秀なバディの作品っていろいろありますよね。このタイプの私の出会いは「キテレツ大百科」かもしれません。
 この作品の優秀執事ジーヴスですが、若者では無いイギリス人的には常識の存在だそうなので、ジーヴス=なんでも知ってるといった回路を持っている方も多いそうです。他のイギリス文学作品のジョークに名前が使われていたりするそうですが、その逸話の一つとして、検索エンジンの名前になったと言うものがあります。

 おそらく日本人である、この記事を読んでいる皆様が使っている検索エンジンは、ほとんどの場合GoogleかYahooじゃないでしょうか。他の使ってる方いますか?いたら教えてください。Bingとか?

 その数多くある検索エンジンの中にAsk.comというものがあります。私は知りませんでした。日本向けはAsk.jpです。
 この、Askですが、設立した会社の名前が[AskJeeves](=ジーブスにたずねろ)という名前でした。会社の名前に使われるって、よっぽどですよね。そんなインターネットと同じ知識量を誇ると称された名探偵執事の活躍。ぜひ、読んでみてください。

さいごに

 普段、ここに「ぜひ読んでみてください」と書いているので、もう書くことがなくなってしまいました・・・。
 P.G.ウッドハウスの著作ですが、100冊近く存在するにもかかわらず、和訳されて入手容易なものは20冊ほど。しかも、そのほとんどがこの「ジーヴスシリーズ」です。シリーズ物の途中までしか訳してくれない作品なんかもある中では恵まれているのかもしれませんが、もう少し積極的に翻訳してくれてもいいのに!なんて思ってしまいます。楽しい気持ちになりたい時に、オススメの1冊です。


 それでは。



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