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読書紹介 そういえば読んだことない 編Part5 『たのしいムーミン一家』

どうも、こぞるです。
今回ご紹介するのは、1948年に原作が刊行されたトーベヤンソン作『たのしいムーミン一家』です。あの、アニメでもよく知られる、カバみたいな見た目の妖精たちのお話です。今回私が手にしたのは、2011年に講談社文庫から初版が出ました山室静さん訳のものとなっています。

-作品内容-
長い冬眠からさめたムーミントロールと仲よしのスナフキンとスニフが、海べりの山の頂上で黒いぼうしを発見。ところが、それはものの形をかえてしまう魔法のぼうしだったことから、次々にふしぎな事件がおこる。国際アンデルセン大賞受賞のヤンソンがえがく、白夜のムーミン谷のユーモアとファンタジー。

シリーズ第1……2……3作目?

 今作は全部で9冊からなる、小説ムーミンシリーズの第1作目と思われたり、2作目と思われたりしていた、第3作目のお話です。
 どういうことかというと、まず、英語などの外国語に訳されて大ヒットを巻き起こしたのは、このお話が最初だそうで、多くの人にとっての最初のムーミンとなりました。ですが、その後実は『ムーミン谷の彗星』というのがその2年ほど前に出版されていたことが伝わり、この本は2作目なのだと知れ渡りました。ですがですが、実は絶版になっていた、本当の本当の第1作『小さなトロールと大きな洪水』というお話があり、シリーズ終了後20年の時を経て発表されたという経緯があったそうです。
 そんなこんなで3作目のお話となる今作ですが、別にここから読み始めても何ら難しいことはありません。ヤンソン先生直筆のイラストや、多くの日本人の中にあるアニメのイメージで、妖精たちの見た目は難なく受け入れられますし、各キャラクターの性格(こちらはアニメとの違いも)も、二言三言で掴めます。

おませな少年少女の近場冒険譚

 この作品に出ている主人公のムーミントロール少年は、だれでもかれでも家に連れてきては住まわせちゃうという性格で、それによって、ムーミン一家にはいろいろな人が常に同居している状況なのですが、このお話では、そんな彼らが、ちょっと遠い近場に冒険をすることで物語を動かしています。
 そんな生活や冒険、そこで起こる事件も非常に面白いので、ぜひ読んで欲しいのですが、私的に一番好きになったのは、彼らの行動や会話から見えてくる、それぞれのキャラクター性です。
 少し話が傍にそれますが、物語に出てくる少年少女って、思春期が多いと思いませんか。もちろん、それがいやってわけじゃなく、独特の面白さがあるのですが、そういう少年少女の恋愛であったり家族や友人であったりの悩みというのが描かれることが多い気がします。
 ただ、戻って、このムーミンシリーズで描かれる、ムーミントロールもスナフキンもスニフもスノークのお嬢さんも、みんな思春期を迎える前の無邪気さと実直さを持っていて、それが魅力となっているように感じられます。実際には本当の5,6歳よりもずっと賢い部分もあるのですが、それらもなんだか、おませで賢い6歳ぐらいの子供たちの行動に見えてしまう。そういった無垢さを持った登場人物ばかりが出てくるお話というのは、非常に新鮮でした。70年前の作品に新鮮というのもおかしな話なんですが。

誰のための物語

 児童文学だけど、大人がハマるとか、ファンレターをどこぞの社長や教授が送ってくるなんていうのは、名作につきものの話ですし、訳者の後書きによると、ムーミンシリーズも同じようなことがあったそうですが、ここで言いたいのは、そういうことではありません。
 最初にも書いたように、この物語は小説です。挿絵が入っていますし、若干フォントのポイントが大きめなような気がしますが、それでも日本語版の文庫で270ページほどの物語が続きます。1つ1つの話も50ページほどはあるので、寝る前に親が読み聞かせるには、結構な量です。ただ、地の文中に「どういうことかお母さんに聞いてみてくださいね」などといった文言が何度も含まれていることなどから、作者が児童が読むことを想定しているのは間違いないでしょう。
 なんだか私の中で、この文言を読んで素直に親に尋ねる子供と、この分量を読み切れる子供の年齢が乖離していて、一体この小説を楽しむのは何歳からなんだろうなとかを考えてしまいました。それとも、昔の娯楽の種類が多くない子供にとって、これぐらいは朝飯前だったのでしょうか。
 でも、こういった、子供ってこれ読み切れるのかな?という発想が頭に浮かんでしまう時点で、私が歳をとってしまったという証拠なのかもしれません。意外と子供って、大人が思っているより、けっこう何でもできるんですよね。

さいごに

 子供の頃毎朝8時にみていたムーミンたち。そんな彼らが、アニメ以上に無邪気に真っ直ぐに楽しんでいる小説です。21世紀版と称される新装版は表紙の挿絵が全てカラーで可愛いので、そういったところもおすすめです。
 あと、どうやらムーミン谷ではアメリカのラジオが聞けるようなので、そのうちテレビも導入されて、アニメ版の自分たちをみて楽しんだりしているのかなあとか妄想したりしました。


では、このへんで。




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