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読書紹介 ファンタジー 編Part7 『ねずみの騎士デスペローの物語』

 どうも、こぞるです。
 本日ご紹介するのは、2004年にニューベリー賞という、世界的な児童文学賞を受賞したケイト・ディカミロ作『ねずみの騎士デスペローの物語』です。
 素敵な装丁の本だなあと思い手に取ったのですが、大正解でした。

作品内容
 人間の姫に恋をして、ハツカネズミ社会を追放された小さなネズミ、デスペロー。地下牢の暗やみでくらし、光にあこがれとにくしみをいだくドブネズミ。
いつか自分がお姫さまになると信じているめし使いの女の子。それぞれの冒険は、どうなるのでしょうか。愛とゆるし、そして勇気と希望に満たされた、あたたかい物語。

part6でもそうですが、こういうシンプルなタイトルに弱いんだなと自覚し始めました。

例えば子供に読むとして

 みなさんが例えば、自分の子供や親戚、近所の子供に本を読み聞かせたりオススメしたりするとき、どのような本を選びますか。
 絵がきれい、登場人物が可愛い、お話に夢が詰まっているなどなど。そこには様々な選択理由があると思います。

 本作は児童文学です。数ページごとに章立てされているので、本が好きであれば7、8歳でも、頑張って読めるのではないでしょうか。
 また、地の文がですます調で、なおかつ作者の語りかけという表現が多用されているので、読み聞かせなどにも向いているかと思います。

 しかし、だからといって、何も考えずに、受賞作だし子供に読んであーげよっ♪とすると、思っていた内容とは違っているかもしれません。
 本作は、確かに、愛とゆるし、そして勇気と希望の物語ではありますが、それと同時にうらぎりや絶望の物語でもあります。
 両親に見放されたり、何もしていないのに容姿から疎まれたりなど、なかなかにヘビーな問題を抱えた登場人物たちがあらわれます。殴られすぎて、耳がカリフラワーみたいになってしまった奴隷の少女の描写などは胸が痛みます。

 でも、これらを避けるのが正解なのでしょうか。
 子供には暗すぎるという判断の方もいるはずですし、物語は美しいものを与え続けたいという方もいるでしょう。それらも間違いでは決してありません。
 ただ、私だったら、読んであげたい、教えてあげたいと思う何かがこの本には含まれていました。

世の中は素敵なことばかりじゃ無い

 作中の作者の語りかけの中で、私が特に印象に残ったものとして、
「みなさんもおそらく知っているとおり、この世界は、美しくかがやくものばかりでできているわけではないのですから(そうですよね?)。」
という言葉があります。

 世の中には辛いことも大変なこともあるんだよと教えてくれる物語は多くありますが、それを知っていますよね?と語りかけるというのは、個人的にかなりの衝撃でした。そうだよね、子供だって知っているよねと。むしろ、大人が中心の社会で、その理不尽さというのは、子供の方がより知っている部分もあるでしょう。

 でも、その中で、美しいばかりでない世界で、誰よりも小さい体を恐怖でぶるぶると震えさせながらも、ハツカネズミのデスペローは、愛のために動きます。
  この物語が伝えてくれるのは、何よりも物事の多面性だと思います。愛や勇気、希望の尊さを描きながら、その危うさも同時に、デスペローたちとの行動を通して、知ることができます。

物語は光だ

 作中にも登場し、作者自身も大切にされている言葉に「物語は光だ」というものがあります。 
 作者が執筆当時、アメリカは9.11テロの直後で、周囲は悲しく重苦しい雰囲気に包まれていました。その時に「こういうときだからこそ物語が必要なのだ」と言われたことを糧に、この物語を書き上げたそうです。そして、書き上げたことで、作者自身も物語の光に救われたと述べています。

 物語上でもデスペローにこの言葉は作用します。デスペローはハツカネズミの中で唯一、物語に気づいたことで、お姫様に出会い、恋をして光と出会いました。そして、物語の光により幾度となく救われます。
 そもそも、私は物語の力を信じる人が好きです。物語だからこそ、伝えられるものがあると信じています。

 この光という言葉の解釈もまた自由ですし、人によっては光という言葉ではなかったりします。その、物語の光であったりするものを、この本を最後まで読むことで感じられる方は多いのではないでしょうか。
 私は感じましたし、この光を伝えたいと思いました。

さいごに

 ものすごく簡単に受け取ると、「人と違う考えを持ってもいいんだよ!」とか「優しい人になろう!」という本です。でも、そんな簡単なところじゃないところに、面白さが詰まっていて、そんな簡単には読ませてくれない本となっています。
 私はこの年になって出会ってしまったのでこのような紹介になりましたが、子供の頃に読んだことがあるや、読んだ子供の話を聞いたことがあるといったお話があれば、コメントなどしていただけると嬉しいです。
 もちろん、大人が読んだ感想もお待ちしております。

それでは。


その他読書紹介文はこちらから→索引






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