第9話:印刷するまでに必要なこと
原稿は、すでに師匠に手を入れてもらっていたのだが、印刷・製本するまでには、DTP、校正、装丁、印刷といった工程がある。
まず思ったのは、「DTPって何?」。
私は、ざくっと、「印刷会社に印刷してもらうために必要なデータを作ること」と認識している。我々は専門会社にお願いしたのだが、出版業界経験者の方が出版社をされる場合は、ご自身がInDesignで作成されることもあるようだ。
まず、装丁家さんに、原稿サンプルとともに、概要、サイズ・製本方法・ページ数をお伝えし、本文フォーマットを作成いただく。
そして、編集者が、頁の調整や画像の配置、見出しの設定等の「原稿整理」をした原稿とともに、DTP会社に依頼する。
初校が出てきたら、誤字や表記ゆれといった表現の誤りを正すために校正会社に依頼するのと並行して、著者がチェックする。
同時に、装丁家さんへ、改めて、お願いしたいデザイン(奥付、装丁、カバー、帯、等)を依頼し、スケジュールの詳細を詰める。
我々は、師匠のおかげで、まだプロジェクトがふわふわしていた時点で、装丁家さんにご相談することができ、イラストレーターさんもアサインいただいていたので、本来の段取りとは違うかもしれない。
初めての出版ということで、お打ち合わせにはイラストレーターさんにも同席いただいたのだが、この装丁家さんは原稿もしっかり読み込んでくださる方で、この時点で、画が浮かんでおられたのには、「プロってすごい…」と驚愕した。
このお打ち合わせ時に、イラストレーターさんに初校をお渡しし、読んでいただいた。
別の回で書くが、お打ち合わせの前に、この本の舞台となった街を散策したのだが、イラストレーターさんに描いていただいた画は、そこで撮影した風景と完全に雰囲気が一致しており、腰を抜かした。
著者と校正会社のチェックを編集者が集約した初校をDTP会社に戻し、再校の作成を依頼する。書籍のボリューム、内容によるが、再校が出てきたら、再度、著者のチェックと並行し、校正会社に依頼する。
そしてまた、著者と校正会社のチェックを編集者が集約した再校をDTP会社に戻し、三校の作成を依頼する。
三校が出てきたら、著者と編集者でチェックし、本文の校了とする。
今回の学びとして、校正を初校時の1回にしたら、校了前にとんでもなくバタついたので、次作は2回入れると思う。
並行して、各章のタイトルや目次・奥付などの「付き物」、カバー、帯などの「外回り」といった本文以外のテキストを確定し、装丁家さんへ依頼する。
こうして、装丁が進捗すると、装丁家さんから、紙や印刷・加工方法を指定した一覧をいただけるので、印刷会社に共有し、製本サンプルである「束見本(つかみほん)」を作成いただく。前話で私が心を奪われた古い機械で作られるアレだ。
束見本を見て、装丁家さんから、最終、紙や印刷・加工方法の提案があり決定する。
本文に関連する付き物については、DTP会社に共有してデータを作成いただき、確認が終われば、晴れて校了、印刷会社に入稿することができる。
ハガキなど挟み込みたいものがあれば、別で作るか、印刷会社に一緒に作ってもらうかして入稿と同時に印刷会社に納品する。今回、我々は別で作成した。
市場で流通させる場合、バーコードが必要なのだが、こちらも印刷会社で作成いただいた。
バーコードには、Cの後に、分類記号を入れるのだが、①販売対象(1桁目)0=一般、②発行形態(2桁目)0=単行本、③内容(下2桁)93=日本文学小説・物語、というように一覧表に準じて決める。
今回ご協力いただいた皆様には、わからないこと、段取りが悪くバタついてしまうことがあっても、即レスでご教示、ご対応いただくことができ、安心して進めることができた。
チームに業界経験者がいない場合、わからないことばかりで時間がかかったり、タイミング悪くアイデアを思い付いてしまったりするので、事前に残りの工程や注意事項を教えてくださったり、不安になった時に即レスでわかりやすく教えていただける方々にご一緒いただくことは必須だと思う。
今回、3月の発売だったのだが、師匠からの教えをすっかり忘れ、出版業界の繁忙期と重なってしまったため、ご協力いただいた皆様にご迷惑をかけた。業界経験者がいない場合、よほどの理由がなければ、繁忙期を外すことをお勧めしたい。
今回ご協力いただいた皆様は、本文付き物に記載したので、ぜひ、本を手に取って、ご確認いただきたい。(営業)
なお、校正会社の記載を外したが、奥付は、権利と責任の所在を明示するためのもので、不備があれば出版社が責任を負うことを明確にするという意図もあるらしく、粋だと感じたので踏襲してみた。