「イケメン無罪」と言う危険

 先日、Twitterにてこんなツイートが拡散されていました。

 フェミニストの方々から非難轟々となっているのは言うまでもありません。

 まず、フェミニストがジャンプやAV等の男が好むものを批判している時ほどアンチフェミニストがそれを晒し上げて炎上させるので、男性アイドルへの批判はアンチフェミニストの目に届きにくいということが原因として考えられます。そしてこういう「あいつらは○○についてスルーしている」という決め付け自体「俺は知らないからきっと存在しないはずだ」と無知の無知を晒すことであり、自分の見識の偏狭さを自白することであったりするので、賢明な皆さんはよく調べてから発言しましょう。

 上記のツイート自体も恥ずかしいと思いますが、私が今回取り上げたいのはそれに連なっているリプライについてです。

 このように、「山下智久はイケメンだから未成年との飲酒や淫行疑惑も許される」とするツイートがゴミのように沢山湧いています。マジでゴミ。

 恐らく、この「イケメン無罪」という誤解の出所は少女漫画でしょう。俺様系イケメンに強引に迫られるヒロインというのはもはや古典的過ぎる様式美ですが、それを真に受けて「女性はこれを望んでる」と思ってるバカが後を絶たないのだと思われます。フィクションと現実の区別が付かない奴が多い。

 まず、この「イケメン無罪」という理屈自体、事実ではありません。過去容姿に優れた芸能人が性的暴行で捕まった事例は枚挙にいとまが無いですし、芸能人以外でも、強制わいせつ事件の多くは自分に性的魅力があると自信のある男性が勘違いで起こしたものです。たとえイケメンだろうが何だろうが、意に沿わない性的暴行を受けた女性の恐怖と苦しみは想像を絶するものです。

 勿論、魅力的な相手になら許せる行動というのは多少あるかもしれませんが、それは女性に限らず人間誰しもあることです。男性だって好きな女の子の悪戯なら許せても、嫌いな相手に悪戯されたら腹が立つでしょう。相手や相手との関係性によって行動の受け止め方が変わるのは当然の話ですし、それは容姿に限らず様々な要素で変わってくるものです。

 そして、この「イケメン無罪」理論、事実として誤っているというだけでなく有害です。上述した通り強制わいせつやセクハラの多くは自分が魅力的だと勘違いした男性によって起こされるものなので、「イケメン無罪」というデマを流布し、女性の主体性を軽んじた価値観を普及させると勘違い男による新たな性被害が発生してしまいます。更には女性の被害者に対する「イケメンに相手してもらえたから嬉しいだろ?」というセカンドレイプに繋がる可能性すらあります。事実、成人女性が未成年男児と淫交した事件では「子供が美女とセックスできて羨ましい」という論調で語る男が沢山いました。「イケメン無罪」という言葉には、こうした性犯罪を軽視し矮小化する意味合いがあります。

「どうせイケメンだったら許すんだろ」とイケメンへの僻みや女性への嫌味のつもりで言っているのかも知れませんが、結果として自称イケメンの性的暴行を後押しする言説になっているのです。それともアンチフェミニストの連中は皆自分がイケメンだと思っているのでしょうか。それならそれで「俺はイケメンだから無罪」というヤバい発言になるのですが。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?