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物語な詩群

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物語詩を集めます。
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#物語

ゆきをとめ

ゆきをとめ

わたしのはは は
 さっていった ゆきをんなだそうです
 ちち は
 ずっとしずかにうつむいているひとでした

それは、あの大雪の年にわたしが知った母の本当と、どうやらいとこであるらしい白すぎる手をしたすきとおるような声のひとりの少女との出会いからでした。

「ゆきをんなのいのちは、ひとのあたたかさにとけてしまうから」
「ほんとうは、いつかくるそのひをしっていたから」

ゆきをんなは、わたしをつれ

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ワルプルギスの夜

ワルプルギスの夜

そうして神すら擬人化されてしまう夏の気配に
崇拝はあまりに己たちの美しさに酔ってしまった
修飾することが貴富であると
金の額縁の内へ閉じ込め堕としてしまった

中世の宗教画にとっては神こそが虚像
堕天は人の手によって成された
暗闇がサタンとその朋友を信奉する
そのものたちは肉体の苦痛の信奉者である

虜囚である我らの映し鏡は蘇る死者
恐れよりも憧れである死の超越者である知性
理を超えて生を奪うもの

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