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「勝手にDI室」SGLT-2阻害薬 についてまとめてみた

ここ 2-3 年は糖尿病治療薬の SGLT-2 阻害薬のエビデンスが沢山出てきてます。その中でどういう使い分けができるのでしょうか?


用法用量

各用法用量と適応を並べてみると、ほぼ同様の飲み方と適応です。
特徴的なのは、
① ダパグリフロジンとイプラグリフロジンは1型糖尿病の人にも使える 
② 慢性心不全に対してダパグリフロジンとエンパグリフロジンはDAPA-HF(1)EMPEROR-Reduced(2)の影響を受けて、昨年適応が追加
③ アプルウェイは、半減期が短いために SGLT-2 阻害薬による夜間頻尿が報告されている人に使用される傾向がある
※アプルウェイは販売中止が決定になり、2022 年 3 月で経過措置が切れます。(3)

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エビデンス

糖尿病は将来的に心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントが発生しやすくなります。そのためにSGLT-2阻害薬でも、心血管イベントの発生率が大規模臨床試験で検討されています。
主なエビデンスは、エンパグリフロジンの「EMPA-REG」(5)、カナグリフロジンの「CANVAS」(6)、ダパグリフロジンの「DECLARE-TIMI 58」(7)が該当します。
エンパグリフロジンとカナグリフロジンは、複合アウトカム(=心血管死亡や心筋梗塞、脳卒中)で有意差を示しています。またエンパグリフロジンは個々のアウトカムで確認しても、心血管死亡は有意差を示しています。
しかし、心筋梗塞と脳卒中については、3剤共に減少傾向はありますが統計学的な有意差は示されませんでしたが、面白い事に 3 剤とも心不全入院を減らすことが示されました。
この事から、エンパグリフロジンは糖尿病関連の死亡率を下げるのには向いている可能性があり、カナグリフロジンとダパグリフロジンは残念ながら死亡率などのリスクを今回は有意に下げることは出来ませんでしたが、心不全の入院を減らす方向としては向いている可能性があります。

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副作用・有害事象

SGLT-2阻害薬は、グルコースが尿排泄する影響もあり尿路感染症のリスクがあります。カナグリフロジンは下肢切断リスクが見られました HR:1.97(1.41-2.75)。(6)

このリスクは、カナグリフロジン特有でしょうか?

ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジンの3つとGLP-1作動薬を比較したコホート研究では、下肢切断のリスク(1000人年あたりの発生率2.7 vs 1.1 HR: 2.32(1.37-3.91)と SGLT-2 阻害薬全体のリスクの可能性が示されました。(8)
また同じコホートで、糖尿病性ケトアシドーシスのリスクが上昇することも示されました。HR:2.14(1.01-4.52)
従って下肢切断リスクSGLT-2 阻害薬に共通するリスクの可能性があります。

参考

1. McMurray JJV,et al.N Engl J Med. 2019; 381: 1995-2008. Epub 2019 Sep 19 PMID:31535829
2. Anker SD,et al.Circulation. 2021 Jan 26;143(4):337-349. PMID:33175585
3. https://medical.kowa.co.jp/asset/pdf/info/2109stop_awt.pdf
4. 竹越聡,他 Progress in Medicine Vol.35 No.1 2015.1.141-148
5. Zinman B,et al.N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):211 PMID:26378978
6. Neal B,et al. N Engl J Med. 2017; 377: 644-57.PMID:28605608
7. Wiviott SD,et al. N Engl J Med. 2019 Jan 24;380(4):347-357.PMID:30415602
8. Ueda P,et al.BMJ. 2018 Nov 14;363:k4365.PMID:30429124


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