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人の心などわかるはずがない

河合隼雄さんの『こころの処方箋』を読み返していて、そのことについて話してみた。

タイトルを読んで当たり前じゃないかと思った方もいると思う。

ぼくもそうだったけど、河合隼雄さんが後書きで書いている内容を読んでハッとした。

冒頭にかかげた、「人の心などわかるはずがない」。そんなのは当り前のことである。しかし、そんな当然のことを言う必要が、現在にはあるのだ。試しに本屋へ行ってみると、人の心がわかるようなことを書いた本がたくさんあるのに驚かれることだろう。私は新しく相談に来られた人に会う前に、「人の心などわかるはずがない」ということを心のなかで呪文のように唱えることにしている。
それによって、カウンセラーが他人の心がすぐわかったような気になってしまって、よく犯す失敗から逃れることができるのである。

『こころの処方箋(新潮文庫)』河合 隼雄

わからないと言いながらも、本を読んだり、その知識から分析をし仮説を立ててわかった気になりそうな時がある。

世間一般的に専門家が期待されている役割と、河合隼雄さんの考えを知り、すごく反省をした。

「専門家」に期待されることは、この子の心を分析したり探りを入れたりして、それだけではなく、子どもの親に対しても同様のことを行ない、非行の原因を明らかにして、どうすればよいかという対策を考え出すということである。ところが、本当の専門家はそんなことをしないのである。  
一番大切なことは、この少年を取り巻くすべての人が、この子に回復不能な非行少年というレッテルを貼っているとき、「果してそうだろうか」、「非行少年とはいったい何だろう」というような気持をもって、この少年に対することなのである。「悪い少年」だときめてかからないことが大切である。そんなつもりで、少年に会ってみると、あんがい少年が素直に話をしてくれる。

こころの処方箋(新潮文庫)』河合 隼雄著

レッテルを貼ると安心する。

理由がわからないことが人を不安にさせるから。

すぐに決めつけず保留にする

さらに、なるほどと思った話が続く。

少年は涙を流しながら、実はお母さんが怖い人で、小さいときから叱られてばかりだったと言う。これを聞いて、「母親が原因だ」とすぐに決めつけてしまう人も素人である。  
少年が、母親が怖いと涙ながらに訴えるとき、それはその少年にとっての真実であるだろうし、それをわれわれは尊重しなくてはならない。

『こころの処方箋(新潮文庫)』河合 隼雄著

本音で話さなかった少年からの言葉を鵜呑みにしそうになるが、決してそうしない。

少年にとっては、真実であると尊重しつつも。

簡単に決めつけられるものではないという態度で、保留にすることにより、あらたな言葉に反応できる。

ここで一番大切なことは、われわれがこの少年の心をすぐに判断したり、分析したりするのではなく、それがこれからどうなるのだろう、と未来の可能性の方に注目して会い続けることなのである。

『こころの処方箋(新潮文庫)』河合 隼雄著

それがこれからどうなるのか、もどかしさを抱えながらも待ち続けること。

すぐに答えを知りたがるから、いろんな情報を入手するとバイアスがかかってしまう。

だけど、そこで立ち止まる。そして、もっとフラットに物事を見れるようでありたいと思った。

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