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私が<土木業界で>はたらく理由 Vol.2

前回のnote▼

Vol.1では、そもそも私が土木という業界に興味をもったきっかけを中心に書いた。Vol.2は私が土木の世界を目指すなかで感じた課題や、いまの仕事について書こうと思う。

土木を目指すのはレア

高校2年の終わり頃から土木の学科を目指していたと前回書いたが、高校では周りに同じ分野を志す仲間は一人もいなかった。建築は数人いたし、医者や看護師なんてクラスの半数以上が目指していたけれど、土木は本当に一人もいなかった。

医者を目指すきっかけとしてよく聞く話 第1位は「親戚が病気になったときに医者の働く姿を見て、命を守るのに尽力する姿に憧れた」というもの。
そういう話を聞く度に、私は「土木だって大勢のひとの命や暮らしを守る仕事なのに、なぜみんな興味がないんだろう」と思っていた。

生まれた時から当たり前にある道路や川、橋の重要性を改めて感じる機会は少ないのかもしれない。そして、それらが自分達の暮らしを支えているという意識も、自然にもつ人は少ないだろう。

「絶対になくてはならない仕事」だからこそ、影が薄くて目指す人も少ないのかもしれない。自分がやらなくても、誰かがやるだろうと思っているのかもしれない。でも実際、建設業は慢性的な人手不足に悩まされている。

土木の勉強をしています、と言うと誰もが「珍しいね」と返す。なんでそんなコアなところに興味を持ったの?と聞かれる。全然コアじゃないし、文房具とか家具以上に日常になくてはならない存在だろう、と思うけれど。

土木業界に対する個人的課題意識

1.業界のイメージが悪すぎるし、リアルもそんな良くない
建設業といえば3K(きつい、汚い、危険)のイメージを持っているひとも少なくないと思う。休みがなくて、汚くて危険な現場で働かなければいけないというイメージは、大きな声で否定することは出来ない。

土木の魅力や重要性は分かっていても、自分の生活とのバランスを考えると仕事にしたくはない、という人は多い。危険と隣り合わせだし、仕事は実際ブラックなことが多いし。それらを改善しなければ、”自ら選んで”土木を仕事にする人は減る一方だと思う。

2.実際何をしているか分からない
土木業界で働くと一口に言っても、業種はさまざまある。コンクリートを打ったりショベルカーを動かすくらいのイメージを持たれていると思うが、実際には技術職のなかにも多様なジャンルがあり、現場を監督する立場の仕事や、点検や確認をする仕事だってある。

仕事内容がベールに覆われていることで悪いイメージのみが先行し、「よく知らないけど大変そうだから目指さない」人が多くなっているのだと思う。

建設業で広報企画をする理由

この2つの課題意識から、私が建設業でやりたい仕事は「土木という仕事のやりがいや重大さ、魅力を伝え、そこで働くひとの姿を発信すること」そして「業界が抱える課題を少しでも解決すること」だ。

今働いている会社は、地方中小の建設会社でありながら広報・企画室を設置しており、外部発信に力をいれている。そして、ICTの活用を推進していて業務効率の改善に取り組んでいる。

ICT活用はたくさんの可能性を秘めている。遠隔で操作ができるようになることで、作業員の危険な作業を減らすことができるし、効率的に業務を遂行することでブラックな職場環境も改善することができる。人手不足を補うのにも有効である。

この会社で出来なければ、ほかのどの会社に行っても無理だろうと思った。

1年間働いてみて

建設業の広報企画という職務について1年間、土木の魅力や仕事内容を発信するために主に3つの仕事に力を入れた。
PR動画制作、採用資料の作成、インターンの企画・運営。どれも自発的に会社に提案して実施したものだ。具体的にやった仕事についてはまた別の機会に書くが、どれも自分なりに良かったことや改善点を見つけることができた。

1年経って感じた大きな課題は、胸を張って「土木業界へようこそ」と言えないということ。見せ方はいくらでも工夫できるし、かっこいい動画をつくれば「イメージが変わりました」と言ってもらえる。私が働く会社は、建設業の中ではかなりマシなほうで、施工管理を長年続ける人が多いのも業界のなかではホワイトだから、だと思う。

それでも、私は仲の良い友達に「うちの会社どう?」と勧めることはできない。もし入社したとしても様々な局面で苦しむ未来が見えるから。

その局面の1つが、社員のモチベーションの低さだ。こちらが社会的意義のある仕事だ、やりがいのある仕事だと発信をしていても、現場で働く彼等のなかで工事をする意味や背景まで考えているひとはほとんどいない。業務効率をあげよう、と言っても「昔からこれで出来ているから」とICTに対して逃げ腰になるベテラン社員も多い。

採用でこういう人材をいれたい、そのためにこんな発信がしたいと言っても、第一声で「難しいと思うよ」と諦めがまじった声で言われる。

現場の施工管理の仕事は、おそらく目の前の仕事に集中できる人に向いているんだろうと思う。モチベーションが高くなくても、自分の仕事をちゃんとこなせるのは尊敬しなければいけないところ。だけど、このままでは業界は変わらないな、と思ってしまった。

自分がやりたかったことがすごく遠くなったように思えて、自分のモチベーションも下がっていった。このまま現状維持を目指すのが、この会社にとっては良いのかもしれない、それなら私は無駄に力を入れないほうが身のためだと思うようになった。

私は本当に土木が好きなんだろうか?

ここでようやく、Vol.1のはじめに投げた問いに戻る。
1年足らずでモチベーションが下がるなんて自分の熱意はこんなものだったのか、と自暴自棄になった。

学生時代の先輩や知り合いに相談すると、「1人で変えようなんて無理だよ」「身を削るのはもったいない」と言われる。中には、「東北大震災が原体験なら、東北で復興に取り組んでいるひとのところへ行ってきたら?」と提案してくださる方もいた。

でも私は、今の会社を去ることは逃げているような気がしたし、東北に行きたいという気持ちも全然湧かなかった。

長い間信じてきた自分の想いは嘘だったのかもしれない、実は全部、自分を繕うためにつくってきたのかもしれない、と思うようになった。

滋賀への想い

そんな話をお世話になっている先輩にしているときに、「滋賀で働きたかった」という願望を口にしていた。東北に行くのが乗り気ではないのは、滋賀で働きたいから。

土木への想いが本気かどうかは分からないけれど、滋賀県でいきいきと働ける環境を増やしたいという気持ちは自分で自信をもって言うことができた。

<<Vol.2はここまで>>

土木という業界にフォーカスした話はここまでになりますが、自分の仕事への向き合い方を「滋賀」と「ひと」の観点からもう少し書きたいと思っています。


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