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50億 大型資金調達の裏側 -アスエネ、シリーズC 累計101億円-

6月14日、アスエネは「シリーズCで累計101億円の資金調達」と銘打ったプレスリリースを配信しました。三井住友銀行、SBIインベストメント、SPARXをリード投資家として、シリーズCで1stClose 42億円を調達、2nd Closeを含めて新たに50億円調達予定です。
日経新聞の朝刊一面とイブニングスクープ、日刊工業新聞BUSINESS INSIDER JAPANYahoo News、BSテレ東「日経ニュース プラス9」のほか、全部で29媒体+1番組、合計30メディアで紹介されました(2024年6月20日時点)。

「ASUENE CEO BLOG」第2回目の今回は、大反響だった大型資金調達の裏側をテーマに、CEOの西和田と資金調達をメインで交渉したCFOの間瀬で対談しました。

1.資金調達を行った背景

西和田:今回の第2回のCEO BLOGですが、先日発表し、さまざまな関係者及び方面から大反響だった、「シリーズC累計101億円、1stクローズで42億円調達(2ndクローズは現在最終交渉中のフェーズですが)、大型資金調達の裏側」ということで、CFOの間瀬さんに登場してもらいます。

間瀬さんの経歴は、みずほ証券→カーライル→海外MBA→米国ヘッジファンド→不動産テックスタートアップNo.2と国内外で多くの経験を積まれています。僕は入社から平日・土日含め、ほぼ毎日、面談や会話をしているので間瀬さんの思考や考え方をよく知っていますが、今日は社内外、多くの方々にも伝えていきたいので、本日はよろしくお願いします。

間瀬:よろしくお願いします!

西和田:まずは最初に僕から。今回の資金調達の背景に関して、まだ充分余裕資金もあった状況でしたが、最速1兆円企業&グローバル No.1になるという短期的な目標を達成するためにも、急成長に向けた中長期構想を最速で実行していきたい、もっと急がないといけないという危機感がありました。

資金調達の目的は、

日本の営業・開発・コンサル、グローバル事業展開の人材強化
②大企業との出資提携の強化
③AI・LLMの技術投資
④M&Aによる非連続の成長
⑤アジア、アメリカなどのグローバル展開の強化
⑥更なる新事業の立ち上げ

などの実行を考えています。いくつかメディアの取材でもお話させていただきました。近々、新しい構想を実行段階で発表できると思うので、また詳細は後日、お話できれば、と。

2.交渉は8ヶ月間、CFOとして入社後すぐに資金調達真っ只中へ

西和田:投資先との協議は、2023年10月からスタート。1stクローズのDryクローズしたのが5月中旬のため、約8ヶ月間かけて、投資先と交渉した結果の「累計101億円、50億円の資金調達(1st 42億円完了)」となりました。

投資先との交渉が始まったのが10月、間瀬さんにCFOとして入社してもらったのが11月。過去のシード-シリーズBの資金調達と、今回のシリーズCも間瀬さんが入社するまでは、僕が主に新規投資家との協議・交渉をして、CFAOの衛藤にサポートしてもらっていました。それを、間瀬さんが入社して1-2週間ですべてバトンタッチ。その時は、どんな想いや心境でしたか?

間瀬:交渉時間は長くかかりましたが、バトンタッチは、実は、想定通りでした(笑)。入社前から、お話は聞いていましたから。CFOとして入社したので、経営をきちんと数字で見る、ファイナンス、グローバル展開、パートナーシップなど役割はいろいろありますが、資金調達もその一つです。
入社前から、バックストッパーになる覚悟もできていました。西和田さんには、経営や事業の本質的な戦略策定や実行に時間を使ってもらいたいとも思っていましたしね。今になって、当時のことを振り返ってみると、いい意味で、スパッと思い切って任せてくれたなと感じています。

西和田:僕自身振り返っても、入社早々に間瀬さんに投資交渉のほとんどを権限委譲して任せると決めたことは、非常にいい意思決定だったなと思っています。詳しくは後述しますが、今回のシリーズCの資金調達は、昨今の資金調達環境がよくない中で、リード投資家との交渉も難しい局面を迎えることも想定していたし、関係者が非常に多く、時間と労力がかかります。
もちろん調達の重要度は非常に高いのですが、間瀬さんの強みは「人の信頼を勝ち取れる力」だと入社前からわかっていたため、間瀬さんを信頼してバトンタッチし、衛藤にもサポート継続してもらったことで、僕は本業の事業にほぼ全集中できました

ASUENEの営業の仕組みをつくっているCOOの岩田と共に、そこに僕も加勢して全方位で課題解決をしながら、同時にCEO直下の事業開発部でしかけている新事業のESG評価クラウドの「ASUENE ESG」、カーボンクレジット・排出権取引所の「 Carbon EX」の事業展開の加速、シンガポール「ASUENE APAC」にアメリカ「 ASUENE USA」を拠点としたグローバル展開、M&Aチームの組成・型化・実行などマルチプロダクト戦略の実行でやるべきことが盛りだくさんあり、ここに僕の多くの時間を割くことができました。もし僕が資金調達をメインで交渉リードしてしたら、特に新たな事業やチャレンジがストップするリスクがありました
従って、入社直後の段階から「来週から交渉は任せますので、よろしく頼みます。困った時はいつでも参戦します」みたいな形で(笑)、最初1週間だけ面談同席してもらい、それ以降は間瀬さんにリードを任せ、それを完全にやり切ってくれたことは本当に助かりました。

間瀬:任せるところは任せてもらいましたし、ハードな交渉や山場では一緒に交渉していただきました。
入社して1-2週間ほどの僕に、しかも大型資金調達というスタートアップの企業にとって大きな生命線の役割をズバッと任せるというのは大きな決断です。なかなかできないことだと思います。そこを信頼いただいて、任せてもらえたのは、とてもやりやすかったです。

3.投資先約20社と同時並行でタフな交渉を 

シリーズC、1stクローズ時点での投資先の一覧、名だたる大企業

西和田:今回のシリーズCとこれまでの資金調達の大きな違いは、関係者が非常に多く複雑性が高いという点です。例えばシードファイナンスのときは投資先が1社、シリーズAが3社、シリーズBが約10社でした。それが、今回のシリーズCは約20社との交渉。20社同時並行で、デューデリジェンス(DD)、つまり投資家がアスエネに出資をするために、事業が本当に成長しているのか、何か問題やリスクはないのか、どうマネージするのか、経営陣やチーム全体の実行力が高いかなどを精査するためのプロセスが実施されました。

具体的には、資料でいうと、投資家1社につき100前後のインフォメーションリストをもとに資料開示が求められ、それらを一つずつ提出していきます。会社によっては、要請される資料が若干異なるため、もちろん個別対応も必要です。100問以上のQ&Aに答えることも多々あります。特にリード投資家との交渉・決定が一番の肝で、さらに20社同時ですから、なかなかタフな交渉だったと思います

ただ、大変なプロセスに見えるかもしれませんが、実は僕はDDをすごいポジティブにとらえています。なぜなら、DDは経営陣全体が戦略・戦術・課題と対策を本気で考えて鍛えられるよい機会であり、これを乗り越えることでチームが一つレベルアップできるから。また、間瀬さんにとってもアスエネの現状や将来戦略、構想を早期に深く理解して、自分事にしてもらうよい機会になると思っていました。

間瀬:たしかに、おっしゃる通りです。交渉をするにはファイナンスはもちろんのこと、事業の本質を理解する必要があります。20社の半分以上が事業会社で、出資だけではなく事業連携についても話をしていました。100本ノックをしているようではありましたが、それがいいオンボーディングになったと感じています。ファイナンスは数字1つ1つを見る必要がありますし、将来の事業戦略や競合優位性など全てわかっていないと投資先からの要請に答えることができませんから。

西和田:事業会社が多いということは、業務提携案も含めて協議が必要です。事業会社からの出資は、アスエネが成長してファイナンシャルリターンを得ることももちろん重要ですが、それに加えて、出資提携や協業によるシナジー発揮によって、自社をより良くしていくことも重要視する企業が多い傾向です。ベンチャーキャピタルなどとは、また異なる視点が盛り込まれるので、交渉もタフになっていきます。

業界を代表する金融機関・大企業と資本業務提携を発表

僕も三井物産時代は、投資家やM&Aをする側の立場として、三井物産から直接投資をして、ブラジルのスタートアップなどに数十億円規模で出資してきました。事業会社側でも社内稟議やどのようにシナジー発揮・バリューアップするのか、その先の大きな将来構想をスタートアップ同様に描いていくことが求められます。ある意味、スタートアップ側よりも大企業の方が社内の稟議プロセスや資料で全関係者の説得が必要で大変だったりするのです。

4.“信頼できる投資先”の選定軸とは?

西和田:幸いアスエネは多くの投資家のご紹介をいただき、アプローチしました。どのように信頼できる投資家に選んでもらい、またアスエネとしての選択を実行していったのか、その選定基準について、間瀬さんはどう考えていますか?

間瀬西和田さんのビジョンは「アスエネが脱炭素・ESG領域のなくてはならないインフラになる、日本発でグローバルNo.1になり、グリーンジャイアントになる」ことだと理解していました。その領域における複数のプロダクトを有し、グローバルに展開するなかで、アスエネは次のフェーズに進むべきタイミングにあるとも認識していました。

だからこそ、投資先を選ぶうえで1つ目に大事にしたことは、「家族になってもらえる会社かどうか」でした。出資をしてもらうということは株を持ってもらうことであり、それはいわば家族になることと似ていると考えています。西和田さんをはじめとした経営陣のビジョン・ミッションにアラインしてくれるかどうかは大きなポイントです。家族の中に全く違う考えを持った人がいると、なかなかうまくいかなくなってしまいますから。

2つ目は「各業界で、脱炭素・ESG・GX領域の取り組みをしている業界TOPの大企業とパートナーシップを結ぶこと」です。アスエネが脱炭素・ESG領域のインフラになるためには、事業会社、特に業界を代表する大企業との連携は必要不可欠です。ともにこの領域でトップを目指せる・走り続けられる企業であることは大切だと考えました。

今回の調達では、銀行は三井住友銀行(SMBC)、SBI、製造業ではリコー、村田製作所、SONY Innovation Fund、建設・不動産では大和ハウスグループ、運輸ではNippon Expressなど、結果的に非常に素晴らしいパートナーと組むことができたと思っています。

5.今回の資金調達の山場、最も苦労したことは?

西和田:なかなかこの場ですべて答えるのは難しいかもしれませんが、今回の資金調達の山場や苦労したことを教えてください。

間瀬:アスエネが脱炭素・ESG領域のインフラになるためには一定の大きな金額は調達するべきだろうと考えていたというのは、まず前提としてあります。
そのうえで、調達をするには企業価値の評価額(バリュエーション)がポイントになるため、調達金額と適切なバリュエーションの最適なバランスが重要な課題の一つでした。また、昨今の外部環境や調達環境はまだまだ厳しく、その中で最適な評価額を取りに行くという点も難しいポイントでした。

西和田:いまバリュエーションに関しては、海外も日本もかなり厳しく見られいますからね。

間瀬:コロナ以前の評価額が高騰していた2020-21年くらいと比較すると、バリュエーションが半分以下になっている企業も多いです。

西和田:他のスタートアップ企業を見てみても、例えば2020、21年頃に資金調達をした際に高い企業価値がついて、事業はきちんと伸びていても、次の資金調達をしようとすると前回同様の企業価値がつかないといったケースが増えています。ダウンラウンドと呼ばれる、企業価値を下げて資金調達をするケースや、企業価値がほぼ変わらないフラットラウンドになるケースが増えている。

そういったなかで今回、アスエネは急成長を実行できていたので、前回の約3-4倍の企業価値をつけていただくことができた。僕は、「高すぎず低すぎず妥当なバリュエーション」で合意すべき、といつも考えているので、アスエネ社内におけるチームの頑張りや成果を適切に評価いただけたのは大きな成果ですね。

間瀬:そうですね。マーケットの環境が厳しい中で、適切なバリュエーションで評価いただくことは今回苦労したことの1つです。

2つ目に苦労したことは、ステークホルダーマネジメントです。先ほどあった通り、今回は投資先の約半分が事業会社で、連携についても同時に交渉していました。それぞれの企業がアスエネとともに目指したい事業戦略・連携があり、要望がさまざま出てくるため、それをまとめあげるのは大変ではありました。

とくにSMBCは、脱炭素・サステナビリティ領域では銀行のなかでも最も先進的にアクションしている銀行であり、弊社と類似のサービスも持っている側面もある中での連携でした。
そのSMBCと、どのように将来戦略や構想をアラインしながら多くの業務提携案を推進していくのか交渉をすることは苦労もあったのは事実です。しかし、日本を代表する銀行本体との資本業務提携は、意義が大きかったと感じています。

最終的に、SMBC本体にリード投資家の役割を担ってもらうことができ、多くの既存投資家からも素晴らしい座組になった、と捉えていただきました。
今回、投資家が国内外にいて、契約書などもすべて日本語、英語両方を用意する必要がありましたし、海外と日本ではマーケットの違いもあります。約20社の投資先との交渉をまとめあげる中で、大変な局面はもちろんありました。

6.アスエネ、大型資金調達の4つの秘訣

シリーズBからの約2年の間で、アスエネが達成した事業成長の数字

西和田:そんな大変な局面を乗り切り、資金調達を成し遂げた秘訣は何だったのでしょうか?間瀬さんの見方として。

間瀬1つ目は「大きなビジョンがあること」ですね。投資家は企業の成長性やストーリーを評価してくれます。脱炭素・ESGの領域において、日本および世界でNo.1になるというビジョンがあり、投資家のみなさんが「それを実現できる」「アスエネだったら一緒に世界No.1になれる」と思ってくれたことが大きかったと思います。見ている視座が低いと投資家も誰も同じ舟に乗ってくれません。

2つ目は、「ビジョンだけではなく、実績があること」。圧倒的な成長、売上、粗利があることは非常に大きかったです。数字がものをいう世界なので、ビジョンだけがあっても、数字がなければ投資家は出資してくれません。アスエネは、数字をきちんと出しています。これは、日々アスエネに所属している皆さんが努力してくれている結果の賜物です。その点では、実は交渉が楽でした。

3つ目が「マルチプロダクト」です。アスエネはひとつの商品だけではなく、産業を変革するための「ASUENE」「ASUENE ESG」「Carbon EX」と3つの事業が立ち上がり、既にPMFしています。海外展開においても、シンガポールとアメリカで「ASUENE APAC」「ASUENE USA」が立ち上がって顧客の受注にも繋がっている。それも大きな評価につながりました。

最後が「資本効率性」。ここは非常に厳しく見られるポイントです。営業・マーケだとLTV/CAC、施策ごとのROI、会社全体だと社員1人あたりの粗利の推移や成長、無駄な販管費を削り続ける筋肉質な体制など、ここも圧倒的にアスエネは良かった。

この4つがそろっていたことは、交渉を進めるうえで大きな武器になりました。

西和田:実績とか数字に関しては、アスエネの全社的な日々の努力の成果が、ちゃんと数字の結果にでていました。資金調達において、シードフェーズなら構想やビジョンだけで出資してもらえるかもしれないが、シリーズA以降は、どんなにビジョンで大きなことを言っても、結果やトラクションが出ないと適切な評価額もつかないし、シリーズCだと確固たる実績と競合優位性がなければ「競合に勝てない」と思われ、出資実行には至りません。

間瀬アスエネに所属するみんなの日々の頑張りが評価された結果、今回の大型資金調達が実現したことを、社内の皆さんにもしっかり伝えていきたいですね。

7.大型資金調達を経て、新たな挑戦のフェーズへ

西和田:100憶を超えるような大型の資金調達は、日本国内でも増えてきていますが、そんなに多くありません。今回、大型資金調達を実行できましたが、これはあくまでM&Aやグローバル展開など新たな挑戦へのスターティングポイント。ソニーやトヨタ、ホンダのように、僕らはClimate Tech・GXの領域で日本発でグローバルNo.1になり、次世代を自ら変えていくという大きなビジョンを掲げ、実行するための道のりがここから始まります。

社会により大きなインパクトを与え、「次世代によりよい世界を。」というミッション達成も実現する。そのために、今回調達の資金を有効に活用して、グローバル展開、新事業、M&Aによる「仲間づくり」を最速で実行する。ここに僕らのリソースを全集中していきたいです。

間瀬脱炭素・ESGの領域は日本が世界に本気で勝てる領域だと思っています。グローバルNo.1 をしっかり達成していきたい。「ASUENE」「ASUENE ESG」を導入した企業が脱炭素・ESG領域における取り組みを強化することは、社会にとっていいインパクトを与えること、日本が強くなることにつながっていきます。そのためにはアスエネ自体が強く、大きくなっていかなくてはならない。
また、CFOの役割として、数字にしっかりこだわっていきたいです。いい時も悪い時も、数字を正確に伝えること、世界の競合との差や超えるべきGAPがあるのであれば、その事実をきちんと数字で伝えることを意識していきます。
資金は企業にとって、「血流」です。日々使っている電話ひとつ、デスクひとつとってみてもお金が必要です。投資先は資金を出してくれていますが、アスエネを信じてくれたパートナーでもあります。その点を、アスエネの皆さんには感じ取っていただければと思います。

西和田: 今回の資金調達により、アスエネメンバーにとっては今まで以上に大きなチャレンジをする機会が増えていきます。よく総合商社でも「経営人材を育てる」ことが謳われていますが、今のアスエネには、既存事業拡大による経営・マネジメント人材、コンサルなどのプロフェッショナル人材、新規事業の立ち上げ人材、海外展開によるグローバル人材、M&Aによる投資や経営人材の育成など様々な成長の機会があり、なかなかこんなに面白い環境はないと本気で思っています。

急成長のためには「市場と環境にこだわれ」とも常々思っています。急成長市場の中で急成長したい人への最高な環境を創ることに今後もコミットしていきます。また、ここでは話しづらいハードシングスからの学びも多々ありました。それらを糧にして、チャレンジし続けていきます。

間瀬さん、どうもありがとうございました!

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