見出し画像

【復刻版】英・仏現地取材 原子炉のゴミ「死の灰」の行方 【第1回 絵本の世界に放射能汚染の危機】

【この記事は復刻電子版です。最新の記事・情報ではありません】1995年に取材。集英社・週刊プレイボーイで連載した記事を編集しました。

絵本の世界・湖水地方へ

これまで見たことのない美しい峡谷を越えた。夕陽が山の向こうに隠れ始めて、谷のはるか先にある民家の明かりが目にとまるようになった。
車1台がやっと通れるほどの挟い道路の両側には、羊囲いの石垣が続いている。どの方向を見ても、深い緑と絵に描いたような景色に取り囲まれていた。
 
私たちは、ある目的地に向かっていた。
「どうせ行くなら、景色のいい道を教えてあげる。狭い道だけど必ずそこに行けますから心配しないで」と地元の人に教えられたルートを走っていた。
丘陵の緑が暗闇に変わった頃、やっと湖畔のホテルに到着した。ホテルは山歩きやハイキング目的の客で満員だった。

翌朝、フェリーで湖を渡って村の駐車場に車を止めた。ここからは歩く。
目的地、『ヒルトップ』はすぐそこにあった。入場料を支払って小道に入ると絵本の世界が始まる。すると突然、日本語が聞こえてきた。
「ねえ、記念に写真を撮ろうよ」
見ると、日本の若い女性グループが楽しそうに観光していた。

イングランド北部のカンブリア・湖水地方。ここは、世界でも有名な観光地である。
『ピーターラビットのおはなし』を始めとする優れた作品を書いた、英国人の作家ビアトリクス・ポターは、この湖水地方を心から愛していた。

ここから先は

3,601字
この記事のみ ¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?