【復刻版】放射能汚染・5年目のチェルノブイリ 【第1回救援要請あり、放射能汚染の大地へ】

【この記事は復刻電子版です。最新の記事・情報ではありません】1990年に取材。同年10月に集英社・週刊プレイボーイで連載した記事を編集しました。※当時の「白ロシア」は「ベラルーシ」と表記しました。

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86年4月に起こったチエル丿ブイリ原発事故 は、その後、4年を経過して被曝者たちの悲痛な叫び声に変わった。汚染が最も激しいベラルーシ共和国は、全世界に向けて救援のアピー ルを行なった。 私たちはその実態を確認するために、35日間にわたってソ連(ロシア、ベラルーシ、ウクライナなど)取材を行なった。そこで見たのは、重症患者の存在を否定する関係者と、病気で苦しむ子供たちだった。今回から続けて、チェル丿ブイリ原発事故の現況を報告する。
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治療を必要としている子供たち

質問をするたびに、聞いたことのある答えが返ってくる。どこで聞いたのか考えてみるまでもなく、それは日本の官僚や電力会社の回答と同じだった。どの国へ行っても似たようなものだと心の中で思っていた。

質問の相手、ミハイル・アストレイコ医師長はチェルノブイリ原発事故と病気について答えていた。
「子供たちは治療を必要としています。ゴメリ州、モギリョフ州のホットポイントの子供たちがたくさん来ています。白血病? いいえ、白血病患者は全然いません。甲状腺肥大はほとんどの子供がそうです。それから、歯にも障害が発生しています。なんといっても神経症が一番、多いのですよ」

ここはベラルーシ共和国・ミンスク郊外のピオネール・キャンプだ。ピオネール・キャンプとは、日本の「青少年の家」のようなものだろう。日本と少し違うのは、ソ連のピオネール・キャンプには診療所とサナトリウムがあり、保養と健康管理がなされていることだ。

私たちは、このピオネール・キャンプにチェルノブイリ被曝者が大勢いると聞いて取材にきたのだった。しかし、子供たちは元気そうであった。少なくとも、すぐに入院して治療を受けなければならないほど重症の子供たちはいなかった。

アストレイコ医師長は、チェルノブイリ事故の被害について楽観視しているようだった。彼が言うには、貧血や甲状腺肥大の子供たちは多いが、これは精神的不安や地域特有の病気であって、チェルノブイリ原発事故によるストレスがこれらの病気を増加させているだけだという。放射能の影響はない、と主張しているのだ。

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