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ヴィンテージ ポテト

北海道では、ジャガイモは晩夏から秋に収穫して、春まで保存して食べる。でも、冬を越して暖かくなってくると、芽が出てくる。芽が伸びてくるとジャガイモ自体がしわしわになるし、芽には毒があるから、売り物にはならない。

でも、そんなジャガイモのことを、ヨーロッパの農家の人たちはヴィンテージポテトと呼ぶらしい。和歌山にある素敵なレストランのシェフが書いた、生きる力に溢れたような料理本を読んでいたら、そんな話が載っていた。

かっこいい。イメージが変わるなぁ。

うちにはまだまだ去年収穫したヴィンテージポテトがたくさんある。皮を厚く剥いて芽を取れば、とびきり美味しいジャガイモ。

ジャガイモに限らず、野菜は収穫してから保存している間に味が変わる。ジャガイモは、収穫したばかりが香りが一番良いと思う。ここ数年、野菜の評価は甘さばかりに注目しがちだけど、香りがないものって、すごく味気ない。コーヒーも焼き立てのパンもステーキも、香りがなかったら美味しさ半減。ちなみに、じゃがいもの品種によっても香りが違う。私が一番好きな香りは、男爵イモの香り。

収穫して保存するにつれて、ジャガイモの香りは弱くなって、甘みが強くなってくる。食感も変わる。最初はホクホクで粉質が強いけれど、だんだんしっとりしてくる。そして春のヴィンテージポテトになったときには、加熱するとねっとり甘くて、サツマイモのよう。

今日の朝ごはんは、そのヴィンテージポテトをフライパンでカリっと焼いて、バターと塩をかけて食べた。品種はキタアカリ。この時期のキタアカリは、インカのめざめにも負けないくらいの味。

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春は、畑を起こしたり種まきですごく忙しいし、買い物にもたまにしか行けない。しばらくは、このヴィンテージポテトで、じゃがいも料理を楽しもう。

昔のヨーロッパの農家の人たちは、保存したじゃがいもで、春の作物が何もない、この時期を過ごしたんだろう。

何でもないものを、魅力的なものに変えられれば、毎日が豊かになるだろう。料理って、その方法、知恵だと思う。食材自体に美味しさを求めるのも良いけれど、どんなものも美味しい一皿に変えることができるなら、どんな環境にいたって、幸せはすぐそこだ。



昨年のジャガイモを食べながら、今は今秋に収穫するためのジャガイモを植えている。今日はピンクのジャガイモ「ノーザンルビー」を植えた。このジャガイモを使って、冬にはどんな料理を作ろうか。


※文中の料理本は「villa aida 自然から発送する料理」小林寛司 著


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