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◆インタビュー『レイチェル・カーソン物語 なぜ鳥は、なかなくなったの?』翻訳家 おおつかのりこさん
――『レイチェル・カーソン物語』の原書を、最初にご覧になっての印象はいかがでしたか?
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ページを繰るうちにやわらかで落ち着いた色使いのなかに、ぱっと美しい青がでてきてはっとさせられました。画面構成や文につかわれている曲線が、やさしく楽し気でいいなとも。
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そしてなにより、ふきだしが多い! しかもせりふでなく鳥の声。楽しいけれど、心してかからないといけないと思いました。なにしろ鳥語を英語にしたのをさらに日本語にする重訳なので。それから、子ども時代のレイチェルがかわいくてかわいくて、「これは訳させていただきたい!」と思いました。
――翻訳のさいに面白かった点、苦労した点、工夫した点などを教えてください。
より深く作品を理解するために、たくさんの参考文献をよみました。レイチェル自身の作品、レイチェルの伝記、関連書など手あたりしだいよむうちに、レイチェルのこと、作者の意図、化学薬品のおそろしさなどがわかってきました。たいへんだったけれど、有意義な時間でした。
鳥の鳴き声を調べるのも楽しかったですね。
工夫したのは、絵本なので心地よくよめるリズムにすることです。何度も声にだしてよみ、語尾を変えるなど、細かな調整をしました。
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アメリカのトリゴエアマガエルの鳴き声は「ピーピー」でしたが(!)、カエルらしく
なじみのある鳴き声にしましょうということで、日本語版では「グワッグワッ」となりました。
――絵本のなかで、とくに気に入っているところはありますか?
前半の、レイチェルが自然のなかですごす場面はぜんぶすきです。原文をよみ、絵をみながら自分も森のなかをかけまわっている気持ちになりました。自分も肌で知っている心地よさなので、うれしくてしかたなくて。
レイチェルは春がいちばんすきですが、わたしはどの季節もそれぞれにすきで、四季がぜんぶえがかれているのがいいですね。彼女が大学にいくまでを、四季がぐるぐる繰り返すイメージの渦巻きであらわしている見開きも、楽しくてすきです。
――プロフィールに、”自然を愛するキャンパー”とありますが、ご自身の自然とのかかわりはどんな感じですか?
田舎そだちなので、いつも目の前に山や川がありました。父につれられてよく裏山にはいったり崖のぼりをしたり。父は歩きながらそこいらの木の名前をぜんぶいえる“山の生き字引”です。高校では部活で山登りをしてテント生活をおぼえました。
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新婚旅行のカナディアンロッキーでのキャンプを幕開けに、家族でのキャンプをずっとしています。連れ合いと休みがあわないときには、わたしはキャンプサイトで仕事をします。知床ではパソコンから顔をあげると鹿がいたことがありましたね。ボーイスカウトで子どもたちと不便なキャンプをするのも楽しいです。
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――この絵本でレイチェルのことを初めて知り、『沈黙の春』をよんでみようと思われた方が幾人もいらっしゃるのですが、レイチェルがのこした作品はぜんぶで5冊ありますね。すこしずつ紹介していただけますか。
没後に刊行された『センス・オブ・ワンダー』は薄い本ですらすらよめる内容ですが、奥深いので、繰り返しよむと自分の成長にあわせて気づくことがふえていきます。
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『センス・オブ・ワンダー』上遠恵子訳 より
海の三部作といわれる『潮風の下で』『われらをめぐる海』『海辺 生命のふるさと』は、海の生きもののことだけでなく、壮大な地球の歴史の物語でもあります。レイチェルの自然は人間の目がみているちっぽけな自然ではないのだと感じられます。
そして、『沈黙の春』。本書でレイチェルが明らかにし、うったえたことはとても大切なことですが、もし難しいと思われるようでしたら、上遠恵子さん監修の『13歳からのレイチェル・カーソン』もおすすめです。レイチェルの生涯と業績がわかるほか、いまこそレイチェルの精神が必要だということをおしえてくれます。
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『13歳からのレイチェル・カーソン』は、その生涯や作品全体を平易に紹介している
*レイチェル・カーソン著作物、伝記、関連書一覧(レイチェル・カーソン日本協会HPより)
――本書に寄せて、読者になにか伝えたいことはありますか。
額にしわをよせて環境問題をかんがえるまえに、自然のなかにでていってほしいなと思います。
エアコンがなくても、虫がいても、とびこんでしまえば生活できます。せっかく文明が発達したあとの時代にうまれたのだから、一生そんなくらしをしなくてもいいですがね(わたしもパソコンなしで仕事ができません)。
でも1週間くらいやってみると、自分は自然からうまれてきたと思いだすことができます。そうしたら、なにかがかわるかもしれません。
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――最後にひとことお願いします。
監修の上遠恵子さんには、細かなところまでご指導いただき感謝の気持ちでいっぱいです。レイチェルの作品を訳され、レイチェル・カーソン日本協会の会長を務めてこられた上遠さんの敬愛の念がひしひしとつたわってきました。この絵本にであえて、最後の最後まで原稿にむきあうことができて、よかったです。ほんとうにありがとうございました。
――こちらこそ、ありがとうございました。(文責・U)
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