【小説】NYC 2003-トムとナンシーの現在地
土曜の夜。
俺はバスルームにいて、生まれたままの姿で、
鏡に向かってInterpolのヴォーカルの物まねをしている。
感情を殺す。頭を小刻みに揺らす。
喉の奥のほうを、震わせて、歌う。
ドアをノックする音がして、我に返る。
すこし開いたドアの向こうでナンシーが手で口を押さえて笑っている。
ナンシーがうちに帰ってきていたことに俺はちっとも気がついちゃいなかった。
「トム、いつまでそんなクレイジーなこと続ける気?」ナンシーが言う。
「Radio City Music Hallを黒