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【脚本】ラヴビームアタック大作戦

○私立たま女子学園 校門

「私立たま女子学園」の表札の横を、西田杏奈(17)が駆け抜ける。

始業のチャイムが鳴っている。


○私立たま女子学園 2-B教室

騒がしい生徒たち。

教室の扉が開き、校長の武田康夫(59)が入ってくる。

一瞬だけ静かになるが、また騒ぎ出す。

武田、大きな声でいう。

武田「エー、皆さん、今日から子のクラスの担任が変わることになりました」

生徒たち、静かになる。

武田が下山田光雄(28)を招き入れる。

武田「こちらの下山田先生が今日からあなたたちの担任です。それでは下山田先生、よろしくお願いします」

武田、逃げるように教室を出ていく。

下山田、静かに教壇に立つ。

生徒たちの視線が集まる。

細身。眼鏡。七三分けの髪型。地味なスーツにネクタイ。

生徒たち、すぐに興味を失って、また騒がしくなる。

すると、ゆっくり下山田が黒板に“私語厳禁“と書き、物凄い強い力でバンバンっと音をたてて黒板を叩く。

生徒たち、あまりの音に静かになる。

そんな中、まだおしゃべりを続ける生徒1と生徒2を下山田が睨みつける。

突然、下山田の目からビームが発射される。

生徒1に命中、次に生徒2に。ビームに打たれた生徒1と生徒2が一瞬にして煙となって消える。

呆気に取られ、静寂の後で生徒たちが悲鳴をあげる。

すぐに下山田が黒板の“私語厳禁“をバンバン強く叩くので、生徒たちは手で口を押さえて声を押し殺す。

そこに、慌てた様子の武田が教室に入っている。

武田「なんだ今の悲鳴は。下山田先生、あんた、やったな。生徒たちにそれは使わない約束だったじゃな…」

言い終わらないうちに、下山田のビームにより、武田も煙となって消える。


○2-B教室横の廊下

杏奈が座り込んでいる。

動悸が激しく、手で胸を押さえている

杏奈「目からビームが出てた…。すごい。き、き、き、綺麗だった。か、かっこよかった…」

立ち上がり、教室には入らず、廊下を駆け出す。


○2-B教室

下山田が物凄い速さで黒板に数式を書いている。生徒たちが必死にノートに書き写している。

その窓の外、校庭を横切り、校門を出ていく杏奈の姿。


○バス車内

最後部の座席。杏奈が胸を押さえて座っている。

杏奈「さっきから胸のドキドキが止まらない。なんだろうこれ。なに。もしかして、これが…」


○西田家敷地内の道場

西田春奈(31)が寝転がって山積みにされた恋愛ものの少女漫画を読んでいる。そこに杏奈が駆け込んでくる。

杏奈「お姉ちゃん、大変っ。目からビームで、学校の先生で、胸がドキドキなの」

寝転んだまま春奈がいう。

春奈「ちょっと待って。よくわからない。落ち着いてしゃべって」

杏奈「わたし、恋をしたかも!」

春奈「なんですって!」

春奈、俄然興味が沸いた様子で起き上がる。


○同

道着姿の杏奈と春奈が正座して向き合っている。

春奈「恋よ、それは絶対に恋」

杏奈「そうか。これが恋なのね。お姉ちゃん、私、どうしたらいいの?」

春奈「相手を惹きつけるには、共通のサムシングを持つこと。これが恋の鉄則よ」

杏奈「すると?」

春奈「簡単よ。あんたもその先生と同じように、目からビーム出せるようになればいいのよ。明日から修行よ。学校はしばらく休みなさい。山籠りよ」


○山奥

杏奈が激しい修行をしている。

滝行。岩を持ち上げる。木々の間を素早く飛んで移動する。

その木々が紅葉し、葉が落ち、雪が積もり、やがて、新緑の季節となる。


○学校・校門

制服姿の杏奈が立っている。

学校は、以前とは違い、背の高い塀に囲まれ、校門は鉄製の巨大な扉が閉じられたまま、中は見えない。

掲げられた表札も「私立下山田大王女学園」に変わっている。

杏奈が目からビームを出して、鉄製の扉を破壊して、中に入っていく。


○同 校庭

杏奈「おかしいな。放課後の部活の時間なのに誰もいないなんて」

その時、杏奈の脳内にテレパシーで下山田の声が届く。

下山田の声「誰だ貴様は」

杏奈「2年B組の西田杏奈です。あなたはもしかして」

下山田の声「私は下山田。この学園の王だ」

杏奈「まあ学園長になっていたんですね」

下山田の声「何をしに来た」

杏奈、もじもじしながら。

杏奈「直接、口で伝えたいことがあります。体育館の裏にきてください」


○同 体育館裏

男性教師たちに担がれた神輿に乗って下山田が現れる。神輿を降り、アゴで男性教師たちに去るよう指示する。

下山田「なんだ話とは」

杏奈「えっと、その、はじめてお姿を拝見した時から、その、す、す、す」

緊張してなかなか告白をできない杏奈。

杏奈「そうだ。あの、私も、先生のビームに憧れて同じことができるようになりました。これ、見てください」

杏奈が目からビームを放つ。体育館の壁が破壊され、大きな穴が開く。煙が舞う。その煙の向こうにたくさんの生徒の姿がある。

下山田が驚いた顔で杏奈を見る。それを横目で意識しながら杏奈がどんどんビームを出して、壁の穴を広げていく。

生徒たちが歓声を上げる。

生徒たち「助けにきてくれたんだわ。わたしたちを助けにきてれたんだ」

生徒たちが体育館から飛び出し、校門の方に走っていく。

杏奈「どうですか、あたしのビーム」

下山田「き、き、貴様あ」

下山田が杏奈に向けてビームを放つ。杏奈がひらりとそれをかわすと、背後で校舎の一部が破壊され、中から生徒が逃げ出してくる。

さらに下山田がビームを放ち、それを杏奈が笑顔で避けながら飛び跳ねる。

杏奈「先生とビームの撃ち合いっこ。楽しい」


○同 校舎の屋上

下山田と杏奈、息が上がっている。

下山田「西田杏奈、やるな」

杏奈「やった。先生に認められた」

下山田「だが、これで最後だ」

下山田の目から特大のビームが杏奈に飛んでいく。負けじと、杏奈も目から特大ビームを出す。

お互いのビームがぶつかり合い、しばらく押し合いが続く。

校門の外から生徒たちがエールを送る。姉の春奈の姿もある。

生徒たち「頑張れ杏奈。頑張れー」

杏奈、最後の力を振り絞る。

杏奈「先生、好きです。付き合ってください!」

ふたりのビームの衝突点が下山田に近づいていき、ついには、下山田に到達する。

ドドドーンと轟音と共に、下山田が吹っ飛び、空中に飛んでいく。

杏奈がそれをジャンプキャッチして校庭の真ん中へ着地する。

杏奈「先生、しっかりしてください。先生」

下山田、ぐったりとした様子で

下山田「西田杏奈。私と、一緒にならないか」

杏奈、驚き、そして、満面の笑みで。

杏奈「はい。私、先生についていきます!」


○アメリカ・ニューヨーク

腕を組んで歩く下山田と杏奈の姿。

杏奈ナレ「そんなふうに、私たちは結ばれた。そしていまは、ハネムーンの途中なの」

街のあちこちに火の粉が上がる。倒壊したエンパイアステートメントビル、上半身のない自由の女神。

杏奈「ねえ、先生、次はどこにいくの」

下山田「ようやくアメリカが片付いた。次はヨーロッパだ。一緒にきてくれるか」

杏奈「うん。もちろん」

見つめ合いながら腕を組んで歩くふたり。

杏奈ナレ「私たちは無敵のカップル。どこに行くのも一緒なの。そして、今、ふたりの愛が世界を包み込もうとしてる。なんちって。ピース!」

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