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村上春樹さん「街とその不確かな壁」- 現実とあちらの世界の壁を抜けて

村上春樹さんの待望の新刊を読みました。
第一印象は、「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の世界観を思い出すなぁでした。
読み進めていくうちに、今度は「図書館」が出てきて、「海辺のカフカ」も思い出しました。

創作することは、自分の世界観を何度も描くことであり、それがアート、またアーティストのスタイルなのかもしれません。

村上春樹さんは、エッセイなどを読むと、とても現実的な印象を受けます。
でも作品は、ファンタジー的なところがあり、今回の小説も、幽霊みたいなのが出てきたり、主人公が不思議な街に行ったり、時間が逆行したり、、
現実生活ではありえないようなことが沢山起きます。

それはメタファーと言ってしまうとあまりにも安易すぎる世界で、なぜかリアルに感じ心の琴線に触れるのは、沢山の人が心の中に持っている世界が描かれているからなのかもしれません。

とは言え、壁はコロナ禍の閉鎖的な世界を彷彿させるし、脳外科を目指している医学生が深層心理や神隠しについて語ったり、、時代的な要素もごく自然に盛り込まれています。

私達は、生まれてきて、学校へ行き、働き、家庭を作って、いずれは死んでいく、、というような単純な存在ではありません。
また、時間の流れはいつも同じ速さではないし、現実に見えている世界と、あちらの世界(例えば死後の世界)は、密接につながっていて、異次元はいつも身近にある気がします。
それは、オカルトでも、スピリチュアルでもなく、普通のことのような気がします。

1+1=2みたいな単純な効率重視の因果律の中で生きていると疲弊してしまう、、
そんな時にこのような小説を読むと魂みたいなものが喜ぶような気がするのです。

昨年父を亡くした私にとって、より身近に感じ、意識の奥深くに染み入る作品でした。

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