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初めての農作業は発見がいっぱい

近々家を借りる予定の家主さんから家だけでなく、家の近くにある畑も借りることになっていた。家主さんから畑の説明を受けた時、「農薬や化学肥料は使わないでね」と言われた。勿論、そのつもりで野菜を育てる予定だったが、一般的には逆のことを言われるので、少し驚いた。

有機農業というものは大変奥深い。(そもそも、農業自体が奥深い) 幾つか有機農業について書かれた本を読んでみたが、土は耕すとか、耕すなとか、雑草は取れとか、取るなとか、本当に色々な事が書いてある。そして結局はその土地に合う方法ならそれが正解、という結論に至るのだ。メダカを飼育していた時に、私は散々学んだが、人間が感じ取れない様々な要素によって植物や生き物は生きている為、画一的に成功する方法なんて存在しないのだ。
さらに、有機農業の本を読めば読むほど感じた事として、読んでいるだけではあまり意味がない、と思った事だ。このようなノウハウは実際に経験してみて初めて分かることが多い為、実際に書いてあることもあまりイメージがついていないのだ。

実際に4月から畑作業を行うのだから、少しでも何か得ておきたい、と考えた私は家主さんが運営している農園の農作業のお手伝いに行くことにした。「農薬や化学肥料は使わないでね」と言う程なので、家主さんの運営している農園の野菜はすべて有機農業で作られている。さらに、私が借りる予定の畑も近い距離にあるため、気候も同じような条件である。恐らくどんな本よりも一番参考になるだろうと思ったのだ。

初めて農作業のお手伝いに行った日は、とても晴れていて気持ちの良い青空だった。その日の作業は主に雑草刈りであった。雑草刈りと聞くと、普通ならげんなりしてしまいそうになるが、私はかなり楽しんでやっていた。
農園の人が説明してくれた雑草の刈り方は雑草の根っこまで抜かず、地表の部分から生えている雑草をカマで刈り取る方法だった。他の農家の方だと根っこまで抜く人もいるようだが、ここでは、根っこが持っている菌根菌や微生物を守るという考え方から、生えている草の部分だけを刈り取るそうだ。これだけでも凄い収穫だったのだが、その日はこれだけでは終わらなかった。

農園の人は畑の雑草が沢山生えている所を指して、1m四方の中に10種類以上の雑草があったら、その土地は肥えていると言える、と行った。確かにそこには沢山の雑草があった。(農園の人はサラっと10種類ありますね、と言ったが、私には見分けが付かなかったのだ)
その畑はとても豊かな畑だった為か、雑草は勿論、テントウムシやアブラムシ、ムカデなど様々な虫がいた。普段あまり虫と接する機会がないので、ムカデにはビックリしてしまったが、それでもここには沢山の生き物たちがいることを感じた。

雑草刈りの作業を1時間ほど行ったのだが、1時間の作業はあっという間だった。普段PC画面を見つめる日常を考えると、とてもいい気分転換になりそうだ。その後、お手伝いに参加したグループの人達と集合場所に戻り、農園の人との質疑応答が行われた。多くの人が有機農業を初めて挑戦する人達で、私も話を聞いていてとても参考になった。

特に生えている雑草の種類でその土地の状態が分かる、という話や連作という考え方は化学肥料などを使用して無理をさせてしまうから起こる現象だという話だった。(連作とは同じ畑で同じ作物を繰り返し栽培することである)

生えている雑草の種類でその土地の状態が分かる、という話では、土が硬かったり肥えていない所では背の高い雑草が生え、土が柔らかく、肥えている所では背の低い雑草が生える、という話だった。この話だけ聞くと、背の高い雑草=ダメのような印象を持つ。しかし、農園の人は背の高い雑草は根っこを張る為、土を柔らかくする効果がある、と付け加えた。その時に、雑草や虫など私達が普段取り除いてしまうような存在でも、その場に存在している事には何かしらの意味があるのだ、と実感した。ふと、グレゴリー・ベイトソンの『精神と自然』に書かれていた「文脈があるからこそ意味が付与される」という話を思い出した。

また、連作の話では、基本的に有機農業では連作は起こらないという話に参加者は一同に驚いた。化学肥料などで本来成長しないような所まで大きくなったり、実がなる事で何かしらの弊害が起こってしまうからだ、と農園の人は説明した。なるほど!と感じたと同時に、これって視点を大きくすると地球温暖化と同じような事が畑でも発生している、という事なのだ、と感じた。きええええ。

初めての農作業で、発見する事が沢山あってとても楽しかった。土や植物、生き物と触れていると、私達が普段感じられないような生き物たち(細菌や微生物、赤外線など)の事を考える事が出来て、とても勉強になる。自然って本当に面白いな。

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