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8.2億円をシリーズBにて調達。シコメルフードテック創業物語とこれからの野望。

皆さま、はじめまして。株式会社シコメルフードテックの代表、西原と申します。
当社は、仕込みを外部化するサービス「シコメル」を運営しています。専用アプリから簡単な操作で仕込み済み商品を発注することができ、飲食店をはじめとする食を提供する全ての店舗や企業の仕込み問題を解決し、食を提供する全ての店舗や企業が抱える人手不足や長時間労働などの課題解決経営効率化の支援を目指しています。 

本日プレスリリースにて発表させていただきました通り、シリーズBラウンドにて8.2億円の資金調達を完了いたしました。

今回の資金調達の一つの目標として「採用の強化」がありますので、この節目のタイミングで、創業から今回のシリーズBまでの振り返りと今後の展望などについてnoteに記しておきたいと思います。また、これからシコメルフードテックに仲間入りして下さる方々、日頃より我々をご支援して下さっている方々、そしてこれからシリーズBに向けて動いていくスタートアップの皆さまに向けて、私の言葉で事業の歩みと今後についてお伝えできればと思います。

シコメルフードテック創業のきっかけ

シコメルフードテックの事業は、2019年の春ごろから初夏にかけて着想したものです。そこから2019年12月に株式会社シコメルフードテックを登記することになるのですが、その前に。
 
シコメルフードテックの創業は、僕にとって二回目の創業となります。今回の創業の背景を語る上で一回目の創業について語ることが必要なので、まずは一回目の創業のお話をさせていただきます。
 
一回目の創業は、僕がまだ20歳の頃、大学在学中でした。実は医学系の大学を目指していたのですが、結果、入学したのは公立大学の経済学部。医学の道にいかないのであれば一層のこと誰よりも早く起業しよう。そんな風に考えたのは、小さな町工場を経営していた父親の影響が大きかったのかもしれません。
 
父親から「食品事業はどうか?」というアドバイスをそのまま受け、食品業界で事業をスタートすることになりました。今思うと学生の起業でレガシー産業である「食品」を選ぶというのは大変珍しいかもしれませんね。
 
知識もノウハウもないところからのスタートなので、まずはできることをということで、飲食店の仕入れ代行、要するに買い物代行から始めました。地道にコツコツと続けていくと評判になり、お客様からの紹介で少しずつお客様が増えていくようになりました。
 
こうして事業をしていく中、韓国人留学生の友人との出会いから、韓国食品の輸入業へ事業を広げるようになっていきます。当時第一次韓流ブームということもあり、大阪の焼肉屋や韓国料理屋が次々と僕たちの輸入した韓国食材を導入してくれました。
 
とはいえ、卸売り事業なので、キャッシュフローや低い粗利率などに苦しみました。それでもなんとかやりくりし事業が安定してきたころに、食品製造業へ進出することになります。
 
当時大学生だった私は、事業が成長していくにつれ「もっと事業に集中したい」という想いが強くなってきました。そんなタイミングで、大阪の東住吉区にある小さな居抜きの食品工場を見つけ、エイヤーっと借りることを決めたのです。そして2003年の大学3回生の時に大学を中退し、本格的に食品製造事業へ専念する決意をしたのでした。
既に輸入食材を買ってくださっている焼肉店や韓国料理店に導入してもらえるよう、キムチやナムルといった韓国惣菜を作りはじめ、少しずつではありますが製造依頼や新しいお客様の紹介 が入ってくるようになりました。毎日が勉強で製造業の方々に沢山のことを教えてもらい可愛がってもらいました。

食品製造業として、飲食店からスーパーなどの小売業に向けて少しずつ商品を増やし、衛生面の強化や工場面積の拡張をし、なんとか年商約10億円、従業員15名程度の安定した中小企業を作り上げることができました。
 
創業から15年を迎えた頃でしょうか。事業も安定し、何不自由のない毎日でしたが、自分は事業家として何を成し遂げたいのか、メーカーとしてどこまで社会に価値を発揮していくのか、という問いにぶつかります。

そんな悶々とした思いの中で、食品メーカーのIRやHPをくまなくチェックし、食品メーカーとして偉大な企業になっていくには、今の自分のペースだと100年も200年もかかるのではないか?という絶望にさいなまれてしまいました。
 
そんな折、ニュースで2018年5月31日(木)にIPOをしたラクスルという会社のことを知ります。ラクスルの事業内容、時価総額を見た瞬間に胸が震えました。当時はまだラクスルも赤字だったと思いますが、多くの有名な食品メーカーよりも高い時価総額がついていました。「なんなんだ、これは!?」と思うと同時に、「もしかしたら、食品会社をクラウド上に束ねてマッチングする、ということは自分にもできるのではないだろうか?少なくとも、アナログな形ではこれまで沢山の工場を紹介したり連携したりしてきたぞ」と。
 
この興奮は今でも忘れられません。そこからシコメルの構想が始まっていきました。

シコメルのビジネスモデル着想から創業に至るまで

「『食品版のラクスルを作る』というアイデアはどうか?!」

昂る気持ちで現COOの川本へ電話をかけました。川本は高校時代の野球部の後輩で、僕にとって一度目の起業である食品卸会社の創業メンバーでした。大学卒業後はリクルートへ入社し、共に創業した事業からは離れていたのですが、 一年に1~2回は会って、近況報告や新規事業の相談をする相手でもありました。いつもは「それ儲かりませんね…」とか「社長がやる意味あります?」という冷たい反応だったのですが、この時だけは「それ、いけるかもしれませんね!面白い!ITに乗っけられそうか、リクルートの先輩にすぐ聞きます!」と、かなり興奮した様子でした。
 
川本は、私との電話の後すぐに、国内外にてシステム開発会社を経営するリクルートの先輩に連絡をとり、この「食品版ラクスル」構想を伝えました。すると彼も「面白いアイデアだね、一度事業アイデアをブレストしましょう」ということになり、私はホテルのカフェで彼と打ち合わせを行うことになりました。これが、のちにシコメルの開発パートナーとなる、C2C Pte.,Ltdの代表ソルさんとの出会いとなるのです。
 
ソルさんと2時間のブレストを行う中で、零細工場を作り上げてきた僕の経験と、ソルさんの優秀なテックチームをかけわせると、飲食・食品業界というレガシーな産業に巨大なプラットフォームを構築することができる。これが実現できると飲食店のコスト構造を抜本的に変革することができ、それと同時に飲食・食品業界において長年の課題である長時間労働をはじめとする労働環境を改善することにつながり、多くの飲食・食品事業者に革命が起きる、という確信に変わりました。
 
ソルさんとの最初のミーティングからほんの1~2ヶ月で、大阪で活躍する食肉卸の会社、青果卸の会社にも株主として参画いただけることが決まり、創業メンバーの川本、そしてソルさんと合わせて出資5000万円でシコメルフードテックを創業することになります。2019年12月のことでした。
 
これまで中小企業のオーナーとして、自分以外の人が株を持つということを経験してこなかったのですが、この巨大なレガシー産業へのイノベーションは、僕一人だけではなく多くの人のコミットメントと経営への参画が必須だと考え、株の希薄化などは一切考えませんでした。

法人登記からアプリ開発

2020年に入り、いよいよテックチームとアプリの開発を進めていこうとした矢先、期せずして新型コロナウィルス感染症が世界中に猛威を振るい、飲食店や食品工場をはじめとした食に関わる事業者が激動の毎日を過ごしていました。サービス開発を進めていく中、「今我々にできることは何なのか?廃業の危機にある飲食店を助けられないか」という思いから、飲食店の味をそのまま自宅で楽しめるミールキットEC事業「タノメルbyシコメル」を突貫で立ち上げました。
 
コロナ禍真っ只中の2020年9月、ようやく「シコメル」アプリをアプリストアへ公開、10月からいよいよサービスをローンチすることになりました。

シコメルの事業概要

当時は、外食控えからデリバリーを利用する人が増え、客席を持たずデリバリーのみで料理を提供するゴースト・レストランと呼ばれる業態の飲食店が急激に増えていた時期でした。ゴースト・レストランは、注文が入ってから5分以内に調理を完了し、お客様の元へできるだけ早くお届けすることがお客様満足度を上げることに必要であったことから、シコメルが提供する「仕込み済み商品」はまさに理想的だったのです。
多くのゴースト・レストランからのオーダーが殺到し、彼らが求める商品開発のスピードに四苦八苦しながら、なんとか商品をお届けしていったことを今でも覚えています。

一方で、少しずつイートイン業態のお客様が増えてきて、シコメルの構想時に考えていたような飲食店から引き合いをいただき始めました。
例えば、都内で韓国料理を展開しているお客様では、シコメルを利用して仕込みを外部することにより、原価は1.6%上昇したものの、人件費が2.9%減りました。また、時間のかかる仕込み作業がなくなったため、店舗スタッフの出勤時間を遅らせることができて長時間労働を解消することができたり、新店舗立ち上げ時のスタッフを最小限に抑えることができるようになった為、2店舗目をオープンさせたりすることができました。
それだけでなく、メニューが仕込み済み化されたため、仕込み済み商品を使ってフランチャイズ展開を始めることができ、1年弱で3店舗がオープンしました。
シコメルを導入したことで、発注作業や在庫管理などのバックオフィス業務が効率化され、生産性と利益率が向上しただけでなく、物理的な人不足問題の解決へ寄与したり、事業展開にも貢献したという事例がでてきました。

多くの経営陣や専門スキルを持つ仲間、新たな投資家(シリーズAラウンド)との出会い

この頃は、シコメルの登録店舗数がまだ500にも満たないような規模でしたが、創業時に想定していたイートイン型飲食店だけでなく、ゴースト・レストランからも強い引き合いをいただき成長してきたことから、「PMF((プロダクトマーケットフィット)とはまさにこういうことなんだな」と実感していました。営業する余裕がないのにお客様が自然と増えていき、PR活動していないのにテレビやラジオなどから取材の依頼が舞い込むなど、これまでに経験したことのない日々でした。
 
当時、外資系金融業界で活躍していた現CROの松本や現CFOの三好が当社へ参画してくれたのはこの頃です。彼らがシコメルの可能性と面白さに夢中になってくれたのはとても心強かったですし、同時に投資家も増え、シコメルの社会的な意義に賛同し,レガシー産業への挑戦を共に歩んでくれる仲間が増えていくことに武者震いがしたことを覚えています。

アプリダウンロード数1万突破と8.2億円の資金調達シリーズBラウンド実施

増え続けるニーズに応えるため、物流システムや商品・サービスの改善、社内の組織づくりや経営体制の見直しを進めていくのと並行に、シコメルのアプリが1万ダウンロードを突破し、登録店舗数は2,700店舗、109の提携工場に利用される「仕込みのプラットフォーム」へと成長しました。
 
そしてこの度、Headline Asia様をリード投資家とする8.2億円の資金調達を実施することとなりました。将来は、国内に留まらず海外でもこのイノベーションを広げていくこと、また日本の農業の課題解決やフードロス問題の改善にも貢献していくこと、飲食店だけでなくホテルや高齢者施設など食を提供する全ての場所へ提供範囲を広げていくことなど、各投資家とディスカッションを重ねました。
 
既に動き出している飲食店以外の施設への導入については、我々も想像していなかった規模での広がりの可能性を感じています。
コロナ禍で料理人を解雇せざるを得なかったホテルや観光地の施設、研修施設などでは、雇い戻しが困難なために人手不足に拍車がかかり、構造的な課題解決の必要性に迫られています。人手不足の為これまで通りの営業ができない施設が数多くありますが、お客様にはこれまで通り美味しい食事を楽しんでいただきたいという思いから、一部のメニューの仕込みを当社へ依頼いただくことがあります。シコメルを導入した結果、仕込みにかかる時間の短縮だけでなく、発注作業の集約・簡略化からメニュー開発の工数削減まで、抜本的な経営改善が実現するケースが出てきています。
また、同じく慢性的な人手不足の業界である介護施設においては、栄養バランスを重要視するために、喫食ではなく摂食の観点で食事を提供することが多いのですが、本来食事は楽しむものです。食欲を掻き立てるような美味しい食事を、現場の働き手の負担を減らしながら提供し、喫食者に「美味しい!」と喜んでもらえること、これが僕の喜びであり、シコメルフードテックの使命だと考えています。
 
世界の状況と同じように、日本国内においても食品産業や家庭内での食べ残し・賞味期限切れなどに伴う食糧廃棄は増加傾向にありますが、食糧は保存に限りがあり、重量などの問題から取り扱いが難しいと言われています。
そこで、シコメルで仕込み化することにより、保存や輸送のボトルネックを解消し、将来的にはアプリの受発注データと天候などの外部データを掛け合わせることにより需要予測が可能となり、適切な食糧供給に寄与することができると考えています。

日本の5〜74歳までの人口が約1億人ですので、一日3食とすると毎月約90億食、一年で1,000億食以上が食されるのです。
とてつもなく大きなマーケットであり、これほどまでに身近でかつ大きな社会的インパクトをもたらすことができる事業はないのではないかと考えています。

シコメルフードテックが実現する世界

今回投資いただいた資金を用いて、これまでの3倍速で事業を推進し拡大していきたいと考えています。
 
まずは人とシステムへの投資です。
仕組み化、体系化していくことにリソースをさき、効率的かつ圧倒的なスピードで仕込みプラットフォームを拡張していきます。

今思い出しても胃が痛む話なのですが、2022年のはじめにサード・パーティー・ロジスティックスを導入し、物流業務の効率化を図ったのですが、これが結果的にお客様へ多大なるご迷惑をおかけすることになってしまいました。
それまで大阪の物流拠点よりアナログなピッキングで出荷していたので、バーコードを利用した商品の在庫管理や賞味期限のモニタリングなどの仕組みを作り上げることにしました。しかし、仕込み済み商品を製造するのは自社工場ではなく提携工場ですので、当社が決めた商品ラベルの表示ルールや納品ルールを徹底していただく必要があったのですが、なかなかコントロールすることができず、大混乱が起きてしまいました。このようなことが再発しないような仕組みづくりやシステム化を爆速で進めてまいります。

それに加えて、日々集まってくるお客様からのご要望や受発注データの解析、アプリや管理画面の最適化など、テクノロジーによる更なるサービスの進化を目指し、テックチームを強化します。
 
大きなニーズがあるからこそ、便利でかつコストパフォーマンスが良くなければならない。一時的に使うサービスではなく永続的に使えるものにならなければ、我々が目指す大きなイノベーションは道半ばで終わってしまう。そういうことをサービス開発において日々強く意識しています。
 
フードテック市場は世界規模で700兆円(SKS創業者Michael Wolf氏)とも言われています。その領域において、JAPAN発のビジネスモデルとして「シコメル」がどこまで世界にインパクトをもたらせられるか。

現在進めている飲食事業者と食品工場のマッチング事業、そしてそのプラットフォームで完成した商品の水平展開、その受発注データから進化したテック活用へと拡げていくことにより飲食店の仕込みは外部化するのが当たり前となり、飲食事業を開業するときには「電気、水道、ガス、シコメル」と言われるようなサービスになりたいです。

今、この取組みを我々と一緒になって進めてくれる仲間を募集しています。

僕が社長であることや、川本がCOOであり続けることさえ常に疑問を持ちながら事業を進めたいと思っています。どのようなポジションでもどのような経歴でも、最適な配置とミッションを設定していく。僕よりも想いが強くリーダーシップを発揮できる人がいたら、その人に社長をやっていただく。日本の食に関わるビジネスにより早く、より大きな革命が起こるのであれば手段はいとわない。また、投資もいとわない。
 
少しでもこのシコメルという事業に興味を持っていただけましたら、いつでもお問い合わせください!







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