新聞を見ると

  たぶん、この話題については日本経済新聞を取り上げるのが最も分かりやすいのだろうと思うのだが、他の新聞も似たり寄ったりかもしれない。菅新政権になってからというもの、環境問題に関する記事の数がぐっと増えた。

 普段、環境関連の報道についてクリップしている日経の記事を見ても、10月26日の所信表明演説以来11月末までの1か月間で50本ほどを切り抜いている。所信表明前の1か月は20本もなかったことを合わせて考えると、この時期明らかに新聞報道が増えている。カーボンニュートラル宣言を、新首相が話すとこのくらい影響力が出るんだという好事例になったと思う。

 では本当に日本は2050年までにカーボンニュートラルを実現できるのか?という肝心な問いかけについては、さまざまな報道を見ても今一つピンとこないものが多い(当たり前だ。30年も先のことを予言せよという方に無理がある)。ただ、今のままでは相当難しい話であることへの警鐘を鳴らす報道が思ったほど多くないのは何故だろう。

 日経がここ1か月に掲載した記事を眺めても、真正面からカーボンニュートラルの困難性を指摘する記事はほとんどない。一応疑義を呈したような部分もあると受け取れる記事でもせいぜい5本くらいだ。

 実際のところ、どのくらい困難な話なのか?について事例を提供できれば良いのだが、ライフサイクル分析による排出量の査定など、技術的にカンタンではない要素が含まれるため、ここが難点になっている。

 専門家の中には、あくまで概算ベースだが日本の離島ですらカーボンニュートラルの達成は相当困難だ、という見解を持つ人もいる。ましてや都会、いわんや東京をや、という状況なのが本当のところだと思う。

 政府は2035年までにすべての乗用車を電動車に変える、という意向だそうだけど、あと15年で本当にガソリン車やディーゼル車はなくなるのか?そうだとすると内燃機関の様々な部品を下請階層構造で支えてきた自動車部品産業はどうなるのか?

 他にもある。石油ストーブのない北海道の冬は?溢れるゴミの焼却はどうするのか?あまたある素材産業の熱を利用した精製工程はすべて太陽光や風力で賄うつもりなのか?

 本当に大変なのはこれからなんだろうと思う。2050年に間に合うように、大きなイノベーションが起きて全てが解決される、というシナリオはなくはないのかもしれないが、そんな良い話が眠っているならとうに誰かが見つけているのではないかと言う気がして仕方がない。

 2050年のためのグランドデザインを、メディアやアカデミアの力によってぜひ可視化してもらいたい、と思うのはたぶん私だけではないと思う。

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