ビジネスチャンスはすぐそこに

 菅首相の「2050年温暖化ガス排出実質ゼロ宣言」は、環境ビジネス業界に激震をもたらしているようだ。関連する書籍は売れ、問い合わせの数も増えて、セミナーやワークショップも花盛り状態になっている。菅首相様様状態、と言えるかもしれない。

 考えてみれば京都議定書の時だって、物事がほんとうにゴール主導で決められたことはなかったように思う。まずは実現可能性の堅いところをあたり、次に政策的にもアピールするような落としどころが探られる。京都国際会議場を包んだ熱は空前のものだったけれど、ふたを開けてみれば日本と欧州だけがCO2削減責務を負う、しかも最後には京都メカニズムと言う名前のカネで責任を買うことができるというカラクリには、心の中で「なあんだ」と思った向きも少なくなかったのではなかったか。

 それが今度は、「まずゴールありき」というところから話が始まったように見える。ただ、今までのやり方からするに、落としどころを探る動きが全くなかったとは考えにくい。「2050年まで」のように具体的な締切りを切った野心的な取り組みには、まず欧州が、続いて2060年目標で中国が先行し、日本は今回ようやく追いついた格好になったことは、前回のnoteでも触れた。もしもアメリカ大統領がバイデンになり、気候変動対策を進めることになったとしたら、「ホントに日本はジョーク並みの国」、と揶揄するメディアが出ていたに違いない(「他はみんなやってますよ。」と言われなければ何もできない、という小噺。前回の記事「ようやっとのことで」参照)。

 むろん、事前に様々な検討は重ねられていたことと思う。その中で「やれる」という手応えを掴んだ役人が、役所のどこかにいたのではないかと推察するが、まあそんなことはどうでも良い。それが演出であったとしても、「まずゴールありき」で動くんだ、という決心が国民に伝わることの方が重要だと思う。

 そうなれば玉突き現象的に、様々な場面で様々な取り組みがなされるようになってゆくことだろう。すでに業界関係者の間では、さまざまな意見が飛び交っている。たとえば再生材の利活用を含めたサーキュラーエコノミーの世界には、今後デザインこそが重要なファクターになる、という洞察がある。これまでは、どうやったら資源循環を実装できるかと言うレベルの議論だったものが、一気にそこまで高まるかどうかは別にして、確実に高次元の展開へと、人々の思惑が増幅されているのだ。

 コンサルタントとして言えることは「これから忙しくなりそうだ」ということ。アメリカ大統領選挙の結果にもよる部分はあるが、最低でも日本の令和3年度予算については、かなり大きなエネルギーで物事が動き出す。ビジネスチャンスはすぐそこに、来ていることにどうやら疑いの余地はなさそうだ

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