SDGsの難しさ

 意外に思われるかもしれないが、環境ビジネスのオーナー社長と話していると、SDGsに対してガードの堅い人が普通にいることに気づかされる。よく言えば慎重、あるいは熟考途上にある人は少なくないし、中には懐疑的なスタンスを取る人もいたりする。

 業界の外にいる人から見れば、環境の仕事をしているのだから、SDGsへの意識も高いはず、菅首相もカーボンニュートラルとか言ってるし、世の中の意識が変わりつつある状況は、ビジネスにも追い風なんだろう、という見方をされることが少なくない。

 むろん肯定派は少なくないし、ビジネスへの追い風を利用したくない経営者は普通いないわけで、そう考えると他のセクターと同様に、SDGsを基本的に否定するという人はいないはずだ。

 ところが、熟考している方々の中にはSDGsが抱える本質的な難しさに気付いている人がいて、そういう人は世の中にはまだその難しさを担保する仕組みがないことも分かっていたりする。

 典型的な指摘は、「ISOなど、企業が望んで始める認証制度なら、上手く行かなければ止めればよい。でもSDGsは一度看板を掲げてしまうと、止めることは極めて難しい。」というものだ。

 これはどういうことかと言うと、ISOもSDGsも、初期的な取り組みが「学習」つまりコストがかかるところは似ている。その後「実践」段階を経て、経営者的にはそれが売上向上につながってくれれば可、というわけだが、実践努力に見合う売上が上がらない場合、どうしたらよいか?

 「ISOならカンタンに止められるんですけどね。」とある経営者が問わず語りに言う。SDGsを止める、と言う意思決定はひどく難しい、なぜならそれは「会社として、社会善に背を向ける」ことの宣言につながるからだ。

 他方で環境ビジネスに手を染めている会社がSDGsへの取り組みをしないままで良いのか?という疑問にも直面しているわけで、経営者としては二つの疑問に板挟みになる形で立ち止まらざるを得ない、ということのようだ。

 しっかりSDGsを実践できている会社でも、これに似た悩みがなかった、と言う例はむしろ少ないのかもしれない。それが楽しいばかりの取り組みではないことを、企業を取り巻くステークホルダーとしてもまた、認識する必要があるのだと思う。

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