「あと6割」が暗示するもの

 菅首相が、2050年までにカーボンニュートラルを宣言したというだけで、経済界の一部は異様な熱気を見せている。技術開発に分厚い新規投資がなされることが見えてきたせいもあってか、コロナ禍にもかかわらず、株式市場ではこのところずっと強気の相場が続いている。

 他方で、科学者や気象関係者が着々と進む温暖化の進行を報告していることはあまり触れられない。そもそも2050年のカーボンニュートラルとは、産業革命前に比べて1.5℃という「野心的な」目標値のための前提ではなく、あくまでパリ協定が取り決めた2℃シナリオのためのものだということをもう一度思い出す必要がある。

 すでに大気中に出てしまったCO2は回収しづらい、ならできるだけその増加を抑えよう。これ自体はもっともな発想だけど、その結果どうなるかというと、たとえどれだけ頑張っても、気温は今より上昇する。産業革命前に比べてすでに1℃以上気温が上昇したと言われているけれど、さらに1℃、あるいは少なくても0.5℃の上昇を受け入れようというのだ。

 そうなると、台風や大雪の回数はたぶん間違いなく増える。一説によると今より6割がたその数が増えると言われている。いや、回数だけではないだろう。その規模も、今までとは違う未曽有のものになるのではないだろうか。そうなったとき、巨大な風車は無傷でいられるのだろうか。たくさんのパネルは台風に吹き飛ばされたりしないだろうか。

 そのうちやがて、マンションの窓には強化シャッターが不可欠になる日が来るような気がする。あと6割。SF映画が描いたような明日が現実にならないことを祈りたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?