環境問題と近視眼

 環境問題に携わっていると、極端に近視眼的な取り組みが意外と本気で行われていて、時折ビックリさせられることがある。たとえば海洋分解性プラスチック、なんていうテーマが真剣に研究されていたりする。https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101348.html


 研究開発だけなら、そこから得られる技術的知見もあると思うので、一概に否定されるものではないかもしれないが、「社会実装」というコトバがついて回ると、これはもう相当怪しい話になる。そもそもプラスチックをどうして海で分解しなくてはならないか?海で分解しないプラスチックがこれだけ広く流通している社会において、海で分解するプラスチックを市場投入することが何を意味するか、研究開発者は想像すらできていない、ということではないだろうか。


 同様に、カーボンニュートラルを目指す「グリーン成長戦略」の取り組みの中で、燃料アンモニアが15の重点分野として取り上げられている。燃料アンモニアはCO2を出さない代わりに窒素あるいは窒素酸化物を排出する。それを重点的政策の一つに加えようというのだ。https://www.yomiuri.co.jp/economy/20201210-OYT1T50079/


 現在、プラネタリーバウンダリーでは窒素の拡散は地球温暖化以上に喫緊の環境課題とされていることに、まるで頭が向いていないと言われても仕方ない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/プラネタリーバウンダリー

 こういう政策に関わる人たちとも、たとえばSDGs的な視点を共有できるなら、せめてしっかりと目配りしたうえで政策的な優先順位を考えてもらえないものだろうか。「要はCO2さえ減らせばよい」的な思考回路がまかり通るところに、彼我の限界をチラ見した気がして、今日はちょっと憂鬱な気分。

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