レインコートの衝撃
6月である。
昔から僕はあまり6月は好きではない。
何せ梅雨である。
とにかく雨が多いと気分も何だかズーンっと重くなってしまうのだ。
ミスチルの桜井さんも昔6月の物憂げな雨に打たれてたし、これはみんなそうなのかもしれない。
僕の場合、特に今の家に引っ越して以降は自転車移動が必須(駅から徒歩15分の駅チカならぬ駅トオ)なので、毎日雨が続く梅雨の時期は非常に困るのである。
引っ越して2年目まではピッコロのマントの上部分ぐらいしかないポンチョを着ながら、ずぶ濡れになってヒイヒイ自転車を漕いでいた。
そして大雨過ぎて自転車を諦め、駅まで歩いていった日には僕がバイト用に履いている激安スニーカーが謎の泡を吹き始めるという、自分の靴がいきなり蟹になる怪奇現象に見舞われたりもした。
いきなり蟹になるってまじで何やねん。
最近でもたまになるけど。
あれ周りの人が見たら「うわ、あの人蟹履いてる、、、!!」てなるから、ほんまに恥ずかしいねん。
と、この様に東京に来てからの僕と6月の梅雨は非常に相性が悪いのだが、それも去年までの話ではある。
去年、僕はあるものをネットで購入したのだ。
それは、、、
「ちゃんとしたレインコート」である。
膝下ぐらいまであるタイプのよく主婦の方とかが着ているイメージの物で、男女兼用ながらもサイズはかなり大きくリュックを背負ったまま着る事が出来る優れものである。
色も黒なのでスタイリッシュだ。
よく男性が着ている上下に分かれているタイプではないので足元はガード出来ないのだが、実際雨の日に使ってみると、膝下まで守れていたら以外と足元はそこまで濡れないもんなのだ。
しかもサンバイザー的なシールドがデコの部分についているので雨から顔も守れる。
ピッコロのポンチョ時代はこれが無く雨が顔に直撃しまくるという、踊る大捜査線伝説の第10話「凶弾・雨に消えた刑事の涙」の織田裕二状態に毎回なっていたのだ。
織田裕二の気分を味わえるのはいいが、毎回はやはり辛いものがあったのだ。
なのでこのレインコートを手に入れてからというもの雨の日が苦痛では無くなったのである。
そんなこんなで先日。
天気は雨。
僕はいつも通りレインコートを着込んで、颯爽とバイトへと向かった。
雨の中、自転車を爆走させる。
するとふと通り道にあるマンションのガラス部分に映った、自転車に乗ってる自分の姿が目に入った。
!?
見た瞬間、僕は絶句した。
そしてモジャモジャのヅラを被ってから
「なんじゃこりゃあああ!!!」と叫んだ。
バケモノだったのである。
ガラスに映った真っ黒なレインコートを着たNISSHANの姿はまるでてるてる坊主のバケモノの様だったのである。
僕は衝撃を受けた。
とりあえずデカすぎて何かもう色々凄いのだ。
言い方悪くなるのであれだが、何というかマツコさんというかデカいババアというか、、、
僕は今までこのレインコートを着た自分の姿をちゃんと見た事がなかったのだが、初めてちゃんと見たその姿は「衝撃」の一言だった。
とにかく似合ってないのだ。
レインコートに似合うも何もあるの?と思うかもしれないが、これがあるのだ。
絶望的に似合ってないのだ。
デカさも相まって奇妙な黒い塊に見えるのだ。
サンバイザーの部分が手伝って、千と千尋のカオナシの様に見えなくもない。
とにかくヤバいのだ。
僕はガラスに映った自分の姿を見ながらじっくり考えた。
何や、これは!?
一体このバケモノは何なんや!?
このガラスの向こうにいる巨大な物体は何や!?
レインコート、こんな似合わん事ってある!?
え、まじで何これ!?
何かとにかく凄いねんけど!
全国のてるてる坊主の負の部分を合体させた、悪の融合巨大てるてる坊主やないか!
え、何でこんな事なってんの!?
いや。
ていうかこれあれやな。
レインコートのタイプ間違ってるな。
やっぱり上下に分かれてるタイプじゃないと厳しかったんや。
実は去年買うときに懸念はしていたのだ。
男女兼用とは書いているがこの膝下まである1枚のタイプはどうも女性、特におばちゃんとかが着ているイメージが強かったのである。
実際雨の日に見かけるこのタイプはほとんどが女性の方が着ていた。
ただ上下買うよりも安く、男性が着てる画像もあったので「大丈夫や!」と自分にゴーサインを出したのだが、どうやらそれがやはり間違いだった様なのだ。
いや、正確にはサイズもいけるし別に着ても問題ないのだが、おばちゃん達が着ているイメージのものを僕が着るとギャップも相まって凄い違和感を醸し出すのである。
そしてその結果、てるてる坊主のバケモノと化したのだ。
僕は悩んだ。
まさか自分がてるバケ(略してみました)になっていたとは。
今後もこれを着ていていいものか。
ていうか、今に至るまでもしかして色んなとこで笑われてたんじゃなかろうか。
「ママー!おっきなてるてる坊主!」「しっ!見るんじゃありません!」みたいなやり取りしていたんじゃなかろうか。
これからどうしたものか。
しかし、使い勝手は抜群である。
リュックを隠せるのが相当でかいし、上下のタイプだとお金はかかるし、着脱も面倒である。
そう考えると、う〜ん、、、
少し考えて、僕は答えを出した。
レインコートさん、、、
これからもよろしくお願いします。
もうここまできたら見た目なんてどうでもいいのだ。
笑いたきゃ笑うがいい。
この歳になれば見た目より機能重視なのである。
ていうか究極に金無いのにそんな理由で買い直してられるかい。
これからも主婦さん達に混じってチャリ爆走させるで。
はい。
というわけでもし雨の日の練馬で巨大な黒い塊を見た日にはどうか優しい見守ってやって下さい。
よろしくお願いします。
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