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MOROHAに見る現場の対応力

2019年11月8日、お台場Zepp DiverCityで開催されたMOROHAの単独ライブの話です。MOROHAにの音楽ついてはここでは触れませんので、この機会にyoutube等で彼らの音楽に触れていただけると嬉しいです。

一言で言うと

ライブ中に観客が倒れて、MOROHAは曲を一旦止めました。その時の対応に感動したことと、その背景にある経験と理念について書いています。

トラブル発生

ライブが始まって40分程度経ったところで、自分の斜め前の男性がフラフラしていることに気が付きました。リズムに乗るでもなく、感動でふらついているでもなく、いわゆる倒れる一歩前の状態です。

どうしよう。声をかけるか、スタッフを呼ぶか…。写真を取られてSNSにアップされて簡単に炎上するこのご時世。ステージの進行に影響を与えるようなことになれば、斜め前の男性だけではなく、自分も危ないかもしれない。

それに、この日のライブは全国28ヶ所のツアーの最後でした。「楽しみに来たんじゃないんだろ?MOROHAに挑みに来たんだろ!」や「その手は周りに合わせた手拍子や拍手をするためのものじゃない!何かを掴み取るための手だ!」の言葉のように、MOROHAも観客も相当に熱くなっている状態です。

MOROHAの対応

自分が何もできないままでいるとき、斜め前の男性は膝から崩れるように倒れかけましたが、左右の観客に支えられて何とか大事にならずに済みました。観客の異変に気がつくMOROHAの二人。躊躇なく歌を止めるアフロ、ギターの演奏を続けるUK。

誰か倒れた?
スタッフ!
すみません、周りの方フォローお願いします。

駆けつけるスタッフ。観客席に向けられるライト。ライブとは違った緊張感が会場に張り詰める。

こういうことが必ずあります。
彼はMOROHAのライブに来た人だからきっと大丈夫。
外で一休みしたら、また自分で立ち上がって。
今日は無理だったとしても、次の戦いに向かって行きます。

UKのギターの演奏に乗せて、会場に優しく語りかけるアフロ。外に運ばれていく観客。観客席に向けられていたライトは再びMOROHAを照らす。

みなさん!この出来事で、集中力を高められたら、
これもライブの醍醐味って言えるんじゃないでしょうか!
倒れた彼が責任を感じないように、もっと力いっぱいやりますんで、
どうか皆さんも、引き続き精一杯MOROHAに向き合ってください!
よろしくお願いします!

会場全体からの大きな拍手と歓声。演奏していた曲のエンディングのフレーズを弾くUK。暗転。会場全体が温かい雰囲気に包まれたのを感じました。

現場の対応力とは?

さて、このように素晴らしい現場の対応力というものは、どうやって培われていくものなのでしょうか。MOROHAにの二人は2008年に結成して今年で11年目です。これまでの経験に裏打ちされたものであることは間違いありません。

しかし私は経験だけでははないと思うのです。今回の観客が倒れるというトラブルに対して、運営スタッフにその対応を全部任せて、予定通りのセットリストを進行することもできたはずです。しかし敢えてそれをしなかったのは、MOROHAの二人がファンを大切にしている、そして大切にしてきたことも背景にあるのではないでしょうか。

顧客対応の例

経営管理系の教科書によく掲載されている顧客対応の例として、ジョンソン・エンド・ジョンソンの「タイレノール事件」があります。これは1982年に同社の鎮痛剤タイレノールに青酸化合物が混入し、7名が死亡した事件です。同社は「青酸化合物の混入の疑いがある」とされた時点で、全地域でタイレノールの回収を即座に決定しました。そして、テレビ放映、新聞の一面広告、専用フリーダイヤルの設置などを行い、顧客に安全情報の提供に努めました。

この事件による損失は約1億ドルと言われていますが、迅速かつ徹底した初動によって、事件のわずか2ヶ月後には事件前の売上の80%まで回復しています。

Wikipedia タイレノール
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%AB

同社には「消費者の命を守る」ことを謳った「我が信条(Our Credo)」という経営哲学があり、社内に徹底されていました。緊急時のマニュアルが存在しなかったにもかかわらず、迅速な対応ができたのはこのためであると考えられています。

「我が信条(Our Credo)」 にまつわるエピソード
https://www.jnj.co.jp/about-jnj/our-credo

まとめ

素晴らしい顧客対応には、その対応に基づく理念や哲学が必要なのではないでしょうか。クレーム対応や緊急時のマニュアルをどんなに綿密に作ったとしても、そこに「思い」や「願い」が入っていなければ、必ずしも有効に働かないのかもしれません。

昔のことわざに「仏作って魂入れず」というものがあります。仏像を作っても、魂を入れなければ単なる木や石と同じであることから、せっかく良いものを作っても、大事なものが抜け落ちていれば努力も無駄になることです。目に見えない事かもしれませんが、顧客の対応にも魂が入っていると良いですね。

最後に

なお、本文中のライブの様子は私の記憶に基づいて記載しているもので、必ずしも正確ではないことをご了承ください。

またライブを途中で止めるという対応は、ライブの規模や運営の方法にも関わりがあることです。トラブル対応でライブを止めないアーティストを避難する意図で書いたものではないことをご理解ください。

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