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2017年J2第1節 名古屋グランパス対ファジアーノ岡山 レビュー「風間監督が仕掛けた攻撃時のフォーメーション変更」

2017年J2第1節、名古屋グランパス対ファジアーノ岡山は、2-0で名古屋グランパスが勝ちました。

2016年シーズンから名古屋グランパスはメンバーが多く入れ替わり、そして、新しい監督が就任しました。2016年の開幕戦のスターティングメンバーと比較すると、2年連続でスターティングメンバーとして名を連ねたのは楢崎のみ。ベンチに入ったメンバーも含めても、和泉とシモビッチのみ。そしてスターティングメンバーで2016年シーズンに在籍していた選手は、楢崎、杉森、和泉の3人のみ。全く新しいチームとなったということが、開幕戦のスターティングメンバーからも分かります。

しかし、2017年シーズンから監督に就任した風間監督は、川崎フロンターレで監督を務めていた時から、「時間がない」「負けが続いていてピンチ」といった状況ほど、何か新しい事を仕掛けてくる監督です。新しいことを浸透させる時間がないから特に何か目新しいことはしないだろうと思っていたら、ちゃんと仕掛けを用意していました。

風間監督が仕掛けたフォーメーション変更を読み解く

風間監督が用意してくれた仕掛けは、攻撃の時と守備の時のフォーメーション変更です。

サッカーで攻撃の時と守備の時にフォーメーションが違うのは当たり前です。攻撃の時には、サイドバックがFWの位置まで上がったり、MFの選手がセンターバックの位置に下がったりする動きは、いまやどのチームでもやります。しかし、風間監督が仕掛けたフォーメーションの変更は、少し違いました。

名古屋グランパスは、守備時は5-4-1のフォーメーションで守ります。DF5人の並びは右から、杉森、宮原、櫛引、内田、和泉と並びます。MFは右から玉田、小林、八反田、佐藤と並びます。DF5人でサッカーコートの横幅64mをカバーすることで、相手に自由にプレーする場所を与えず、失点を防ごうという狙いが読み取れます。

しかし、攻撃時はフォーメーションが微妙に変わります。DFは杉森、宮原、櫛引、内田の4人に変わり、DFラインでボールを回す時は、右に宮原、左に櫛引の2人が中央に立ちます。杉森は右サイドタッチライン付近に位置し、FWに近いポジションにまで上がります。このポジション変更は他のチームでもよくあります。

驚いたのは内田と和泉のポジションです。内田は攻撃時は左サイドタッチライン付近に位置し、FWに近いポジションまで上がっていきます。守備時に櫛引の横にいた選手がやる動きではありません。

そして、もっと驚かされたのは、和泉のポジションです。和泉の守備時のポジションはDF5人の左サイド。左ウイングバックと呼ばれるポジションです。しかし和泉は、右サイドの杉森とは同じ動きはしません。攻撃時は中央に移動し、八反田に近いポジションに位置するのです。

和泉はもともとMFの選手ですから、攻撃時に中央でプレーすることに違和感はないのですが、ポジション別の役割から考えると、あまり見られないポジション移動です。ペップ・グアルディオラが監督していた頃のバイエルン・ミュンヘンで、サイドバックのラームとアラバが、攻撃時に中央のMFの位置でプレーしたことがありますが、和泉のポジション変更はそれに近い狙いがみてとれました。

和泉のポジション変更は、和泉が慣れている中央のエリアでプレーさせたいという狙いだけでなく、中央のMFが2人いるファジアーノ岡山に対して、和泉、八反田、小林の3人を配置し、数的優位を作って攻撃したいいう狙いがあります。また、和泉を中央にスライドさせることで、フィールド中央でボールを奪われた時にMFが3人いるため、3人で囲い込んでボールを奪い、すぐに攻撃を続けたいという狙いも感じられました。

風間監督が狙っている攻撃が表現されたのは、前半23分の攻撃です。左サイドを和泉と内田のパス交換で相手の守備者を外し、佐藤にパス。佐藤が玉田とのワンツーでゴール前まで運び、素早いグラウンダーのパスを永井に合わせようとしました。永井にはわずかにあいませんでしたが、スピードを落とさず、正確にパスを足元に繋いでみせたことで表現された攻撃は、とても迫力がありました。この攻撃が何度みられるかが、今後の名古屋グランパスの攻撃を判断する判断基準となる気がします。

2017年の名古屋グランパスのキーマンは八反田

改めて名古屋グランパスの攻撃時のフォーメーションを整理すると、DFは宮原と櫛引、その間に八反田が立ちます。八反田の前に右から小林と和泉、タッチライン付近に右に杉森、左に内田、そしてFWは中央に永井、右に玉田、左に佐藤というフォーメーションです。攻撃時は2-1-2-5というフォーメーションに変わります。J2ではあまり見られない(というかJ1でもあまり見られない)フォーメーション変更です。

このフォーメーション変更のキーマンは、中央の「1」のポジションを務める八反田です。

八反田がボールを「出して、受ける」を繰り返し、攻撃のテンポをコントロールします。八反田が横方向にパスをしている時は、攻撃を仕掛けるタイミングをはかっている時です。

八反田が縦方向にパスをした時は、攻撃を仕掛ける時です。八反田のパスにあわせて、全員が連動して動き、「出して、受ける」動きを繰り返して、一気に攻撃のテンポを上げ、ゴールを狙います。ただパスを繋ぐのではなく、攻撃のテンポをコントロールしながら、攻める時に一気に仕掛ける。これが風間監督が名古屋グランパスでやりたいことであり、そのキーマンが八反田なのです。

もしかしたら、名古屋グランパスで最も替えがきかない選手は、八反田かもしれません。このフォーメーション変更は、八反田を活かすための変更でもあると、僕は感じました。

まだ試行錯誤中のチームだが、今後に期待がもてた開幕戦

ただ、まだ開幕戦なので、全員が同じ狙いを共有し、技術を発揮して、正確にプレー出来ているかというと、まだまだそんな段階ではありません。パススピードも川崎フロンターレと比べたら、全然遅いです。相手を外す動きのタイミングも遅いし、受ける時に1回で正確に止められない場面も何度もありました。FWの役割もまだまだ整理しきれていません。前半は玉田がボールを持つ時間を作ってくれましたが、その分攻撃のスピードが上がりませんでした。後半は玉田に代ってシモビッチを入れ、シモビッチによりゴールに近い場所でボールをキープしてもらったり、相手DFラインを下げさせようという狙いがみてとれましたが、スムーズに機能したようにはみえません。まだまだ組み合わせは試行錯誤が続きそうです。

ただ、開幕戦を観る限り、風間監督がどんなサッカーでJ2を戦おうとしているのか、ヒントはくれたような気がします。次節は再びホームでFC岐阜戦です。どんな戦いをみせるのか、楽しみです。

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