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名古屋グランパスのJ1昇格に貢献!宮原和也のプレーは何が凄いのか?

2014年ブラジルで行われた、サッカーのワールドカップで優勝したドイツ代表に、フィリップ・ラームという選手がいました。ドイツ代表でもバイエルン・ミュンヘンでもキャプテンを務め、ブンデスリーガの優勝9回、2012-13年シーズンでUEFAチャンピオンズリーグの優勝も経験した名選手です。

ラームの体格は170cm、66kg。180cm以上の選手が多くなってきたサッカー選手の体格と比較しても、決して大柄ではありません。しかし、「蹴る」「止める」という動きの精度の高さ、「運ぶ」動きのスピードの早さ、そして、ファウルせずにボールを奪う技術の高さを武器に、体格の大きな選手を手玉にとりつづけました。

ラームはどのポジションでも素晴らしいプレーが出来る頭の良い選手でもありました。左右のDF、中央のMFといった、様々なポジションで質の高いプレーを披露し、どの監督にも重宝された選手でした。

現在、バイエルン・ミュンヘンで3年間監督を務め、現在はマンチェスター・シティで監督を務めているペップ・グアルディオラは、ラームが現役を引退する時にこのように語っています。

「フィリップは私の指導者人生の中でも特別な選手だった。彼は私が見てきた選手の中で、最も才能のあるプレーヤーの1人だ。インテリジェンスが素晴らしく、サッカー界は最高のプレーヤーの1人を失うことになる」

ラームが現役最後のシーズンで監督を務めたカルロ・アンチェロッティは、ラームについてこのように語っています。

「彼のような選手を擁することは、監督として幸運だ。20人のフィリップ・ラームが欲しい。そうすれば全く問題など起きないだろう」

ラームのように、どのポジションでも苦もなくプレーし、技術が高く、そしてどんな試合でもプレーの質が変わらない。こんな選手がいたら理想だと思います。

ただ、2017年シーズンの名古屋グランパスには、そんなラームみたいな選手がいました。ラームみたいな選手が日本にいるのか。そんな疑問をいだく人もいると思いますが、彼のプレーを見れば分かります。

彼の名は、宮原和也。J2リーグ42試合中、宮原が欠場したのは1試合のみ。プレーオフ2試合もフル出場。彼がいなければ、J1昇格は成し遂げられなかったかもしれません。

ボールを扱う技術の高さ、ボールを奪う技術、そして、状況を見て戦える頭の良さ

宮原の体格は172cm、66kg。ラーム同様に大柄な体格ではありません。しかし、宮原の凄さは、体格差を物ともしない、ボールを扱う技術の高さ、ボールを奪う技術、そして、状況を見て戦える頭の良さです。そして、この3つの技術のレベルが、どれもとても高いレベルで備わっているのです。

まず、「ボールを扱う技術」です。2017年シーズンの名古屋グランパスの監督を務めた風間八宏監督は、ボールを「止める」「運ぶ」「受ける」技術と、相手を「外す」技術を高め、どんな相手でも、自分たちの技術が上回れば、相手に勝つことが出来るという考えのもと、チームを作ってきました。

右足でも左足でも蹴れる場所に止めて、右にも左にも前にも後ろにも動ける

宮原はボールを「止める」技術が、とても高い選手です。風間監督が求める「止める」技術のレベルとは、ボールに何回も触ることなく、1回でボールを止め、なおかつ、すぐに次のプレーに移れる場所に止めることを意味します。右足でも左足でも蹴れる場所に止めて、右にも左にも前にも後ろにも動ける場所に止める。言葉にすれば簡単ですが、刻々と状況が変化するサッカーの試合で行うことは簡単ではありません。

宮原は、この「止める」技術のレベルが高く、時間帯、場所、相手の有無、によって、プレーの質が変わらない選手です。また、動きながらでも、止まっていても、プレーの質が変わりません。サイドでも、中央でも、同じようにプレー出来る。こんな選手はなかなかいません。

ボールを奪われることがない

名古屋グランパスのサポーターなら、宮原がドリブルでスルスルと守備者の間をすり抜けるようにしてボールを運び、相手の守備を突破してくれたシーンを覚えていると思います。

宮原はスピードを上げた状態でも、正確にボールを扱い、足からボールが離れることはありません。センターライン付近で、宮原が相手FWやMFの守備をもろともせず、ボールを運んでくれたため、終盤の名古屋グランパスは相手の守備に捕まる機会が減りました。宮原のドリブルは、ボールを奪われるとピンチになるので、一見するとリスクが高いプレーに見えるのですが、宮原はほとんどボールを奪われずに、ボールを運んでみせました。本人も「ボールを奪われることがない」という自信があるのだと思います。

高い技術を支えている、身体能力の高さ

宮原の高い技術を支えているのが、足の速さとジャンプ力の高さだと思います。リラックスしたフォームで走るので、スピードがあるように見えませんが、スピードで相手に振り切られるような場面はほとんどありません。相相手が動くタイミングと方向を見極め、素早く距離を詰め、ファウルせずにボールを奪う。ボールを奪う技術の高さからは、宮原という選手の技術を支えている、身体能力の高さがよく分かります。

そして、宮原という選手の凄さは、ボールを扱う技術、ボールを奪う技術を、適切に使い分ける「頭の良さ」にあります。相手選手の動きから、どうプレーすればよいか瞬時に見極め、適切なプレーを選択する。その選択に、ほとんどミスがありません。技術は高くても、相手に応じた対応が出来ず、監督の言うことしか出来ない選手が日本には多いのですが、宮原はそんな選手ではありません。相手を見て戦える。そこが、宮原という選手の凄さです。

欠点は「ミスが少なすぎる」こと

敢えて宮原の欠点を言うなら、「ミスが少なすぎる」ことかもしれません。瞬時に相手の意図を見極め、適切なプレーを選択出来る反面、「自分のミスに見えないけど、味方にとっては嬉しくない」プレーを選択する時があります。例えば、宮原がパスをした味方がパスを受け取った直後に相手にボールを奪われた、という場面があったとします。宮原のミスには見えないかもしれませんが、宮原が違うプレーを選択していたら、パスを受けた選手はミスをしなくてもよかった。そう考えられるようなプレーをすることがあるのです。

味方を助け、相手全員と戦えるプレーヤーに

宮原に今後求められるのは、「味方を助けるプレーヤーになる」ことだと思います。目の前にいる敵だけを相手にするのではなく、相手チーム11人全員を相手にして、自分のプレーで相手の注意をひきつけ、他の味方を楽にプレーさせる。こうしたプレーが、宮原に求められています。

もちろん、今後宮原に対する警戒が強まり、リーグのレベルが上がれば、J2の時のようには簡単にはプレーできないかもしれません。しかし、宮原ならJ1でも同じようにプレー出来ると思います。

だからこそ、僕はより高いレベルを求めたいと思います。ポジションはどこでもよいので、目の前にいる敵だけでなく、相手チーム11人全員を相手にし、「味方を助けるプレーヤー」になる。このくらい高いレベルを求めてよい選手だと思いますし、宮原なら出来るはずです。そして、「味方を助けるプレーヤー」だったのが、フィリップ・ラームなのです。

東アジア選手権のメンバーに宮原がいたら

僕は東アジア選手権を観ながら、「宮原がいたらなぁ」と思うことがありました。東アジア選手権の日本代表は、鹿島アントラーズの西選手が怪我で離脱したため、右サイドバックにボールを受けて、運べる選手がおらず、ボールを失いたくないのでロングパスを蹴ってしまい、何度もボールを失っていました。もし宮原が右サイドバックを務めていたら、上手くプレーしてくれたんじゃないか。そんな事を考えてしまいました。

宮原がいるかいないかで、順位が変わる

2017年シーズンの活躍をうけて、2018年シーズンに宮原がどこでプレーするのか、注目が集まっています。名古屋グランパスにはレンタル移籍で加入していたので、名古屋グランパスで引き続きプレーするのか。それとも、サンフレッチェ広島に戻るのか。サンフレッチェ広島がレンタルで移籍させていた選手を続々と戻し、積極的に選手を獲得しようとしていることを考えると、サンフレッチェ広島としては、絶対に戻したい選手のはずです。

ただ、名古屋グランパスも資金がないチームではありません。完全移籍も視野に入れた上で、獲得を申し入れているはずです。どちらも譲る気などないはずです。宮原がいるかいないかで、2018年シーズンの順位が変わる。そのくらい価値がある選手です。あとは、宮原の決断次第です。

2018年シーズンの宮原がどのチームを選択するのか。そして、2018年以降の宮原がどんな選手に成長するのか。とても楽しみです。

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